第II部 国土交通行政の動向 

第2節 効率性、競争性を重視した施策展開

1 公共事業コスト構造改革の推進

 公共工事のコスト縮減については、平成9年度から政府全体で取り組んでおり、国土交通省では、14年度までに物価の下落等を含め2割以上のコストを縮減してきた。さらに、15年3月に、「国土交通省公共事業コスト構造改革プログラム」を策定し、15年度をコスト構造改革の初年度と位置づけ、これまでの取組みの継続に加え、1)事業のスピードアップ、2)計画・設計から管理までの各段階における最適化、3)調達の最適化を見直しの要点として、コストの観点から公共事業の全ての過程を見直す「公共事業コスト構造改革」に取り組んでいる。具体的には、以下の取組みを実施している。

1)事業のスピードアップ
 事業のスピードアップのためには、合意形成・協議・手続の改善、事業の重点化・集中化、用地補償の円滑化等を図ることが必要である。このため、構想段階からの合意形成手続の導入や、事業評価の厳格な実施による事業箇所の厳選、完成時期を予め明示するなど事業の進捗管理の徹底等を実施し、また、用地取得の円滑化のため、地籍調査の促進、土地収用手続の積極的活用等を図る。

2)計画・設計から管理までの各段階における最適化
 基準類の性能規定化や地域の実情にあった規格(ローカルルール)の設定の促進等の計画・設計の見直し、新技術の活用、管理の効率化等を図ることにより、工事コストの縮減と将来の維持管理コストの低減を推進する。

3)調達の最適化
 入札・契約の見直し、積算の見直し等を図ることにより、調達の最適化を推進する。具体的には、ユニットプライス型積算方式(注)への積算体系の転換・導入を検討するほか、民間の技術力を結集する調達方式の推進、電子調達の推進等に取り組む。
 平成15年度は、総合的なコスト縮減の視点に立ち、ローカルルールの採用を促進するため道路構造令の改正等を行うなど規格の見直しの促進、設計の総点検の実施、出来高部分払方式導入に向けた試行等、様々な施策を実施した。
 また、これらの取組みを適切に評価するため、従来からの工事コストの縮減に加え、1)規格の見直しによる工事コストの縮減、2)事業のスピードアップによる事業便益の早期発現、3)将来の維持管理費の縮減をも評価する「総合コスト縮減率」を設定し、平成15年度から5年間で、14年度と比較して、15%の総合コスト縮減率を達成することを目標としている。15年度は、国土交通省・関係公団等の総合コスト縮減率は、6.1%(物価の下落等を除く)となった。

 
図表II-1-2-1 コスト構造改革

国土交通省及び関係公団等全体で、従来からの取組みにより、平成8年度から14年度までに13.6%、物価の下落等を含めると21.3%の縮減を実現した。今後は、新たな取組みにより、平成15年度から19年度までの5年間で、物価の下落等を含まずに、15%の総合的なコスト縮減を達成することを目標としている。


(注)同一工種の実績データ(工事契約締結後に受注者と発注者が合意した単価)を蓄積・分析し、予定価格の算出に用いる積算手法

 

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