第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

4 テロ対策、海賊対策等における連携の推進

(関係機関等との連携強化)
 テロ事件や密輸・密航事件等の国際組織犯罪を未然に防止するためには、ヒト・モノが出入りする我が国の国際空港、国際港湾等における水際対策の強化が特に重要であり、このような状況において、国際物流分野では、セキュリティ強化と物流効率化の両立を目指した施策の検討が必要である。
 さらに、鉄道、バス等の国内交通機関においても警戒警備の強化を行い、利用者の安全・安心を確保する必要がある。このような観点から、厳しさを増す国際的なテロ情勢を踏まえ、関係機関及び民間事業者等の関係者が、密接な連携を図りながらテロ事件の未然防止対策を検討・実施することが求められる。特に、鉄道については、平成17年7月に英国・ロンドンでの地下鉄等同時多発爆破テロ事件にかんがみ、テロの未然抑止を主眼に置いた「見せる警備・利用者の参加」(注)を軸とした新たなテロ対策の推進、テロ発生の脅威に応じた対策を講じるための危機管理レベルの設定・運用等について、関係行政機関や鉄軌道事業者等が共同で取り組んでいる。
 また、我が国周辺海域の安全・安心の確立を図り、海上の監視・取締り、大規模災害対応等の課題に適切に対応していくためには、老朽・旧式化した海上保安庁の巡視船艇・航空機等の代替整備を推進するとともに、関係機関等との緊密な情報交換や、共同対応能力の向上等に引き続き努めていくことが必要である。
 海賊対策についても、日本関係船舶における効果的な自主警備対策の推進、緊急情報伝達体制の整備等、関係機関と民間事業者等の関係者が一体となった取組みを推進することが重要である。

(国際的連携・協力)
 活動範囲が広域にわたる組織が関与するテロ事件や海賊事件を防止するためには、国境を越えて国際社会が一致団結し、緊密な連携を図って対応することが必要である。
 テロ対策等国際交通のセキュリティ確保に関しては、既存の国際的枠組みにおける議論に加え、より積極的で広範にわたるハイレベルでの国際的な協調が求められている。このような観点から我が国は、平成18年1月、東京において国際交通セキュリティ大臣会合を主催したが、そこで合意された、各国の強い連携、途上国等へのテロ対処能力強化の支援推進、関係国際機関の活動支持を通じて交通セキュリティを確保していくという方向性に基づき、今後とも国際的な取組みを進めていくことが重要である。

 
国際交通セキュリティ大臣会合



 また、海上保安庁では、海賊・海上テロ対策に関し、アジア海上保安機関長官級会合の開催等連携のための枠組み作りを進めるとともに、各国海上保安機関との連携訓練、専門家の派遣、教育機関への留学生の受入れ等を実施し、関係各国との連携・協力関係を強化してきたが、今後も更なる相互協力・連携強化を進めていくことが重要である。
 さらに、事故への対応に関しても、海洋における有害液体物質・危険物の流出事故への対応体制等について国際的な協力・連携を強化していく必要がある。
 また、我が国における災害の経験等を踏まえ、技術協力や専門家の派遣等を行い、海外における災害対策の強化を図る必要がある。


(注)「見せる警備」の施策:テロの未然防止を図るため、人々の目に触れる形で警備を行う施策
  「利用者の参加」の施策:テロに対する監視のネットワークを強めるため、一人一人の利用者にテロの防止のための意識を持ち行動することを促す施策

 

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