第3節 多国間・二国間交渉・連携等を通じた取組み

3 各分野における多国間・二国間の取組み

(1)建設分野

 平成24年5月にシンガポールで鋼構造による高層建築物普及セミナーを開催し、東南アジアでの鋼構造建築の普及・啓発を図るとともに、建設分野における課題の解決や協力関係の構築を目的として、同年7月に日台公共建設交流会議を、同年10月に日インド建設会議を、25年2月に日モンゴル建設投資セミナーを開催した。また、同年3月には、建設人材の育成方策等の協力関係の構築等を目的として、日ベトナム建設会議を開催した。

(2)水管理・国土保全分野

 ベトナムでは、平成24年6月に農業農村開発省と水資源施設管理の協力に関する覚書を締結し、11月に現地でセミナーを開催するなど、水資源分野での協力を強化している。建設省との間では、22年に締結した下水道分野に関する協力覚書に基づき、技術協力を行っている。
 インドネシアでは、25年1月に公共事業省と共催したワークショップや、二国間の下水再生水水質基準検討会議、24年2月に公共事業省と締結した覚書に基づく砂防ワークショップ等を通じて協力を行っている。
 南アフリカとの間では、水省との共同決議に基づき、同年11月に東京で第2回日・南アフリカ水資源管理ワークショップを開催し、協力関係を強化している。
 ブルガリアでは、同年10月にセミナーを開催し、管路アセットマネジメントの重要性を説明し、我が国企業がブルガリアにて管路更生の工事を受注した。
 4年に1度開催される土砂災害・洪水分野などの防災に関する国際学会「インタープリベント」及び砂防行政官会議に参加し、スイス、オーストリア等5箇国と砂防技術の交流を図った。
 韓国、中国、フランス、イタリア及び米国との間では、河川・水資源管理等に係る二国間会合を開催し、情報交換、技術協力等を推進している。

(3)道路分野

 インド、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ラオスでセミナーを開催し、我が国の道路技術を紹介するなど、積極的な取組みを行った。
 さらに、計画段階から建設、運営・維持管理の幅広い視点にて、オールジャパンの官民共同体制で「日本高速道路インターナショナル株式会社」等とともに、海外展開を推進している。
 また、世界道路協会(WRA)では、我が国が実行委員を務めるとともに、15の技術委員会に参画するなど、道路及び道路交通に関する技術交流・情報共有を推進している。平成24年10月、同協会が主催する総会・実行委員会において、日本の交通安全の取組みを世界各国に発信した。
 このほか、ITS(高度道路交通システム)分野では、日米間、日欧間の協力覚書に基づく日米欧の三極での協調体制を確立しており、今後の研究開発、普及促進に向け定期的な会合を開催している。また、同年10月にウィーンで開催されたITS世界会議に参加し、各国との連携・協力の強化を図るとともに、東京での次回会議(25年10月)開催に向け、世界の関係者へ日本におけるITSの取組みをアピールした。

(4)住宅・建築分野

 韓国、中国、フランス、カナダ及びドイツとの間で定期的に二国間会合を開催し、住宅政策、建築基準、建築技術等に関する情報交換等を行っている。

(5)鉄道分野

 米国、ブラジル、ベトナム、インド、タイ等の高速鉄道計画について、省エネルギー性に優れ、安全・安定・高頻度・大量輸出を強みとする我が国の新幹線技術の導入に向けた取組みを進めている。また、都市鉄道についても技術協力を実施し、海外展開を積極的に推進している。
 さらに、平成24年4月より、海外展開体制の整備を図るべく、鉄道事業者を中心としたオールジャパン体制による海外鉄道コンサルティング会社(「日本コンサルタンツ株式会社」)が営業を開始し、相手国における案件形成支援を実施している。

