第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

第5節 建築物の安全・安心に対する信頼の回復

 今般の構造計算書偽装問題は、一級建築士が構造計算書を偽装し、多数のマンション等の耐震性に大きな問題を発生させ、居住者等の安全と居住の安定に大きな支障を与えただけでなく、国民の間に建築物の耐震性に対する不安を広げている。
 こうした中で、平成18年2月、社会資本整備審議会建築分科会が中間報告を取りまとめ、建築物の安全性確保のための施策に関し、以下の方向を打ち出した。これらを踏まえ、偽装問題の再発防止に向けた制度の見直し等を的確に行うことにより、建築物の安全・安心に対する国民の信頼の回復を図っていくことが必要である。

(建築物の安全性確保のため早急に講ずべき施策)
(1)建築確認・検査の厳格化
  ○第三者機関による構造計算審査の義務付け等による構造設計図書の審査方法の厳格化
  ○中間検査の義務付け等
(2)指定確認検査機関に対する監督の強化等
  ○責任の明確化と指定要件の強化
  ○特定行政庁による指導監督の強化
  ○処分の厳格化
(3)建築士等に対する処分・罰則の強化
(4)住宅の売主等の瑕疵担保責任の充実等
  ○住宅の売主等の瑕疵担保責任の充実等
  ○住宅性能表示制度の充実、強化
(5)建築士及び建築士事務所、指定確認検査機関に関する情報開示制度の充実、強化
(6)図書保存期間の延長
  ○指定確認検査機関、特定行政庁における確認申請書等の保存期間の延長

(施策の実現に向けて引き続き検討すべき課題)
(1)建築士制度に係る課題
  ○専門分野別の建築士制度の導入、建築士の資質・能力の向上、建築士事務所の業務の適正化、建築士会及び建築士事務所協会等への加入の義務付け等
(2)国及び都道府県、特定行政庁における監督体制、審査体制の強化と建築物のストック情報の充実等
  ○国及び都道府県、特定行政庁における監督体制、審査体制の強化
  ○建築物ストック情報に関するデータベース整備、行政機関の相互連携の強化 等

 国土交通省では、同中間報告を踏まえ、確認検査の厳格化、罰則の強化等を内容とする「建築物の安全性の確保を図るための建築基準法等の一部を改正する法律案」を第164回国会に提出した。また、専門分野別の建築士制度の導入等建築士制度に係る課題等その他の課題についても、引き続き検討し、夏頃までに方針を取りまとめ、所要の改正を行っていくこととしている。

 なお、構造計算書偽装問題や全国チェーンのビジネスホテルによる不正改造問題、さらには既存建築物における耐震化の促進やアスベスト対策等が緊急の課題となっており、地方において行政改革が進んでいる中でも、建築行政の執行体制を的確に確保していくことが必要である。

 

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