第2節 観光立国の実現に向けた取組み 

4 観光旅行の促進のための環境の整備

(1)休暇の取得・分散化の促進
 ピーク時に集中する旅行需要を平準化し、旅行コストの低減や観光産業における生産性の向上・雇用の安定化等を通じたサービス水準の向上等により、顕在化していない旅行需要を掘り起こし、地域経済の活性化を図ることを目的として、大型連休を地域別に分散して設定する休暇取得の分散化に取り組んでいる。観光立国推進本部休暇分散化ワーキングチームにおいて、休暇の分散化案や実施スケジュール等について関係省庁と検討・調整を行ったほか、産業界等へのヒアリング、ピーク需要調査、内閣府特別世論調査、地方ブロック説明会の開催等、休暇取得の分散化に関する国民各層の意見や効果・影響等を把握するための取組みを実施した。
 また、各界を代表する委員から構成される「休暇改革国民会議」を開催し、休暇改革に関する課題や対応案等について議論を行うなど、国民的なコンセンサス形成に向けた取組みを実施している。
 あわせて、地域ぐるみの「家族の時間づくり」を目的として、企業における有給休暇取得促進と学校休業の柔軟な設定により、大人と子どもの休みのマッチングを行う「家族の時間づくり」プロジェクト(休暇取得・分散化促進実証事業)を全国9地域において実施した。

(2)ユニバーサルデザインの考え方に基づく観光の促進
 ユニバーサルデザインの考え方に基づく観光について、全国における取組内容の調査を行うとともに、今後の普及・促進を考える上で、必要な情報発信のあり方や相互連携について検討を行った。

(3)旅行取引を取り巻く環境の変化に対応した消費者保護への取組み
 旅行取引の公正の維持や旅行者の安全の確保を図るため、旅行業法における消費者保護について、観光庁と消費者庁が連携して取り組んでいる。

(4)日本人の海外旅行促進のための取組み
 VWC注1への協力等を通じて海外旅行需要の喚起を図っている。
 また、海外旅行者の安全を確保するため、観光庁は、外務省等と緊密な連絡をとりつつ、海外旅行者に対する渡航情報の周知徹底や、旅行業者の緊急連絡体制の整備を図っている。

(5)新たな旅行形態の創出等
 観光立国推進本部の下に設置された「観光連携コンソーシアム」において、エコツーリズム、グリーン・ツーリズム、文化観光、産業観光、スポーツ観光、医療観光等、多様な観光メニューについて、関係省庁の連携による総合的な振興策の検討を行っている。

(6)観光統計の整備
 観光政策の戦略的立案及び成果検証に活用するため、各種観光統計の整備拡充を行った。将来的に訪日外国人旅行者数を3,000万人とする目標の達成に向け、訪日外国人の消費動向を把握するための訪日外国人消費動向調査を平成22年度から開始したほか、都道府県における観光入込客に関する統計について、調査手法等の共通化を図るための「観光入込客統計に関する共通基準」の普及促進を行っており、22年4−6月期調査分より、共通基準による統計結果の公表を開始した。
 また、従来から実施している宿泊旅行統計調査及び旅行・観光消費動向調査について、調査対象者数等の拡充を行うとともに、国際的に導入が進みつつあるTSA注2を本格導入したことで、観光がもたらす経済効果の国際間比較を正確に行うことが可能となる。
 さらに、観光産業の事業者数や売上規模、雇用・就労状況等を明らかにする観光地域経済調査(仮称)の実施に向け、予備的調査等に取り組むこととしている。


注1 VWC(Visit World Campaign:ビジット・ワールド・キャンペーン)とは、(社)日本旅行業協会が中心となり、海外旅行の関係者と一体となって取り組んでいる海外旅行の需要喚起を図る活動。
注2 TSA(Tourism Satellite Account:旅行・観光サテライト勘定)は、国民経済計算(SNA)の枠組みのなかで、観光経済を体系付けるための勘定。サテライト勘定とは、従来の枠組みにはない経済活動をSNAの中で体系付け、新しい経済概念に対応していくときに用いられる枠組みであり、日本では環境、介護、NPO等の分野で試行されている。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む