6 道路交通における安全対策
平成21年の交通事故死者数は、9年連続で減少し、昭和27年以来57年振りに4千人台にまで減少したが、65歳以上の高齢者が交通事故死者数全体の約半数を占めている。このため、道路の特性に応じた交通事故対策を進めることとして、事故の発生割合の高い区間における重点的な対策、通学路における歩行空間の整備、自転車利用環境の整備等を推進している。
図表II-6-4-5 交通事故件数及び死傷者数等の推移
(1)幹線道路と生活道路における交通事故対策の重点的実施
幹線道路については、事故が特定の区間に集中していることから、地域の意見も聞きながら、「事故危険箇所」を含め、事故の発生割合の高い区間において重点的に事業を実施している。生活道路については、人優先の安全・安心な歩行空間を形成するため、「あんしん歩行エリア」や「くらしのみちゾーン」を含め、小学校等に通う多くの児童が利用するなど、事故の危険性の高い通学路等において重点的に事業を実施している。
(2)安全で安心な道路サービスを提供する計画的な橋梁等の管理
今後、高度経済成長期に集中して建設された多くの橋梁等、高齢化した道路ストックが急増し、重大な損傷発生の危険性が高まることが懸念される。このため、高速道路から市町村道までの道路橋について定期点検に基づく「早期発見・早期補修の予防保全」を計画的に実施して長寿命化を実現し、安全・安心な通行を長期にわたり確保していく。また、地方公共団体では、約6割の市区町村において、人材、技術、資金の不足等の問題により、定期的な点検が実施できていない状況を解消するため、点検の責務及び技術基準の明示や技術支援、財政支援等の措置を講じている。
図表II-6-4-6 建設後50年以上の橋梁の割合
(3)自動車の総合的な安全対策
1)事業用自動車の安全対策
「今後10年間で事業用自動車の死者数、人身事故件数半減」、「飲酒運転ゼロ」を目標として平成21年3月に策定した「事業用自動車総合安全プラン2009」に基づき、メールマガジン「事業用自動車安全通信」の創設、監査方針・行政処分基準の強化、安全マネジメント評価対象事業の拡大及び第三者機関による安全マネジメント評価の実施等のほか、事故速報等の報告範囲の拡大等を内容とする自動車事故報告規則の改正などを実施した。また、目標を確実に達成するため、「事業用自動車総合安全プラン2009フォローアップ会議」を同年10月に設置・開催し、今後も関係者間で施策の進歩状況、目標の達成状況等を確認することとしている。
2)今後の車両安全対策の検討
平成18年6月の交通政策審議会報告書において、22年までに死者数を2,000人削減(対11年比)、負傷者数を25,000人削減(対17年比)することが目標に掲げられた。これを踏まえ、今後、目標の達成状況の評価を行うとともに、新たな車両安全対策の目標について検討を行うこととしている。
3)安全基準の拡充・強化
ハイブリッド車等は構造的に音がしなくて危険を感じるという意見が自動車ユーザーや視覚障害者団体等から寄せられていることから、平成22年1月に「ハイブリッド車等の静音性に関する対策のガイドライン」を策定した。また、事故分析の拡充・強化のためドライブレコーダ(注1)データの収集・管理・活用方法について検討している。
4)自動車アセスメントによる安全情報の提供
自動車とチャイルドシートに関する安全性能の評価結果を公表し、ユーザーの安全な自動車等の選択や製作者のより安全な自動車及びチャイルドシートの開発を促している。平成12年度から20年度の間に自動車178車種、チャイルドシート95種類の評価結果を提供することにより、自動車等の安全性能の向上に貢献している。
5)先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進
平成18年度から産学官の協力体制で第4期ASV推進計画を進めているところであり、大型車用衝突被害軽減ブレーキに対する補助を行っている。
図表II-6-4-7 大型衝突被害軽減ブレーキの作動例
6)リコール制度の充実・強化について
自動車メーカーによるリコールに係る不正行為に対する再発防止対策に基づき、情報収集・監査体制の強化及び技術的検証等、リコール制度の着実な運用に努めているところであるが、今後、よりユーザー目線に立ったものとなるよう検討を行っている。また、不具合に対するユーザーの関心を高め、適切な使用や保守管理及び不具合発生時の適切な対応が促進されることを目的とし、メーカーから報告があった自動車の不具合に起因する事故・火災情報を平成21年6月から公表している。
7)自動車検査の高度化
不正な二次架装(注2)の防止やリコールにつながる車両不具合の早期抽出等を図るため、ICT化された自動車検査情報の活用等による自動車検査の高度化を進めている。
(4)自動車損害賠償保障制度による被害者保護
自動車損害賠償保障制度は、自動車の保有者等の負担で、自賠責保険、政府の保障事業、被害者救済対策事業等を行うものであり、交通事故被害者の保護に大きな役割を担っている。
図表II-6-4-8 自動車損害賠償保障制度
(注1)事故や急ブレーキ作動時の車両の状態を映像及び減速度等のデータで記録する装置
(注2)自動車の一部部品を取り付けない又は取り外した状態で新規検査を受検し、自動車検査証の交付を受けた後に、当該部品を取り付けて使用者に納車する行為