第I部 東アジアとの新たな関係と国土交通施策の展開 

1 環境・エネルギー問題の深刻化

 東アジア諸国・地域の経済成長とともに、地球温暖化や大気汚染等、様々な環境問題が発生している。地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)排出量は東アジア諸国・地域において増大しており、特に中国における排出量が、急速な経済発展と時期を同じくして、群を抜いて増大している。また、中国をはじめとする東アジア諸国・地域の主要都市では大気汚染が問題になっている。

 
図表I-2-3-1 東アジア諸国・地域と日本のCO2排出量の推移

化石燃料の消費により発生する東アジア諸国・地域と日本の二酸化炭素排出量の推移は各国とも増加傾向にある。その中で中国の伸びは特に大きく、1980年の約15億トンから2002年には約33億トンと倍増している。また、日本は中国を除いた東アジア諸国・地域の中で排出量が特に大きく、2002年では東アジア諸国・地域で最大である韓国の約5億トンの倍以上の12億トンとなっている。
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図表I-2-3-2 東アジア諸国・地域と日本の大気汚染の状況

東アジア諸国・地域の主要都市である北京、上海、重慶、バンコク、ソウル、マニラと東京における大気の状況は二酸化硫黄の大気濃度は重慶がWHOの基準である1平方メートル当たりのマイクログラムが50)を大きく上回っているほかはどの年も基準値以下である。また、二酸化窒素の大気濃度はバンコクがWHOの基準である1平方メートル当たりのマイクログラムが40を下回っているほかはどの都市でも基準を上回っており、特に北京は120と高い数値を示している。粒子状物質の大気濃度については1平方メートル当たりのマイクログラムが100を超えるのは北京、上海、重慶、ジャカルタ、バンコクであり、特に重慶では140を超えている。
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 また、経済活動の拡大に伴うエネルギー消費量の増加も問題となりつつある。東アジア諸国・地域におけるエネルギー消費量は増加傾向を示しており、2002年(平成14年)における東アジア・太平洋諸島等におけるエネルギー消費量は世界のエネルギー消費量の25%近くを占めてEU、NAFTAと並ぶに至っており、うち中国は約12%となっている。今後も東アジア諸国・地域におけるエネルギー消費量及び世界のエネルギー消費量に占めるシェアは中国を中心に伸び続け、EU、NAFTAを上回るまでになると予測されている。

 
図表I-2-3-3 世界の一次エネルギー消費量の推移

世界の一次エネルギー消費量の推移を石油換算で見てみると1971年では60億トンだったものが年々増加し、2002年には100億トンを超え、今後も増加し、2030年には160億トンを超えると推測されている。その中で、東アジア諸国・地域のシェアも増加しており、特に、中国は1971年には7.3%、2002年には12.0%まで増加し、今後2030年には15.4%となると推測されている。
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 さらに、こうしたエネルギー消費量の増大に伴い、資源を輸送する船舶の航行も増大していることから、資源輸送上重要な海峡における航行安全対策など、安定した資源輸送の確保も課題となっている。


 

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