第I部 私たちの暮らしを支える国土交通行政の展開 〜厳しい経済状況下でも暮らしを守り活力づくりに挑む〜 

第1章 私たちの暮らしの現状と課題

(現状には多数が満足、しかし将来には不安)
 自分が住む地域での暮らしやそれを取り巻く生活環境について、国土交通省が行った意識調査(注1)によれば、6割近い人が現在の状況に対して「満足している」又は「どちらかといえば満足している」(以下、「満足」という)と考えている。しかし一方で、6割以上の人が、その将来について「不安を感じる」又は「どちらかといえば不安を感じる」(以下、「不安を感じる」という)とも答えている。
 年齢別にみると、現在の満足度(満足と答えた人の割合)は、高齢者が比較的高くなる一方で、30歳代から50歳代前半の働き盛りともいえる世代が一段低くなっている。将来についても、この世代の7割近くが不安を感じており、他の世代に比べてその割合が高めになっている。
 また、住む場所でみれば(注2)、都市部ほど満足度が高くなる一方で、町村部では満足と答える人は5割強であり、また将来に対する不安は高い。
 
図表I-1-0-1 現在の満足と将来の不安

図表I-1-0-1 現在の満足と将来の不安
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 意識調査では、生活の様々な環境要素について現在の満足度を聞いているが(図表I-1-1-3参照)、満足度が低い事項のうち、不安を感じる人の満足度と感じない人の満足度の差が特に大きいもの(注3)は、「雇用機会や働く場」・「地域経済の状況」、「地域のバリアフリー」・「介護・福祉のための施設やサービス」・「子育てのための施設やサービス」、さらに「まちのにぎわい」・「地域のコミュニティ」である。昨今の厳しい経済社会情勢を背景に、現在・将来の経済的基礎、加齢・障害時等のサポート、地域の活力に関連する項目の現状が不十分と認識されていること等も、将来の不安につながっているのではないかと考えられる。
 なお、国民生活に関する世論調査(内閣府平成20年6月調査)では、「日頃の生活の中で悩みや不安を感じている」と70.8%の人が答えており、これは増加傾向にある(平成9年5月調査60.6%、昭和63年5月調査50.7%)。悩みや不安の内容としては、「老後の生活設計について」(57.7%)、「自分の健康について」(49.0%)、「今後の収入や資産の見通しについて」(42.4%)が上位3つに挙げられており、将来の経済的基礎や加齢・障害等の不安が大きいことがここからもうかがわれる。

 このように、私たちの暮らしについて、現在の状態に対する満足と将来の見通しに対する不安は交錯している。また、世代やおかれた状況によっても見方は異なっている。
 私たちの日常生活の営みは、人間関係、環境、モノやサービスなどいろいろなものに支えられているが、次節以降では、「地域に住まう」、「社会で活動する」、「場所を移動する」の3つの局面から現状を分析し、私たちが暮らしに感じること・求めることを、詳しく検討する。


(注1)平成20年11月21日から12月1日にかけて、全国の満20歳以上の男女を対象に、インターネットベースにて実施し、4,000人の回答を得た。本調査では、各世代から幅広く、また、過疎地域からも十分なサンプルを集めるため、層化二段抽出法により、全国を過疎地域・非過疎地域に分類(第一段階)し、さらに地域ごとに各世代の構成比に応じて(第二段階)、対象を抽出した。集計の際には、我が国の過疎・非過疎別の人口構成比に合わせ、データに重みを付けて集計を行っている(ウェイトバック集計)。なお、本調査における過疎地域とは、過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)第2条第1項及び同法第33条第1項に該当する市町村である。以下、本稿における「意識調査」とはこの調査を指す。なお、グラフ内に記載されている値は四捨五入されているため、本文内の値と若干異なる場合がある。
(注2)意識調査結果は、回答者の居住地別に、200万都市(東京都区部及び人口200万人以上の政令指定都市)、大都市(人口200万人未満の政令指定都市)、中都市(人口10万人以上の市)、小都市(人口10万人未満の市)、町村部に分類し、集計・分析している。
(注3)平均の満足度が25%未満の事項のうち、不安を感じる人の満足度が感じない人の満足度の約半分以下となっているもの

 

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