第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

コラム・事例 災害時水上輸送ネットワークの構築に向けて

 首都圏において直下型地震を始めとする大規模地震の発生が懸念されていますが、大規模地震が発生した場合、道路、鉄道等が寸断されるおそれがあり、救援、機材の運搬等に水上交通が大変役立ちます。
 実際に、平成7年の阪神・淡路大震災では、大阪近辺のマリーナ保管のプレジャーボートを活用し、医療器具、救急患者の搬送等効率的な緊急輸送が行われました。
 このため、大規模地震が発生した際に、帰宅困難者や、復旧活動に必要な大量の機械や資材、食料や医療品等の救援物資を河川という連続したスペースを利用して輸送できるよう、荒川や隅田川ではリバーステーション(防災船着場)(注1)の整備が進められています。また、荒川では陸上交通との橋渡しのため緊急用河川敷道路の整備が進められています。
 平成17年11月には、直下型地震の発生により陸上交通が分断されたことを想定し、河川舟運や海上輸送を活用した災害時の水上輸送ネットワークの構築に向けた訓練を関東運輸局、関東地方整備局、地方公共団体、NPO等の参加により行いました。この訓練には約200名が参加し、緊急物資や帰宅困難者の輸送、物資の積替え作業、救急患者の搬入等を行いました。
 中央防災会議における試算では、東京湾北部を震源とするM7.0級の直下型地震が起きると、地震発生直後に約650万人に上る帰宅困難者が発生すると想定されています。このような帰宅困難者について、水上バスや屋形船を活用することにより、この水域において約2〜3万人を輸送することが可能という試算(注2)もあります。
 今後も訓練を継続し、実際に災害が発生した際に、船舶を活用した輸送ネットワーク機能が十分発揮できるよう、地方公共団体等と連携を図っていくこととしています。

 
緊急物資の受け渡し訓練
 
災害時水上輸送ネットワークの構築


(注1) 災害時における建設機械や救援物資の輸送拠点、観光船が発着できる河川の景観を楽しむレジャー拠点、水上ルートや陸上ルートで運ばれてくる物流の拠点として期待される船着場
(注2)独立行政法人海上技術安全研究所の調査による

 

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