第2節 自然災害対策

2 災害に強い交通体系の確保

(1)多重性・代替性の確保等

 鉄道、港湾等の施設の耐災化や救援・復旧活動に資する緊急輸送体制の確立を図ることにより、多重性、代替性等を確保し、災害発生時の全国的な輸送活動への影響の極小化及び利用者の安全確保に努めている。
 道路ネットワークは、つながって初めて機能するものであり、災害時の代替路を確保しなければ、今後想定される大規模災害には対応できないということが、東日本大震災や豪雨災害から得た教訓であると認識された。
 災害に強い広域ネットワークを構築するため、今後想定される地震、津波発生時や豪雨・豪雪時に現道が寸断することにより広域交通に影響を及ぼすおそれがある区間について、代替路の確保のための主要都市間等を連絡する高規格幹線道路等の整備を推進している。

(2)道路防災対策

 豪雨・地震・津波・豪雪等の災害に対して、安全で信頼性の高い道路ネットワークを確保するため、防災対策(斜面・盛土対策等)、震災対策(耐震補強等)及び雪寒対策(防雪施設の整備等)を進めるとともに、交通施設への防災機能の付加(道の駅及びSA・PAの防災拠点化、緊急連絡路・避難階段の整備)を進めている。
 また、特に大規模災害時には、管理者ごとに情報を提供するなど、利用者にとって分かりにくい形で情報提供がなされている面があることから、災害時においても道路利用者の利便性を図り、安全で円滑な道路交通を確保するため、道路管理者等の情報を集約し、インターネット等を活用して道路の災害情報を利用者にとって分かりやすい形で情報提供する仕組みを構築した。
 さらに、東日本大震災による津波により壊滅的な被害を受けた地域等において、復興計画に位置付けられた市街地整備に伴う道路整備や、高速道路ICへのアクセス道路等の整備を推進している。また、津波被害を軽減するための対策の一つとして、標識柱等へ海抜表示シートを設置し、道路利用者に海抜情報の提供を推進している。

(3)各交通機関等における防災対策

 鉄道については、旅客会社等が行う落石・雪崩対策や海岸保全等の防災事業、(独)鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行う青函トンネルの機能保全のための変電所施設、列車制御施設等の改修事業に対し、その費用の一部を助成し、災害に強い、安全かつ安定的な鉄道輸送の確保を図っている。
 港湾については、災害発生時における迅速かつ正確な被害状況の把握や緊急輸送に役立てるため、国と港湾管理者により収集した被害情報の発信・共有体制の強化を図っている。
 空港については、地震等被災時に緊急輸送の拠点となるとともに、航空ネットワークの維持、背後圏経済活動の継続性確保において重要と考えられる航空輸送上重要な空港等について、必要な管制機能を確保するための庁舎等及び最低限必要となる基本施設等の耐震化等を実施している。また、南海トラフ巨大地震等による大規模な津波災害に備え、津波被災の可能性のある主な空港については、津波発生時の空港利用者等の避難方法等を定めた津波避難計画を策定した。引き続き、津波被災後に空港機能を早期に回復させるために早期復旧対策の検討を進めていく。

(4)災害に強い物流システムの構築

 東日本大震災では、円滑な支援物資物流を確保する観点から、民間物流事業者のノウハウや施設の活用の重要性が認識されたところである。この教訓を踏まえて、国、地方公共団体、物流事業者等で連携して災害に強い物流システムの構築に向けた検討を実施し、発災時に物資拠点として活用可能な民間物流施設のリストアップ(全国で934箇所)や当該施設への非常用電源設備、非常用通信設備の導入支援等、官民の連携・協力体制の構築を全国的に推進しているところである。


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