第II部 国土交通行政の動向 

(1)自動車単体対策及び走行形態の環境配慮化

 自動車交通分野の地球温暖化対策は喫緊の課題である。このため、トップランナー方式の燃費基準(注1)の策定による自動車の燃費改善、自動車グリーン税制等による低公害車(注2)の開発・普及等の自動車単体対策を推進している。
 また、自動車運送事業者等のアイドリングストップを始めとする環境負荷の軽減に配慮した自動車の使用(エコドライブ)を推進し、関係省庁のエコドライブ普及連絡会において、ポスター・ステッカー等による普及活動を行っている。さらに、事業用自動車の運行の効率化等といった取組みを行うことにより、運輸部門における地球温暖化対策を一層推進している。

1)自動車の燃費改善
 自動車の燃費の改善を推進するため、「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づく燃費基準の策定や自動車の燃費の公表等を行っている。この結果、平成16年度に出荷されたガソリン乗用車のうち約82%が22年度を目標年度とした燃費基準を達成しており、平均燃費値は7年度と比較して約22%向上したが、更なる燃費向上を推進するため、17年7月より次期燃費基準の策定について検討している。
 また、貨物自動車によるCO2排出量の約60%を占める重量車(注3)について、燃費改善が重要な課題となっていたことから、重量車の燃費基準を平成17年度に策定した。この燃費基準が達成された場合、目標年度である27年度に出荷される重量車の平均燃費値は、14年度と比較して約12%向上するものと推定される。

2)排出ガス低減・燃費性能の向上を促す仕組みの創設
 低公害車の普及状況、自動車メーカーの技術開発の向上等を踏まえ、最新の排出ガス基準値からの有害物質の低減レベルに応じ、低排出ガス性能の認定等を行う低排出ガス車認定制度において、17年排出ガス基準値に対応した低排出ガス認定レベル(「☆☆☆☆(平成17年排出ガス基準値より75%以上低減)」及び「☆☆☆(17年排出ガス基準値より50%以上低減)」)を導入している。また、より燃費性能に優れた自動車を容易に一般消費者が識別・選択できるようにし、低燃費車の普及を促進することを目的とした自動車燃費性能評価・公表制度を実施している。なお、これらの制度に係る低排出ガス認定レベルや燃費性能の表示については、該当する自動車の車体にステッカーを貼付することとしている。

3)自動車グリーン税制
 環境負荷の小さい自動車の普及を促進するため、税収中立を前提に排出ガス低減及び燃費性能に優れた自動車に対して自動車税の税率を軽減する一方、新車新規登録から一定年数以上を経過した自動車に対しては税率を重くする措置を講じる自動車税のグリーン化や、低公害車等を取得した場合の自動車取得税の特例措置を講じている。平成18年度税制改正においては、地球温暖化対策及び大気汚染対策のより一層の推進を図るため、自動車燃費性能評価・公表制度及び低排出ガス車認定制度を引き続き活用し、自動車税のグリーン化及び自動車取得税の低燃費車特例の対象をより環境負荷の小さい自動車(☆☆☆☆かつ燃費基準+20%達成車等)に重点化することとしている。また、CO2削減効果の大きいディーゼル重量車の燃費向上を図る観点から、排出ガス性能に優れた車(新長期規制達成車又は窒素酸化物(NOx)・粒子状物質(PM)のいずれかについて更に規制値を10%以上低減したもの)のうち、重量車の燃費基準を達成したディーゼルトラック・バス等の自動車取得税を軽減する特例措置を講じることとしている。
 これらの取組みと、自動車メーカーによる技術開発の進展や商品販売努力、一般消費者の環境に対する関心の高まりなどが相まって、平成17年度上半期における自動車税のグリーン化の対象である自動車(☆☆☆☆かつ燃費基準+5%達成車等)は、新車新規登録台数の約57%にあたる約106万台を占めている。

 
図表II-7-1-3 平成18年度税制改正における自動車税のグリーン化及び自動車取得税の特例措置の軽減対象・軽減率等

自動車税のグリーン化及び自動車取得税の特例措置の軽減対象・軽減率は、平成17年基準値より、有害物質を75%以上低減させた低排出ガス車、かつ燃費基準プラス10%達成車に対しては、自動車税の税率を概ね25%軽減し、自動車取得税の取得価額から15万円が控除される。もしくは、平成17年基準値より、有害物質を75%以上低減させた低排出ガス車、かつ燃費基準プラス20%達成車に対しては、自動車税の税率を概ね50%軽減し、自動車取得税の取得価額から30万円が控除されることになった。また、車両総重量が3.5トンを超えるディーゼルトラック、バス等については、新長期規制達成車が、自動車取得税の税率から1.0%軽減され、新長期規制値を10%以上の低減車については、自動車取得税の税率から2.0%軽減されることとなる見直しが行われた。

4)次世代低公害車等の開発
 大型ディーゼル車に代替する抜本的に環境性能を高めたスーパークリーンディーゼル車やジメチルエーテル(DME)自動車等の次世代低公害車については、平成17年度より3ヶ年の計画で試作車両の公道走行試験により技術基準の整備等を行い、その普及のための環境を整備している。
 また、従来の自動車と比較してエネルギー効率が格段に高く、静粛性に優れ、大気汚染物質の排出もゼロである燃料電池自動車については、公用車や道路維持管理作業車として率先導入するとともに、燃料電池バスの早期普及を図るため、燃料電池バス実用化促進プロジェクトにおいて保安基準等を検討することとしている。
 このほか、有効な地球温暖化対策として自動車燃料への利用・普及が期待されているバイオディーゼル燃料について、環境・安全面で満たすべき車両側対応技術を明確化し、バイオディーゼル燃料対応車の開発・普及のための環境を整備している。

5)低公害車普及のための広報活動
 低公害車購入に必要な実用的情報を地方公共団体・企業等の自動車購入責任者及び国民一般に対し直接提供する低公害車メールマガジンを月1回発行しているほか、地方運輸局において低公害車導入促進協議会を開催し、地方公共団体、運輸事業者、産業界等に対して低公害車への切替え要請や啓発活動を行っている。

6)エコドライブの普及促進等による自動車運送事業等のグリーン化
 平成17年度において、エコドライブ管理システム(EMS)(注4)モデル事業を実施し、エコドライブの有効性や効果的な実施方法、成果を広く公表することにより、自動車運送事業者等のエコドライブの推進を図っている。


(注1)現在商品化されている製品のうち、燃費が最も優れているものの性能、技術開発の将来の見通し等を勘案して基準を定める方法
(注2)低公害車:圧縮天然ガス(CNG)自動車、電気自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車、低燃費かつ低排出ガス認定車
次世代低公害車:スーパークリーンディーゼル車、ジメチルエーテル(DME)自動車等
(注3)車両総重量3.5トン超の貨物自動車及び乗用自動車(乗車定員11人以上)
(注4)自動車の運行において計画的かつ継続的なエコドライブの実施とその評価及び指導を一体的に行う取組み

 

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