第1節 地球温暖化対策の推進 

2 運輸部門における対策

 我が国全体のCO2排出量の約2割を占める運輸部門は、自動車に起因するものが排出量の約9割を占めている。平成2年と比べ18年の排出状況は、自家用乗用車からの排出量が、走行距離・車両の増加等により44%増と大幅に増加している。

(1)自動車単体対策及び走行形態の環境配慮化
1)自動車の燃費改善
 「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づくトップランナー方式(注1)の燃費基準の策定や自動車の燃費の公表等を行っている。平成19年度に出荷されたガソリン乗用車のうち約8割が22年度を目標年度とした燃費基準を達成しており、平均燃費値は7年度と比較して約28%向上したが、更なるCO2の削減に資するため、19年には27年度を目標年度とする新燃費基準の策定を行っている。
2)排出ガス低減・燃費性能の向上を促す仕組み
 最新の排出ガス基準値よりも有害物質を低減させる自動車については、その低減レベルに応じ、低排出ガス車認定制度を実施している。また、消費者が容易に識別・選択できるよう、低燃費車の普及促進を目的とした自動車燃費性能評価・公表制度を実施している。なお、これらの制度による低排出ガス認定レベルや燃費性能の表示については、「平成22年度燃費基準達成車」等のステッカーを貼付している。
3)自動車グリーン税制
 環境負荷の小さい自動車の普及を促進するため、上記措置に合わせて、税収中立を前提に排出ガス低減や燃費性能に優れた自動車に対して自動車税の税率を軽減し、新車新規登録から一定年数以上を経過した自動車に対しては税率を重くする自動車税のグリーン化や、低公害車等を取得した場合の自動車取得税の特例措置を講じている。自動車メーカーの技術開発や商品販売努力、消費者の環境への関心の高まりにより、平成19年度における自動車税のグリーン化の対象は、新車新規登録台数の約49%(約164万台)を占めている。なお、21年度税制改正では、厳しい経済情勢の中、自動車の買換・購入需要を促進しつつ低炭素社会の実現を目指すため、自動車重量税及び自動車取得税について、環境性能に優れた自動車の取得・継続保有に係る負担を免除・軽減する措置を、21〜23年度までの間講じることとしている。
4)次世代低公害車等の開発
 大型ディーゼル車に代替する、抜本的に環境性能を高めた非接触給電ハイブリッド自動車等の次世代低公害車について、実使用条件下での走行評価を行う実証モデル事業を実施し、実用性の向上を図っている。また、エネルギー効率が格段に高く、静粛性に優れ、大気汚染物質の排出もゼロである燃料電池自動車については、国連自動車基準調和フォーラム(WP29)における世界統一基準の策定作業に積極的に参加し、その早期策定に向けて貢献している。
5)エコドライブの普及・推進
 エコドライブ普及連絡会において策定された「エコドライブ普及・推進アクションプラン」に沿って、平成20年度もエコドライブ推進月間(11月)の積極的な広報等を行い、普及・推進を図っている。また、自動車運送事業者等へのエコドライブ管理システム(EMS)(注2)用機器の全面導入を支援するEMS普及事業を実施している。

(2)交通流の円滑化
 交通流の円滑化による走行速度の向上が実効燃費を改善し、自動車からの二酸化炭素排出量を減らすことから、環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点の立体化等を推進するとともに、高速道路の多様で弾力的な料金施策、自動車需要の調整、高度道路交通システム(ITS)の推進、道路交通情報提供事業の促進、路上駐停車対策、路上工事の縮減、ボトルネック踏切等の対策、交通安全施設の整備といった交通流体策を実施する。

