第2節 循環型社会の形成促進

コラム 都市における植物廃材のエネルギー利用

 平成23年3月11日に発生した東日本大震災では、東北・関東の広い範囲で停電が発生し、停電した世帯数は、東京電力・東北電力管内で約840万世帯に上りました。これらは、発災6日後までに80%以上が復旧しましたが、発災後数日間の停電により、避難生活や救援活動等に影響が生じました。
 被災地では、津波被害等により住居を失った被災者の避難生活の場や救援活動の場として、都市公園の体育館や広場等が活用されるケースが多く見られ、福島県では発災後1箇月の間に約200公園が避難地や仮設住宅用地等として活用されました。このような状況を踏まえると、都市公園においても災害時に一定のエネルギー供給が可能な体制を構築しておくことで、円滑な避難や救援・復旧活動を支えることが必要です。
 このことから、都市内の都市公園等から発生する植物廃材のエネルギー利用に着目し、防災公園等にエネルギー供給することで、災害に強くかつ環境問題や人口減少問題等にも対応した低炭素・循環型都市の実現を目指していきます。都市内の都市公園等から発生する剪定枝等の植物廃材は、我が国全体で約200万トン/年が発生しているとも推測されています。これらは一部が有効活用されているものの(大阪府の公園剪定枝利用率:29%、浜松市の緑化木剪定枝利用率:4%、松本市の公園・街路樹の剪定枝利用率:14%等)多くは焼却処分されているのが現状です。また、有効活用されている場合の用途もチップ化や堆肥化がほとんどですが、すべてを有効活用できていないところもあるようです。
 都市で発生する植物廃材は、山間部の間伐材等に比較すると、エネルギー消費地である都市やその周辺に存在することから、搬出や搬送に係るエネルギーやコストが少なくてすむという利点がある一方で、発生量の季節変動が大きく、まとまった量を常時確保することが困難である等の課題があることから、発電等のエネルギー利用がなかなか図られていないのが現状です。
 このため国土交通省では、植物廃材のエネルギー利用を推進していくため、24年度からモデル都市(松本市、北九州市)において、都市由来の植物廃材を活用した発電システムに係る実証実験(植物廃材の収集、発電試験等)を通じ、発生量、収集・運搬方法やコスト等の把握、事業採算性の算定等の検討を行っています。25年度には、引き続き実証実験を行い、その結果をもとに当該システムの導入に関するガイドラインの作成等を行う予定です。

 
モデル都市における実証実験(植物廃材の収集、チップ化)
モデル都市における実証実験(植物廃材の収集、チップ化)


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