第3節 「場所を移動する」 

3 長距離交通の現状と課題

(1)都市間移動の現状と課題(→第2章第5節1
(都市間移動ネットワークの役割)
 都市間移動ネットワークは、地域相互間の交流と連携を支え、国土の一体化と地域の自立・振興を図る上で、なくてはならない役割を果たすものである。こうした重要性を踏まえ、従来から幹線鉄道ネットワーク、航空ネットワーク、高速バスネットワーク及び幹線道路の整備が行われてきたところであり、これにより、いつでもどこへでも容易に移動できるようになってきた。こうしたネットワークの整備は、移動時間の短縮とともに、日帰り圏の広がりや日帰りでの滞在可能時間の増加などの効果をもたらしている。
 
図表I-1-3-44 新幹線整備による効果

図表I-1-3-44 新幹線整備による効果

(都市間移動の現状)
 都市間移動の目的は、平日では「仕事」が最多であり、次いで「観光」、「私用・帰省」となっている。一方、休日では、「観光」が45.7%と圧倒的に多く、次いで「私用・帰省」となっており、平日、休日ともに、上記3目的が都市間移動の目的の約8割を占めている。
 
図表I-1-3-45 旅行目的別流動量構成率

図表I-1-3-45 旅行目的別流動量構成率
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 輸送距離帯別輸送機関別分担率(旅客)を見ると、300km未満では自動車優位であり、例えば東京から浜松市や福島市、長岡市などまでがこれに当たる。300km以上750km未満では鉄道優位であり、例えば東京から岡山市や八戸市などまでがこれに当たる。また、750km以上からは航空優位になっていることがわかる。
 
図表I-1-3-46 輸送距離帯別輸送機関分担率(旅客)

図表I-1-3-46 輸送距離帯別輸送機関分担率(旅客)
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(都市間移動の利便性向上へのニーズ)
 意識調査では、都市間移動の利便性の向上度は48.6%となっている。
 今後とも都市間移動ネットワークについては、前述のとおり、その果たす役割の重要性に鑑み、また、今後の観光振興の足としても、一層利便性を向上させていく必要がある。
 
図表I-1-3-47 国内の長距離移動の利便性に関する向上度

図表I-1-3-47 国内の長距離移動の利便性に関する向上度
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(2)国際移動の現状と課題(→第2章第5節1
(国際移動ネットワークの役割)
 経済・社会・文化のあらゆる分野でのグローバル化の進展の中で、日本各地においても多くの分野で世界と直接関わりを持つようになってきた。国際移動ネットワークの整備により、海外との間でも容易に移動できるようになってきた。こうしたネットワークの整備は、グローバル化に対応した経済活動や生活のありようの確保にとって不可欠であり、また、海外との交流人口を増加させ、観光立国を推進していくのにも有効である。
(国際移動の現状)
 国際移動する旅客数は、テロ・戦争・景気等の政治経済情勢に影響を受けるものの、平成に入ってからの約20年間で1.8倍に伸びており、全体としては大きく伸びてきている。
 また、国際移動の目的は、「観光」が56.3%と最多であり、次いで「業務」が26.2%となっており、上記2目的が国際移動の目的の8割以上を占めている。
 
図表I-1-3-48 我が国の国際航空旅客輸送の動向

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図表I-1-3-49 海外への旅行目的

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(地方空港発着の国際線の増加)
 また、最近の状況として、平成16年度頃からの航空需要の回復・増加や、アジア・ゲートウェイ構想に基づく航空自由化への取組みにより、地方発着の国際線が増加している。
 
図表I-1-3-50 日本発着路線における国際旅客定期便数の推移

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図表I-1-3-51 旅客チャーター便数の推移

図表I-1-3-51 旅客チャーター便数の推移
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 地方空港における国際航空ネットワークの状況をみると、地方空港22空港において423便の定期国際旅客便が就航(注)、就航都市数は21都市となっており、なかでも韓国や中国への便が多い。
 
図表I-1-3-52 地方空港発着路線の就航

図表I-1-3-52 地方空港発着路線の就航

 このように、地方空港に国際線が離着陸することは、居住者の利便性向上のみならず、外国人がダイレクトに地方入りしやすくなり、今後観光立国を推進する手段としても重要なものである。

(空港へのアクセス)
 国際移動の際利用する空港を選ぶに当たり、ポイントとなる事項として、「来るのが便利だから」と答えた人が日本人では40.2%、外国人では46.3%おり、また、意識調査においても、空港へのアクセスの重要度は76.6%と高く、国際移動にあたっては、空港へのアクセスが重要であることがわかる。
 
図表I-1-3-53 出国空港別空港選択理由

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 空港への実際のアクセスについて、空港利用者のうち、日本人は70.3%、外国人は79.8%が鉄道やバスを利用している。一方で、意識調査では、空港へのアクセスの満足度は31.3%と低く、主要空港と都心とのアクセス所要時間を国際比較した場合、成田空港は、都心から空港まで50分以上かかり、他国と比べて所要時間がかかっており、早急な改善が求められる。
 
図表I-1-3-54 出国空港別最終アクセス交通手段構成

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図表I-1-3-55 世界の主要空港と都心間のアクセス所要時間及び距離

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(国際移動に関するその他のニーズ)
 意識調査では、国際移動の利便性の向上度は35.5%となっている。
 今後とも、利用者ニーズに的確に対応し、また、今後の更なるグローバル化に対応するとともに、観光振興の足としても、一層利便性を向上させていく必要がある。
 
図表I-1-3-56 国際移動の利便性に関する向上度

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(注)2008年冬期スケジュール現在

 

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