第1節 地球温暖化対策の推進 

2 運輸部門における対策

 我が国全体のCO2排出量の約2割を占める運輸部門からの排出は、平成20年度の確定値によると、2億3,500万トンであり、目標達成計画における22年度の目安としての目標である2億4,000〜4,300万トンを初めて下回ることができたところであり、更なる排出削減に向けた取組みを推進している。

(1)自動車単体対策及び走行形態の環境配慮化
1)自動車の燃費改善
 「エネルギー使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づくトップランナー方式(注1)の燃費基準の策定や自動車の燃費の公表等を行っている。平成20年度に出荷されたガソリン乗用車のうち8割以上が22年度を目標年度とした燃費基準を達成しており、平均燃費値は7年度と比較して約34%向上した。19年には27年度を目標年度とした燃費基準を策定している。さらに32年に向けた新たな燃費基準の検討を開始し、23年春を目途にとりまとめることとしている。
2)排出ガス低減・燃費性能の向上を促す仕組み
 最新の排出ガス基準値よりも有害物質を低減させる自動車については、その低減レベルに応じ、低排出ガス車認定制度を実施している。また、消費者が容易に識別・選択できるよう、低燃費車の普及促進を目的とした自動車燃費性能評価・公表制度を実施している。なお、これらの制度による低排出ガス認定レベルや燃費性能の表示については、「平成22年度燃費基準達成車」等のステッカーを貼付している。
3)環境対応車の普及促進
 排出ガス低減や燃費性能に優れた自動車に対して自動車税の税率を軽減し、新車新規登録から一定年数以上を経過した自動車に対しては税率を重くする自動車税のグリーン化や、自動車取得税の特例措置を講じている。自動車メーカーの技術開発や商品販売努力、消費者の環境への関心の高まりにより、平成20年度における自動車税グリーン化の対象車種の登録台数は、新車新規登録台数全体の約41%(約118万台)を占めている。
 また、22年度税制改正では、21年度税制改正において創設された一定の排ガス性能、燃費性能等を備えた自動車に係る自動車重量税及び自動車取得税の時限的免除・軽減措置(いわゆる「エコカー減税」)について、対象車種を一部追加するとともに、自動車重量税について、車体の環境負荷に応じた段階的な複数税率を設定することによりグリーン化を行うこととされた。
 さらに、地球温暖化対策、大都市地域等における大気汚染対策等の観点から、トラック・バス・タクシー事業者を中心に、圧縮天然ガス(CNG)自動車、ハイブリッド自動車、電気自動車の導入等に対する補助を行うとともに、環境対策と景気対策を効果的に実現するべく、21年度補正予算により自動車運送事業者の環境対応車への買い換え・購入に対する支援を22年9月末まで実施することとしている。
4)次世代低公害車等の開発、実用化、利用環境整備
 大型ディーゼル車に代替する、抜本的に環境性能を高めた非接触給電ハイブリッド自動車等の次世代低公害車について、実使用条件下での走行評価を行う実証モデル事業を実施し、実用性の向上を図っている。また、21年度より電動バス・超小型モビリティ等の環境対応車が利用しやすいまちづくりを実現することを目的として、研究会を設立している。燃料電池自動車については、国連自動車基準調和フォーラム(WP29)における世界統一基準の策定作業に積極的に参加し、その早期策定に向けて貢献している。
5)エコドライブの普及・推進
 エコドライブ普及連絡会において策定された「エコドライブ普及・推進アクションプラン」に沿って、平成21年度もエコドライブ推進月間(11月)の積極的な広報等を行っている。また、自動車運送事業者等へのエコドライブ管理システム(EMS)(注2)用機器の全面導入を支援するEMS普及事業を実施している。

(2)交通流の円滑化
 交通流の円滑化による走行速度の向上が実効燃費を改善し、自動車からの二酸化炭素排出量を減らすことから、環状道路等幹線道路ネットワークの整備、交差点の立体化等を推進するとともに、自動車需要の調整、高度道路交通システム(ITS)の推進、ボトルネック踏切等の対策等の交通流対策を実施している。

(3)物流の効率化
 国内物流の輸送機関分担率(輸送トンキロベース)はトラックが最大であり、50%を超えている。トラックのCO2排出原単位(注3)は、大量輸送機関の鉄道、内航海運より大きく、貨物と旅客を合わせた運輸部門におけるCO2排出割合は、トラックが約36%を占めている(鉄道・内航海運は合計で約8%)。国内物流を支えつつ、CO2の排出を抑制するために、トラック単体の低燃費化や輸送効率の向上と併せ、トラックの自営転換を含め、鉄道、内航海運等のエネルギー消費効率の良い輸送機関の活用を図ることが必要である。鉄道や海運へのモーダルシフトを推進すべく、北九州・福岡間及び隅田川駅の鉄道輸送力増強事業を実施している他、省エネ船の建造促進などの内航海運の活性化策に取り組んでいる。加えて、「エコレールマーク」(22年2月末現在、商品50件(62品目)、取組み企業59件を認定)や「エコシップマーク」(21年12月現在、荷主27者、物流事業者30者を認定)の普及に取り組んでいる。さらに、国際海上コンテナターミナル等の整備により、国際貨物の陸上輸送距離削減を図っている。

