第3節 産業の活性化

1 鉄道関連産業の動向と施策

(1)鉄道事業

1)鉄道事業の動向と施策
 平成23年度の鉄道旅客の輸送人員は、前年度と比較して横ばいである。JRでは、新幹線輸送は増加、在来線輸送は横ばいに推移しており、民営鉄道は減少している。
 23年度の鉄道貨物の輸送量については、東日本大震災で被災した製造業の生産の中止や輸送ルートの寸断の影響で年間輸送トン数、輸送トンキロともに減少となった。
 各鉄道事業者においては、快適で安心な鉄道空間の確保を図っており、例えば、主に都市部の地下鉄等において、路線名と駅名にアルファベットや数字を併記するナンバリング(番号制)の普及が進んでいる。また、13年のJR東日本「Suica」以降、交通系ICカードの導入が進んでおり、25年3月23日から、JR5社と首都圏、名古屋圏、近畿圏及び九州圏の主な私鉄がそれぞれ発行する合計10種類のICカード乗車券の相互利用が開始され、更なる利用者の利便性の向上が期待される。

2)JRの完全民営化に向けた取組み
 昭和62年4月の国鉄の分割・民営化により設立されたJR各社は、以来25年余りにわたり、それぞれの地域事情や経営環境を踏まえた経営努力を続けてきた。この間、JR東日本、JR東海及びJR西日本については、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構の保有株式の売却も完了し、完全民営化されたが、国鉄改革の経緯を踏まえ、当分の間、JR会社間における相互の連携・協力の確保、利用者利便の確保、中小企業への配慮等に関する措置がとられている。
 一方、JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物については、各社とも、増収努力や経費削減等の取組みを行っているところではあるが、地域の足の確保や環境負荷の小さい鉄道貨物輸送の推進等の社会的に重要な役割を担っていることから、経営基盤強化のため、従来の固定資産税の軽減措置等に加え、平成23年度より、「日本国有鉄道清算事業団の債務等の処理に関する法律」に基づき、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構特例業務勘定からの資金を活用し、各社に対して経営自立に向けた必要な支援を実施しているところである。

(2)鉄道車両工業
 鉄道新造車両及び鉄道車両部品(動力発生装置、台車等)の生産金額は、国内向けは横ばい傾向であり、一方、輸出向けはその年の受注状況によって波がある。平成23年度の新造車両数は1,807両、生産金額は1,778億円で、鉄道車両部品の生産金額は2,720億円となっている。
 このうち、新造車両の生産金額の構成比は、国内向け96.3%、輸出向け3.7%であり、生産金額は22年度比で国内向けは11.0%、輸出向けは69.6%減少した。なお、輸出先は米国、台湾、エジプトであった。
 車両メーカー等は、鉄道事業者と連携し、高速化、安全性・快適性等の向上、低騒音・バリアフリーといった様々な社会的ニーズを満たす車両の開発を進めているほか、基本設計や部品を共通化した「通勤・近郊電車の標準仕様ガイドライン」を参考に、設計作業の省力化、標準品の普及等を図ることにより、コスト低減に取り組んでいる。


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