(3)物流の効率化
 国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロベース)は自動車が最大であり、50%を超えている。トラックのCO2排出原単位(注3)は、大量輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、貨物と旅客をあわせた運輸部門におけるCO2排出割合は、鉄道、内航海運が全体の8〜9%に対し、トラックは営業用・自家用ともに15%を超えている。国内物流を支え、CO2の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、トラックの自営転換を含め、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。鉄道は、平成19年度より北九州・福岡間の輸送力増強事業を実施しており、加えて、鉄道や海運のモーダルシフトを推進すべく、「エコレールマーク」(20年12月末現在、商品26件(31品目)、取組企業47件を認定)や「エコシップマーク」(20年12月現在、荷主12者、物流事業者13者を認定)の普及に取り組んでいる。また、国際海上コンテナターミナル等の整備により、国際貨物の陸上輸送距離削減を図っている。
 国土交通省は、経済産業省、物流団体、荷主団体等と協力して、グリーン物流パートナーシップ会議を開催し、物流事業者と荷主の連携の強化による物流の効率化等を推進している。20年度においても引き続き物流事業者と荷主のパートナーシップにより実施するCO2排出削減に向けたプロジェクトに対し、支援を行い(20年度末で224件)、特に優れたプロジェクトに対しては大臣表彰等によりそのPRを図っている。
 
図表II-7-1-2 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進

図表II-7-1-2 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進

(4)公共交通機関の利用促進
 自家用乗用車から公共交通機関へのシフトは、自動車の走行量削減になり、地球温暖化対策の面からも推進が求められている。このため、ICカードの導入等情報化の推進や乗継ぎの改善等による公共交通利便性向上、公共交通利用推進等マネジメント協議会を通じたエコ通勤の実施等の需要サイドの取組みの促進等を行っている。
 
図表II-7-1-3 モビリティ・マネジメントによる「エコ通勤」の推進

図表II-7-1-3 モビリティ・マネジメントによる「エコ通勤」の推進

 さらに、「環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業」による、バスロケーションシステムやICカード等に対する地域の取組みへの支援を行い、ESTの全国への普及展開を図っている。
 
図表II-7-1-4 環境的に持続可能な交通(EST)の普及展開

図表II-7-1-4 環境的に持続可能な交通(EST)の普及展開

(5)鉄道・船舶・航空のエネルギー消費効率の向上
1)環境対応・省エネに資する鉄道システムの開発の推進
 鉄道分野におけるハイブリッド機関車等の省エネ車両や高効率電力設備等の技術開発を推進する。
2)クールシッピングの推進(海運分野におけるCO2排出削減)
 国際海運において、船舶の大幅な燃費向上を実現する革新的技術の開発、船舶実燃費指標(海の10モード)の開発・国際標準化等を行うとともに、内航海運についても、海の10モードの適用、モーダルシフトの推進、スーパーエコシップの普及促進等に取り組んでいる。
3)航空保安システムの高度化等の推進
 航空分野においては、飛行時間・経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)の導入や濃霧等による目的地の変更(ダイバート)や空中待機を減少させるための計器着陸装置(ILS)の高カテゴリー化などにより、航空機からのCO2排出削減を推進している。

(6)国民・民間事業者による取組みの促進
 地球温暖化対策を実行するためには、国民各界各層の理解と行動が不可欠である。環境問題への取組みに関し、中小規模の事業者が事業活動を行い環境に配慮した取組みを自主的に推進できるよう、自動車、海運、倉庫及び港湾運送の事業ごとのグリーン経営推進マニュアルに基づき事業者が実施する環境に配慮した経営(グリーン経営)の普及を促進している。
 また、輸送分野におけるエネルギー使用量の更なる抑制等を目的とした省エネ法に基づき、特定輸送事業者及び特定荷主による定期報告書等の提出が開始されている。今後は、提出された定期報告書等を活用し、運輸分野の省エネに向けた更なる取組みを促進していく。
 
図表II-7-1-5 省エネ法改正による輸送分野のエネルギー使用効率の改善

図表II-7-1-5 省エネ法改正による輸送分野のエネルギー使用効率の改善


(注1)現在商品化されている製品のうち、燃費が最も優れているものの性能、技術開発の将来の見通し等を勘案して基準を定める方式
(注2)自動車の運行において計画的かつ継続的なエコドライブの実施とその評価及び指導を一体的に行う取組み
(注3)貨物1トンを1km輸送するときに排出されるCO2の量

 

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