第I部 安全・安心社会の確立に向けた国土交通行政の展開 

コラム・事例 高度道路交通システム(ITS)を活用した自動車の走行・運転支援

 交通事故の多くは発見の遅れや判断の誤りといった事故直前のドライバーの行動に起因しています。カーブの先にある渋滞末尾や停止車両は、ドライバーからの発見が難しく、発見の遅れが重大事故につながります。こういった事故削減のために、ドライバーにカーブの先の道路交通状況を事前に知らせる社会実験が、首都高速道路4号新宿線上りの参宮橋区間で行われています。この実験では、既に普及している3メディア対応型VICS車載機(注)を使用している一般ドライバーを対象に、カーブの先の危険情報を路側のアンテナから車両に提供することで、ドライバーに注意を促し、追突事故や側壁衝突事故の削減やヒヤリ・ハットとよばれる危険な状況を減少させる検証を行っています。
 実験の結果、3メディア対応型VICS車載機搭載車混入率10%という状況であっても、車両のカーブへの進入速度を10%、急減速を4%減少させるなど、車両挙動を安全側に改善させることに成功しました。また、同時に行ったモニターアンケートでも約9割のドライバーからサービスが有効であるとの回答を得ており、走行支援道路システム(AHS)と呼ばれる全く新しい交通安全対策の可能性を明らかにすることができました。

 
社会実験での提供サービス概要

 また一方で、先進技術の活用により安全性能を高めた先進安全自動車(ASV)の開発・普及を促進するため、自動車メーカー、学識経験者、関係省庁等の協力でASVプロジェクトを進めています。現在は、これまでに研究・開発されてきた自律検知型運転支援システムでは対応困難な出会い頭事故、右折事故等に対処するために、自動車と自動車、自動車とバイク、自動車と人との間での通信(車車間通信)を介して情報を交換し、その情報に基づいてドライバーの運転支援を行う、情報交換型運転支援システムの技術開発に取り組んでいます。
 具体的には、平成17年7月から10月まで、車車間通信に係る検証実験を独立行政法人北海道開発土木研究所の苫小牧寒地試験道路において実施しました。この実験では、車両のハード・ソフトの両面から運転者に必要な情報を、適切なタイミングで、分かりやすく提供することができるかなどについて検証しました。今後は、実験により得られた課題の解決を図り、産・学・官と連携して、実用化に向けて取り組んでいくこととしています。
 このように、国土交通省ではITSを活用した自動車の走行・運転支援のためのシステムの研究開発を推進しています。

 
検証実験において対処した事故類型パターン例


(注)FM多重放送に加え、電波ビーコン、光ビーコンからの情報も合わせて受信できるVICS車載機

 

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