第4節 多国間・二国間交渉等を通じた取組み
1 多国間交渉・フォーラムを通じた取組み
(1)世界貿易機関(WTO)への対応
WTOドーハ・ラウンドにおいて、一層の自由化を目指し、我が国は、サービス貿易交渉において、海運・建設分野における複数国会合の議長を務めるなど、各分野における交渉に積極的に参加している。また、公共事業を含め政府が行う調達に関する規律を設けている政府調達協定(GPA)についても、手続の透明性の確保と市場参入の拡大を図ることを目的とした改正交渉を進めている。
(2)アジア太平洋経済協力(APEC)への対応
APECは貿易・投資の自由化及び円滑化と経済・技術協力を推進しており、実務者レベルで行う交通WG(作業部会)及び観光WGを中心に積極的に取り組んでいる。交通WGは、分野別専門家会合で陸・海・空・インターモーダルについて議論を行っており、2010年(平成22年)10月には第33回交通WGが千葉で開催された。観光WGは、APEC域内の観光振興に向け、域内に共通した政策的諸課題について議論を行っており、同年9月には国土交通大臣が議長を務めた第6回観光大臣会合が奈良で開催され、本会合の成果として「奈良宣言」を採択した。
(3)経済協力開発機構(OECD)への対応
OECD造船部会における健全な造船市場の構築、公正な競争条件の整備及び新興造船国との対話強化、地域開発政策委員会(TDPC)における国土・地域政策等に関する各加盟国の政策レビュー、気候変動に対応するための都市の競争力に関する政策の比較検討等に積極的に取り組んでいる。OECD/ITF共同交通研究センターにおいては、道路安全施策の有効性、都市での自転車走行の安全性等、研究ワーキングへの参画を通じて積極的に対応している。
(4)国際海事機関(IMO)、国際労働機関(ILO)への対応
我が国は世界有数の海運・造船国として、IMOの活動に積極的に参加し、主導的な役割を果たしており、最近の活動としては、船舶からの温室効果ガス及び大気汚染物質削減、目標指向の新造船構造基準注、海賊対策等を検討している。また、2011年(平成23年)はIMO事務局長選挙やIMO理事国選挙が予定されており、我が国は国際的発言力強化のために、その当選を目指して取り組んでいる。
2006年(18年)2月、ILOにおいて採択された海事労働条約は、船員の労働環境の向上及び国際海上輸送における公正な競争条件の確立を図るものであり、我が国では本条約の採択直後より、国内関係者間において本条約に対応した国内制度の策定に関する検討・調整を実施するなど、本条約の締結に向けた取組みを進めている。
(5)国際民間航空機関(ICAO)への対応
ICAOは、国際民間航空の安全かつ整然とした発達及び国際航空運送業務の健全かつ経済的な運営に向け、一定のルール等を定めている。我が国は加盟国中第2位の分担金を負担し、また、第1カテゴリー(航空輸送において最も重要な国)の理事国として、ICAOの諸活動に積極的に参加し、国際民間航空の発展に寄与している。
(6)各分野における多国間の取組み
1)物流分野での取組み
日中韓3国による物流大臣会合、物流発展フォーラムを開催し、国際物流に関する情報交換、相互協力及び意見交換を通じ、北東アジアにおけるシームレス物流の実現や、物流情報ネットワークの構築、環境に優しい物流の実現等、日中韓3国間の物流分野における更なる協力・連携の強化を推進している。
2)観光分野での取組み
日中韓3国による観光大臣会合を開催し、国際観光に関する情報交換、相互協力及び意見交換を通じ、観光交流の促進と協力の強化を推進している。
3)道路分野での取組み
世界道路協会(PIARC/WRA)では副会長を始め、15の技術委員会に委員を派遣するとともに、アジアオーストラレイシア道路技術協会(REAAA)の活動にも参加し、国際活動を推進している。
4)港湾分野での取組み
2010年(平成22年)11月に日中韓3国により、第11回北東アジア港湾局長会議が開催され「北東アジア地域における港湾間の緊密な連携」について3国が自国の取組状況を報告し、情報交換を行ったほか、22年度から3箇年の協同研究となる「持続可能な発展のためのグリーン港湾戦略:排出ガスの削減とエネルギー効率の向上」と「北東アジア地域における地球温暖化を考慮した沿岸防災策」について、1年目の進捗状況を報告した。
5)海上保安の分野での取組み
北太平洋海上保安フォーラム及びアジア海上保安機関長官級会合を通じて、海賊及び海上セキュリティ対策等、海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進しているほか、IMO、IHO、国際連合教育科学文化機関・政府間海洋学委員会(IOC)等、国際機関を通じた国際貢献にも努めている。
6)測量・地図分野の取組み
地球地図プロジェクト推進のため、地球地図第2版整備に向けた途上国への技術支援、気候変動枠組条約締約国会議等の場を通じたプロジェクト普及活動を実施している。また、国連アジア太平洋地域地図会議の勧告で設置されたアジア太平洋GIS基盤常置委員会の副会長を務めるほか、関係各国と協働で地殻活動監視を推進している。