(6)海事分野

 平成24年5月に、日ノルウェー海事分野の協力覚書を踏まえたワークショップを開催し、省エネ船舶の普及促進等について、国際的な議論の主導のため連携することで合意した。
 また、インドネシア、ミャンマー及びタイ等に対して、内航海運の振興や造船分野での協力等、海事分野における国際協力を進めた。
 このほか、主要海運国との間で定期的に二国間会合を開催しており、24年度は英国及び韓国との間で会合を開催し、海事分野に係る重要課題に関する情報交換等を行った。

(7)港湾分野

 ミャンマー等を対象に、港湾背後の開発と一体になった港湾物流プロジェクトの案件形成調査を実施するなど、今後の港湾開発が見込まれる国々における日本企業の進出を積極的に支援している。
 平成24年10月に、日中韓三箇国により、第13回北東アジア港湾局長会議を開催し、共通する港湾政策について話し合った。また、日本人が副会長を務める国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)を通じて、我が国の技術基準の海外展開の推進や情報交換を多国間の場で行っている。

(8)航空分野

 我が国と空域を接するアジア太平洋地域を中心に、航空安全、航空管制、インフラ・システム輸出に向けた取組み等を実施している。平成24年には、二国間の取組みとして、中国と航空政策対話を実施した。また、同年10月には第49回アジア太平洋航空局長会議において、航空安全の課題と対策の検討に加え、航空管制の現状と将来計画について意見交換を行った。

(9)物流分野

 平成24年7月に開催された第4回日中韓物流大臣会合における合意に基づき、シャーシの相互通行の推進、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の機能強化、パレットの品質や荷役機器の寸法等の標準化等について、日中韓3国間の協力を推進している。

(10)測量・地図分野

 UNCE-GGIM注1に積極的に参画し、地球規模の測地基準系の構築に貢献するとともに、地球地図プロジェクト注2推進のため、地球地図第2版整備に向けた途上国への技術支援、リオ+20注3等の場を通じた普及活動を実施している。
 さらに、UN-GGIM-AP注4の事務局長を務めるほか、関係各国と協働で地殻活動監視を推進している。このほか、第10回UNCSGN注5及び第18回IHC注6において政府代表団として地名表記に関する議論等に参加している。第6回UNCSGN以降、韓国等は、「日本海という名称を東海(East Sea)に改称するか併記すべき」との主張を繰り返している。国土交通省は、外務省等関係省庁と連携し、国際社会に呼称「日本海」への正しい理解と支持を求めている。

(11)気象・地震津波分野

 世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の相互交換に加え、我が国の技術を活かした台風や気候等の情報を各国に提供し、世界の気象業務の実施・推進に協力している。また、国際連合教育科学文化機関・政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供し、沿岸諸国の津波防災に貢献している。

(12)研究分野

 我が国の優れたインフラ関連技術等のアジア諸国への普及を見据えて、ベトナム、インドネシア、インド等との研究連携ロードマップに基づき、現地適応性を高めた環境舗装等の建設技術の基準類の共同開発等を行っており、共同ワークショップの開催、現地JICA専門家との連携、中堅・若手研究者の交流を推進している。

(13)海上保安分野

 北太平洋海上保安フォーラム(日、加、中、韓、露、米6箇国)及びアジア海上保安機関長官級会合(アジア17箇国・1地域)並びにロシア、韓国、インドとの二国間長官級会合・連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進しているほか、国際海事機関(IMO)、国際水路機関(IHO)、コスパス・サーサット理事会、国際航路標識協会(IALA)等、国際機関を通じた国際貢献にも努めている。


注1 地球規模の地理空間情報管理に関する国連専門家委員会
注2 地球環境問題の分析等に必要な基盤的な地理情報データベース(地球地図データ)を世界各国の地理空間情報当局の自主的協力の下で整備するプロジェクト
注3 1992年のリオ地球サミットから20周年にあたる2012年6月にブラジルのリオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発会議」の略称
注4 国連地球規模の地理空間情報管理に関するアジア太平洋地域委員会
注5 国際連合地名標準化会議
注6 国際水路会議


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