第II部 国土交通行政の動向 

(5)海上犯罪対策の推進

1)国際組織犯罪対策への取組み
 国内における薬物・銃器犯罪や、来日外国人による強盗やピッキング用具を使用した侵入等の多発は、国際犯罪組織が関与する密輸・密航事犯がその背景にあると考えられる。一旦薬物・銃器や密航者が国内に流入すればその取締りは困難を極めることから、国際組織犯罪の取締体制及び洋上、港湾等における監視取締体制を強化することによる水際での阻止が重要である。
 政府においては、「犯罪対策閣僚会議」等により対策を講じてきたところであり、海上保安庁においても、犯罪情報の収集・分析の推進、監視能力等を向上させた巡視船艇・航空機による監視取締りを実施するとともに、警察、税関等の関係取締機関との情報交換、外国船舶に対する立入検査等を強化している。さらに韓国、ロシア及び中国の海上保安機関と情報交換、定期協議の開催等を積極的に実施し、効果的な密輸・密航対策を講じるとともに、平成16年10月には国連薬物犯罪オフィス(UNODC)の協力により、「薬物海上取締セミナー(MADLES2004)」を東京で開催し、参加したアジア各国の海上保安機関、薬物取締機関等と情報交換や海上取締りに関する技術移転等を行い、薬物密輸に対する国境を越えた統一的な海上取締体制の構築を図った。

2)悪質密漁事犯の根絶
 最近の国内密漁事犯は、組織化や供用船舶の高性能化により、悪質・巧妙化しており、水産資源の枯渇による食生活への影響にとどまらず、暴力団への資金供給や犯罪組織への少年の関与、密漁関係者の暗躍等による地域の治安悪化等、国民の安寧な生活に対する脅威となっている。そのため、関係機関や地域住民等との連携協力、監視取締り実施時の追跡や情報収集を推進している。
 また、外国漁船による我が国領海及び排他的経済水域における違法操業は、我が国がその貴重な水産資源を枯渇から守るために設定した漁業秩序を著しく乱す行為であり、厳正な対処が必要である。近年では違法操業を行う外国漁船が高速・高性能化していることから、巡視船艇及び搭載する捕捉資器材等取締装備の充実整備等を図りつつ、国内外の関係機関とも連携した取締りを実施している。

3)悪質・潜在海上環境事犯の根絶
 近年は、海洋環境保全をめぐる動きが活発になってきている反面、廃棄物等の陸上処理場のひっ迫や、汚水等の処理費用の負担を逃れようとする者が後を絶たないことから、海域への廃棄物不法投棄、汚水の不法排出等の海上環境事犯が続発している。
 環境に関する規制が強化されてきている中で、陸上における不法投棄が社会問題化している不正軽油の密造時に生ずる有害物質「硫酸ピッチ」の海洋投棄事犯も発生するなど、海上環境事犯は今後更に増加していくことが予想されることから、国民の生活環境悪化の防止に万全を期すため、なお一層関係機関等と連携協力して悪質事業者等に係る情報共有体制を構築するとともに、監視取締体制の効率化・強化を図ることとしている。

 

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