第I部 東アジアとの新たな関係と国土交通施策の展開 

2 都市化の進展に伴う弊害

 東アジア諸国・地域においては、経済成長とともに都市部への人口集中が進んでおり、今後ともこの傾向が続くことが予測されている。都市部への人口集中は、渋滞や大気汚染、無秩序な開発や資金不足等による公共空間の不足などの都市問題を招いており、都市における生活・経済活動を支える社会資本の整備など計画的な都市整備が課題となっている。

 
図表I-2-3-4 東アジア諸国・地域と日本の都市化率の推移

東アジア諸国・地域における総人口に占める都市居住者数の割合である都市化率の推移を見ると、今後、すべての国・地域でも上昇し続け、2030年には40%弱から80%半ばまでになると予想される。
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 特に渋滞問題は、東アジア諸国・地域の多くの大都市に共通する課題である。渋滞問題の背景として、人口の増加に加え、モータリゼーションの急速な進展や道路交通への依存度の高さなどが挙げられる。東アジア諸国・地域の大都市におけるモータリゼーションの進展の状況を見ると、例えばタイ・バンコクでは、新規自動車登録台数は通貨危機からの経済状況の回復とともに急速に増加しており、バンコク及びその周辺における自動車保有台数は1993年(平成5年)の237万台から2003年(平成15年)には548万台に倍増している。また、中国・上海市では1995年(平成7年)から2002年(平成14年)の間に人口はやや増加した程度であるが自動車保有台数は1.8倍に伸びており、韓国・ソウル市では1980年(昭和55年)から2003年(平成15年)の間に人口は1.2倍となったが自動車保有台数は13.4倍に伸びている。このため、道路整備や地下鉄等の大量輸送機関の整備が課題となっており、環状道路や地下鉄等の都市鉄道の整備が進められている。

 
図表I-2-3-5 バンコクの1日平均新規登録台数の推移

バンコクの1日平均新規登録台数の推移を見ると、1997年以降、1998年に減少になるものの、1999年以降、自家用車、オートバイともに増加し続け、2004年には1日平均自家用車が1039台、オートバイが844台となっている。
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図表I-2-3-6 東アジア諸国・地域の主要都市の環状道路の整備状況

東アジア諸国・地域の主要都市の環状道路の整備状況を見ると、ソウルは計画延長約130キロメートル、供用延長89キロメートルであり整備率は70%、北京は計画延長436キロメートル、供用延長356キロメートルであり整備率は82%、バンコクは計画延長165キロメートル、供用延長131キロメートルであり整備率79%、ジャカルタは計画延長約120キロメートル、供用延長約82キロメートルであり整備率70%となっている。

 
図表I-2-3-7 東アジア諸国・地域の主要都市の都市鉄道の整備状況

東アジア諸国・地域の都市鉄道の営業キロを見ると、インドネシアのジャカルタでは161キロ、韓国のソウルでは423.5キロ、シンガポールでは127.9キロ、タイのバンコクでは44キロ、中国の北京では114キロ、上海では112キロ、クアラルンプールでは217.6キロ、台湾の台北では67.2キロ、香港では201.3キロが整備されており、さらなる路線延長計画もある。
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