第2節 自然災害対策

コラム 河川堤防の緊急点検結果に基づく緊急対策

 平成24年7月の九州の豪雨災害では、各地でこれまで経験したことのないような大雨となり、死者・行方不明者はあわせて34名にのぼったほか、多数の住家等被害が発生するなど甚大な被害が発生しました。
 直轄管理河川においては、10河川で既往最高水位を突破し、筑後川水系花月川と矢部川水系矢部川で河川堤防が決壊したほか、河川堤防を越水するなど、計7河川ではん濫が起こりました。直轄管理河川の堤防決壊による大規模災害としては、16年度の円山川(兵庫県豊岡市)以来という事態でした。
 今回の被災メカニズムについて、筑後川水系花月川の決壊は、急流河川特有の河川水の浸食・洗掘によるものと考えられています。また、矢部川水系矢部川の決壊は、水位のピークを過ぎてから発生したものであり、決壊箇所以外でも、堤防裏の水田から噴砂を伴う漏水箇所が見つかっていました。そのため、学識者らによる「矢部川堤防調査委員会」を設置し、被災メカニズムについて詳細な検討を行いました。その結果、矢部川堤防の決壊は、地層構成、出水時の外力等の要因が複合的に重なった事による基礎地盤からのパイピングが主たる原因と考えられました。
 平成24年7月の九州の豪雨災害で様々な被災形態が見られた状況を踏まえ、要因別に3つの被災形態(1)浸透による堤防決壊、2)河岸侵食・護岸欠損、3)流下能力不足による越水被害)に対する安全性について、全国の堤防を対象に緊急的な総点検を実施し、結果を24年9月に取りまとめ、公表しました。
 今回抽出した全国の河川における要対策箇所については、特に緊要性の高い区間から優先して、ドレーン工、遮水工等の浸透対策、根固め工、護岸工等の侵食対策、築堤・河道掘削等の流下能力対策といった各種対策に着手したところであり、今後も引き続き対策を推進していきます。

 
矢部川水系矢部川の堤防決壊状況
矢部川水系矢部川の堤防決壊状況

 
堤防の決壊メカニズムと緊急対策イメージ
堤防の決壊メカニズムと緊急対策イメージ


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