第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

3 豪雨・高潮災害対策の推進

 近年、気候変動の影響等により施設能力を超える豪雨が発生しており、またゼロメートル地帯には人口や資産が集積していることから、防護施設の整備を進め、信頼性の確保を図るため十分な管理を行うことが重要である。一方で、財政制約の中、施設整備には時間がかかり、施設の整備途上での被災が有り得ること等から、床上浸水や土石流を始めとする豪雨災害や高潮災害が発生した場合でも被害が発生・拡大しないような取組みも併せて行う必要がある。

(総合的な取組み)
 豪雨・高潮災害が発生した場合でも被害を最小化するためには、これまでの施設整備に加え、まちづくりや住まい方、個々人の対応を含め、関係する様々な主体(都市計画、住宅、公園、下水道、道路等)により、総合的に取り組むことが重要である。その際、規制・誘導によるものを含めた被災しにくい住まい方等への転換、洪水氾濫域等の拡散防止対策等を新たに検討することが必要である。

(床上浸水等による被害の軽減対策)
 人命や生活に深刻な影響を及ぼす床上浸水、土石流等による被害を緊急に軽減するため、土地利用状況を考慮しつつ、河川改修、ポンプ場、砂防施設等のハード整備とハザードマップ作成等のソフト対策を組み合わせた豪雨災害対策を推進する必要がある。

(内水被害の軽減対策)
 人命被害や生活再建が困難となる被害が生じるおそれの高い、深刻な内水被害を効果的かつ効率的に軽減するため、ハード整備とソフト対策を緊急的かつ先行的に実施する必要がある。

 
図表I-3-1-2 ハード整備とソフト対策が一体となった内水対策

内水対策は、河道改修や排水機場・遊水池・二線堤の整備などのハード整備と、ポンプ運転調整のルール設定や内水被害に対する住民意識の向上、ハザードマップの作成・普及、浸水被害実績等の公表、避難計画の策定などのソフト対策を一体的に実施していく。

 また、下水道の浸水対策として、効率的なハード整備の着実な推進に加え、地下施設等への止水板設置等の効果的な浸水被害軽減を誘導する自助の取組みを推進し、そのためのソフト施策の充実を図ることが必要である。

(ハード・ソフト一体となった土砂災害対策)
 土砂災害危険箇所の公表や土砂災害警戒情報の提供等のソフト対策の実施と合わせて、砂防えん堤等のハード整備により避難場所を保全し、ハード・ソフト一体となって効率的に土砂災害から地域を保全する必要がある。

(豪雨等に関する情報の提供)
 水位・雨量予測情報や洪水予警報等を市町村ごとに整理し、すべての市町村へ提供するとともに、情報の確実な伝達・収集のため、国土交通省が保有する光ファイバを市町村等と接続する必要がある。
 また、地方公共団体の防災活動や住民による迅速かつ適切な警戒避難行動等により、土砂災害による人的被害の軽減を図るため、土砂災害の警戒避難に関する情報と気象情報を総合的に判断した「土砂災害警戒情報」を全国に提供する必要がある。
 さらに、高潮予測情報の精度を向上させ、高潮水防警報の適切な発令等に活用する必要がある。
 これらにより、防災情報のエンドユーザーへの確実な伝達を実現する必要がある。

 

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