第I部 地域の活力向上に資する国土交通行政の展開 

第2章 社会・経済構造の変化に伴う地域における課題

【第2章のポイント】
 地域の活力を維持・向上させていくためには、地域ブロック単位で、東アジア地域を始めとする海外の成長を取り込んでいくこと等を通じて、自立的発展を可能とする経済的基盤を確立するとともに、生活圏レベルにおいて、人口減少を前提としながらも、人々の暮らしの質を確保し充実させていくことが必要である。

<地域ブロックレベルの課題>

第1節 地域ブロックの自立的発展と社会資本整備
 経済のグローバル化が進展する中で、地域が自立的な発展を図っていくためには、各地域ブロックが、東アジア地域と、競争しつつも、交流や連携を直接深めていくことが重要である。このためには、円滑な物流や人流の確保が不可欠であり、ソフト施策も活用しつつ戦略的な社会資本整備を進めていくことが必要である。

<生活圏レベルの課題>

第2節 人口減少の下でのまちづくり・地域づくり
 人口減少下においても質の高い暮らしを営むことのできる地域づくりを実現するため、人口増加と都市の拡大を前提とした考え方を脱してコンパクトなまちづくりを進めていくとともに、それぞれの地域が地域独自の資源等をいかして活性化に取り組んでいくことが必要である。

第3節 地域の活力を支える公共交通
 公共交通は、地域の足の確保、活力向上等に大きな役割を果たしているが、地方圏を中心に、自家用車依存が進んでおり、公共交通機関の利用者の減少も顕著である。そのため、地域の様々な主体が関与した、地域公共交通の活性化及び再生のための取組みが必要である。

第4節 人口減少・高齢化の下で地域の活力を支える担い手
 労働力人口の減少が見込まれる中で、多様な人材が活躍できるようにすることが必要であり、特に女性が子育て期にも働きやすい環境の整備が重要である。また、民間との協働による地域づくりにおいて、大量退職期を迎える「団塊の世代」が大きな役割を果たすことが期待される。

第5節 地域における建設産業の新たな役割
 建設業は、建設投資額の縮小から厳しい経営環境に直面しているが、技術やノウハウをいかした新分野への進出等、新たな地域のニーズに対応した取組みが期待される。

<地域ブロックレベルと生活圏レベルに共通する課題>

第6節 交流人口拡大に向けた観光振興
 観光は、創意工夫により地域独自の資源をいかした取組みが可能であること等から、地域の活力の向上に寄与するものであり、地域における主体的な取組みを推進することが必要である。

第7節 地域の条件整備に係る課題
 人口減少や高齢化が進む中で、安全・安心のための災害対策や身近な生活を支える基盤の整備等がますます重要になっている。

 第1章で見たように、我が国の地域は、人口減少・高齢化、経済のグローバル化が進展する中での東アジア地域の急速な経済成長といった大きな社会・経済構造の変化に直面している。このような状況を踏まえると、地域の活力の維持・向上を考えていく上で、次の2つの視点が重要となってくる。
 一つには、地域の自立的発展を可能とする経済的基盤を確立することである。このためには、下図のように欧州一国並みの経済規模を有し、東アジア地域を始めとする海外との直接の連携を深めつつある地域ブロック単位での戦略的対応が不可欠である。
 
図表I-2-1 広域ブロックと欧州諸国のGDP

広域ブロックの欧州諸国の2003年の名目GDPを比較すると、日本は4兆2,426億ドル、ドイツは2兆4,435億ドル、イギリスは1兆8,076億ドル、フランスは1兆7,892億ドル、首都圏は1兆5,818億ドル、イタリアは1兆4,683億ドル、スペインは8,815億ドル、近畿圏は6,807億ドル、中部圏は6,180億ドル、オランダは5,128億ドル、九州圏は3,751億ドル、東北圏は3,574億ドル、スイスは3,218億ドル、ベルギーは3,074億ドル、スウェーデンは3,015億ドル、オーストリアは2,552億ドル、中国圏は2,427億ドル、ノルウェーは2,206億ドル、デンマークは2,111億ドル、ポーランドは2,095億ドル、ギリシャは1,733億ドル、北海道は1,682億ドル、フィンランドは1,618億ドル、アイルランドは1,521億ドル、ポルトガルは1,472億ドル、四国圏は1,155億ドル、北陸圏は1,062億ドル、チェコは906億ドル、ハンガリーは821億ドル、沖縄は280億ドル、ルクセンブルクは271億ドル、ブルガリアは199億ドル、アイスランドは104億ドルである。
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 もう一つには、このような地域ブロック単位での経済的自立を基礎としつつ、人口減少を前提としながらも、人々の暮らしの質を確保し充実させていくということである。このためには、固有の文化・伝統・自然条件等に根ざした多様な地域特性を有する生活圏レベルにおいて、生活の利便性や交流を通じたにぎわいを確保すること等が必要となる。
 本章では、このような視点から、地域ブロックレベルの課題(第1節)と生活圏レベルの課題(第2節第5節)について取り上げるとともに、双方に共通する、交流人口拡大に向けた観光振興に当たっての課題(第6節)や、地域の条件整備に係る課題(第7節)について見ていく。

 

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