第3節 総合的・一体的な物流施策の推進 

1 国際物流機能強化のための施策

(1)ニーズに応じた国際物流施策の推進
 総合物流施策大綱や国土交通省国際物流施策推進本部決定に基づき、国際物流施策の総合的かつ戦略的な推進を図っており、最前線のニーズに対応した施策の展開という観点から、幅広い関係者が参画した「国際物流戦略チーム」を全国10地域において設置している。例えば、北部九州では第2回日中韓物流大臣会合の決定を踏まえた北東アジアにおける12フィートコンテナの普及拡大の検討、北海道では生鮮農産物の航空輸送におけるコールドチェーン(注1)の確立に向けた検討、関東では横浜本牧埠頭から仙台港にかけての鉄道輸送の促進等、地域の実情に応じた、創意工夫溢れる取組みが展開されている。

(2)国際海上輸送網の基盤の強化
 アジア諸国の経済成長や企業の国際分業の進展により、アジア地域を中心として国際海上コンテナ貨物の輸送量が大きく増加するとともに、アジア地域と欧米とを結ぶ基幹航路においては、船舶の大型化が進展しており、輸送効率の点から寄港地を集約する動きが進んでいる。
 我が国の国際海上コンテナ輸送の現状を見ると、アジア主要港と比較して割高な港湾コストや長いリードタイムもあって、基幹航路の寄港便数は減少しており、さらに、アジア等の主要港で積み替えられて輸送されるトランシップ貨物が増加している。一方、企業のサプライチェーンマネジメントの高度化やジャストインタイム輸送等の多様な荷主ニーズに対応した海上輸送サービスが求められている。
 また、平成20年4月には、交通政策審議会港湾分科会において「我が国産業の国際競争力強化等を図るための今後の港湾政策のあり方」が答申され、港湾政策の基本となる方針がとりまとめられた。
 このような状況を踏まえ、我が国産業の国際競争力強化とより豊かな国民生活の実現に向けて、国際・国内一体となった効率的かつ低負荷な海上輸送ネットワークを実現するために、次の取組みを推進するとともに、施策の更なる充実・深化を図ることとしている。
1)スーパー中枢港湾プロジェクトの充実・深化
 スーパー中枢港湾プロジェクトは、欧米基幹航路の維持により、多頻度・多方向・ダイレクト・高質な航路サービスを提供するため、アジア主要港を凌ぐコスト・サービス水準を目標に、港湾コストの3割低減及びリードタイムの1日程度への短縮を目指すものである。その推進に向けて、指定特定重要港湾(スーパー中枢港湾)を国土交通大臣が指定(京浜港、伊勢湾(名古屋港及び四日市港)、阪神港)し、民間事業者は大規模コンテナターミナルの運営事業の認定を受け、逐次運営を開始している。また、コンテナターミナルの機能を強化・補完する、高度で大規模な臨海部物流拠点の形成や、内航海運・鉄道等の国内輸送ネットワークとの円滑な接続等を推進するとともに、埠頭公社の株式会社化等により、スーパー中枢港湾全体の機能強化を図っている。
 
図表II-5-3-1 スーパー中枢港湾プロジェクトにより整備される次世代コンテナターミナル

図表II-5-3-1 スーパー中枢港湾プロジェクトにより整備される次世代コンテナターミナル

2)港湾手続の高度化
 国土交通省をはじめとした関係府省庁において、アジア・ゲートウェイ構想「貿易手続改革プログラム」等に位置付けられた「次世代シングルウィンドウ」を構築し、平成20年10月より稼働開始した。引き続き、港湾管理者手続の統一化・簡素化を進め、次世代シングルウィンドウへの機能追加を予定している。
3)国際港湾の機能向上
 時間的、距離的に国内物流と大差ない対東アジア物流において、高度化・多様化するニーズに対応し、迅速かつ低廉な物流体系を構築するため、国際ユニットロードターミナルや小口貨物積替円滑化施設等の整備を進めている。さらに、国際海上コンテナ貨物やチップ、木材、石炭等バルク貨物の増加に対応するため、国際海上輸送ネットワークの拠点となる中枢・中核国際港湾や地域の拠点となる港湾において、国際海上コンテナターミナルや多目的国際ターミナルの整備を行うとともに、ICT化の推進等利便性向上に向けた取組みを推進している。
4)海上交通環境の整備
 国際幹線航路のうち、浅瀬等の存在により、湾内航行に支障のある箇所の改良等を行うとともに、航路標識の整備や船舶航行規制の見直し等を行うことにより、船舶航行の安全性と海上輸送の効率性を両立させた海上交通環境の整備を行っている。

(3)国際競争力の強化に向けた航空物流機能の高度化
 我が国全体の国際競争力の維持・向上、航空物流産業の振興等の観点から、成田・羽田の一体的運用による首都圏空港の物流機能拡充、関西国際空港の国際物流ハブ機能の強化、中部国際空港の利活用の推進等について重点的に取り組んでいる。
 また、航空物流施策を総合的かつ戦略的に推進するため、「我が国航空物流のグランドデザイン」の策定・実現に向けて、荷主企業、航空フォワーダー、航空会社等の参画の下、平成20年4月より「航空物流に関する懇談会」を開催している。20年7月には、1)アジアの成長と活力の取り込み、2)航空貨物の輸送プロセスの効率化・円滑化の促進、3)航空輸送の特長を活かした多様な物流サービスの実現、4)戦略的な空港の物流機能の強化を基本骨格とする中間報告をとりまとめ、今後施策の更なる充実・具体化を図ることとしている。

(4)国際物流機能強化に資するその他の施策
 アジア域内での経済交流が進むにつれ、国際物流と国内の陸・海・空の各輸送モードが有機的に結びついた効率的な物流ネットワークの形成が急がれている。このため、国際標準コンテナ車(注2)が重要な港湾等と大規模物流拠点を積み替えなく通行可能な幹線道路ネットワークの整備を推進している。
 具体的には、国際コンテナ通行支障区間について、国際標準コンテナ車の通行に必要な耐荷力や空間を確保するため、橋梁補強、現道拡幅、バイパス整備等の対策を実施し、早期解消を図るとともに、物流活動の中核となる拠点的な空港・港湾から高速道路等を結ぶアクセス道路についても重点的かつ効果的に整備するなど、国際物流に対応した道路網の構築を推進している。さらに、海上輸送と鉄道輸送を組み合わせたSea&Railや海上輸送と航空輸送を組み合わせたSea&Airの活用を促進し、東アジアの貨物需要の増大等に対応するほか、スーパー中枢港湾等における鉄道積替施設の整備や内航フィーダー輸送の利用促進等国際複合一貫輸送の促進を図っている。


(注1)低温管理が可能な物流手段のつながり
(注2)長さ40フィート(約12m)の背高コンテナを積載したトレーラ(最大積載時の車両総重量は44トン、車高は4.1m)

 

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