 国土交通省は、経済産業省、物流団体、荷主団体等と協力して、グリーン物流パートナーシップ会議を開催し、物流事業者と荷主の連携の強化による物流の効率化等を推進している。また、物流事業者と荷主のパートナーシップにより実施するCO2排出削減に向けたプロジェクトに対し、支援を行い(21年度末で240件)、特に優れたプロジェクトに対しては大臣表彰等によりそのPRを図っている。さらに、21年度から物流連携効率化推進事業を創設し、物流の効率化の取組みに対して支援を行っている。
 
図表II-7-1-2 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進

図表II-7-1-2 グリーン物流パートナーシップ会議を通じた取組みの推進

(4)公共交通機関の利用促進
 自家用乗用車から公共交通機関へのシフトは、自動車の走行量削減になり、地球温暖化対策の面からも推進が求められている。このため、ICカードの導入等情報化の推進や乗継ぎの改善等による公共交通利便性向上のほか、平成21年6月にエコ通勤優良事業所認証制度を創設し、各企業(事業所)単位でのエコ通勤の取組みを国民的運動として推進、さらに事業所のみならず地域公共交通の活性化も同時に図る通勤交通グリーン化推進プログラムを展開した。さらに、「環境的に持続可能な交通(EST)モデル事業」による、バスロケーションシステムやICカード等に対する地域の取組みへの支援を行い、ESTの全国への普及展開を図っている。
 
図表II-7-1-3 モビリティ・マネジメントによる「エコ通勤」の推進

図表II-7-1-3 モビリティ・マネジメントによる「エコ通勤」の推進

 
図表II-7-1-4 環境的に持続可能な交通(EST)の普及展開

図表II-7-1-4 環境的に持続可能な交通(EST)の普及展開


(5)鉄道・船舶・航空のエネルギー消費効率の向上
1)環境に優しく省エネに資する鉄道システムの開発の推進
 ハイブリッド機関車等の省エネ車両や高効率電力設備等の技術開発を推進している。
2)海運グリーン化総合対策
 船舶の実燃費指数である「海の10モード」(注4)の内航海運への適用を進め、新技術等の導入による船舶の省エネ化を促進し、モーダルシフトの推進、スーパーエコシップ(注5)等の普及促進、外航海運における海洋環境イニシアティブ(注6)等の施策と一体となって、海運からのCO2排出削減を推進しており、21年度補正予算においても、省エネ船の建造等の支援策を盛り込んだ。
3)航空分野のCO2排出削減の取組み
 飛行時間・経路の短縮を可能とする広域航法(RNAV)や運航者が希望する最も効率的な高度を飛行できるUPR(注7)方式の導入、濃霧等による目的地の変更(ダイバート)や空中待機を減少させるための計器着陸装置(ILS)の高カテゴリー化等の航空保安システムの高度化や、航空機用地上動力設備(GPU)の利用促進等のエコエアポートづくりを推進している。また、管制機関と航空会社が連携をとり効率的な運航を目指す「アジア太平洋環境プログラム」(ASPIRE)(注8)へ参画する等、国際的な取組みの強化も実施している。

(6)国民・民間事業者による取組みの促進
 地球温暖化対策を更に進めるためには、国民各界各層の理解と積極的な行動が不可欠である。そのため、交通観光分野のカーボンオフセットの普及を促進している。さらに、中小規模の事業者が環境に配慮した事業活動を自主的に推進できるよう、自動車、海運、倉庫及び港湾運送の事業ごとのグリーン経営推進マニュアルに基づき事業者が実施する「グリーン経営認証制度」を進めている。
 また、輸送分野におけるエネルギー使用量の更なる抑制等を目的として、省エネ法に基づき、特定輸送事業者及び特定荷主による定期報告書等の提出を義務づけ、省エネに向けた取組みを進めている。

 
図表II-7-1-5 省エネ法改正による輸送分野のエネルギー使用効率の改善

図表II-7-1-5 省エネ法改正による輸送分野のエネルギー使用効率の改善


(注1)現在商品化されている製品のうち、燃費が最も優れているものの性能、技術開発の将来の見通し等を勘案して基準を定める方式。
(注2)自動車の運行において計画的かつ継続的なエコドライブの実施とその評価及び指導を一体的に行う取組み
(注3)貨物1トンを1km輸送するときに排出されるCO2の量
(注4)統一的な評価指標の無い実海域における船舶の省エネ性能を設計段階で評価する指標
(注5)電気推進システムを採用し、CO2、NOxや燃費の削減に資する優れた環境性能と経済性を有する次世代内航船
(注6) 船舶の技術研究開発の促進、新技術普及のための国際標準化・人材育成の推進により国際海運からのCO2排出削減を目的とした施策パッケージ
(注7)User Preferred Route
(注8)Asia and Pacific Initiative to Reduce Emissions


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