はじめに 

はじめに

 現在、多くの人々が、将来の日本に対して漠然とした不安を感じているのではないか。その原因を考えると、3つの大きな不安要因に突き当たる。
 第一は、我が国の歴史の中で経験したことのないような人口減少を迎えていることである。日本は、2004年をピークとして人口が減少する社会に入っている。現在2010年に1億2,738万人(注1)の人口は、2055年には8,993万人(注2)と、およそ3割減少し9千万人をきることが推計されている。“国”の根幹はそこに暮らす“人”であるが、それがどんどん減少していくことに不安になる。
 第二に、諸外国が経験したことのないような急激な少子高齢化が進んでいることである。日本の人口の構成をみると、年少人口、生産年齢人口、老年人口は、2010年にはそれぞれ13%、64%、23%であるが、2035年には9%、57%、34%(注3)となり、人口の3分の1以上が高齢者となる。人口が減少するだけではなく、その構成自体も大きく変わることに不安になる。
 第三に、膨大な長期債務を抱えていることである。2010年度末時点で国と地方をあわせた長期債務残高は862兆円となる見通しであり、我が国のGDPの約1.8倍の規模である。財政状況がますます厳しくなる中、これだけの債務をかかえてどうなるのか不安になる。

 日本は今、大きな転換期にある。次章以降でも述べるように、厳しい財政状況の下、人口減少や少子高齢化はあらゆる面に影響しており、社会経済全体から個人の生活や意識に至るまで、様々な変化が生じている。若者の負担が増える、高齢者が安心して暮らせない、社会に元気がなくなるなど、人々は戸惑いや不安を感じている。
 これまで経験したことがない事態に直面しているなか、将来を見据え、次の時代につながる持続可能な社会をつくっていくためには、日本の経済社会のあらゆる面でパラダイムシフトが必要であり、国民に夢を与え、日本を牽引する国土交通行政へと大胆に転換するべく取り組んでいく必要がある。

 本白書では、この“日本の転換期”を取り上げる。「転換期を迎えている地域・社会と国土交通行政」をテーマとし、第1章では日本の経済社会やそれぞれの地域で何が起こっているのか、個人の生活や意識にどのような変化が生じているかをみる。その上で、第2章で国土交通行政に求められているものは何か、さらに、第3章で各地域ではどのような取組みが芽生えているかを考える。


(注1) 総務省「人口推計月報」(平成22年3月)より、2010年3月1日時点の概算値。
(注2) 国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成18年12月推計)」の出生中位死亡中位推計より計算。
(注3) 同上。


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