第3節 民間事業者の意識調査結果と分析

■1 総論:民間事業者の多様な意識

 民間事業者と一口に言っても、業種、設備機能、事業規模、立地地域等の違いによって、事業活動のプロセス、事業の維持・成長のための戦略、事業活動におけるインフラとの関わり等、民間事業者のインフラへのニーズや意識は様々のはずである。
 ストック効果の高い事業への投資を重点化するとともに、民需を誘発していくには民間事業者との連携の強化も重要である。本節で分析・紹介する民間事業者の多様なニーズをすべて考慮・反映していくことは現実的ではないが、需要者側に多様なニーズがあることを供給者側が理解し、ストック効果最大化を念頭にその優先度や時間軸の調整を図ること等が重要である。

(1)業種・施設ごとのインフラ重要度
 業種や施設ごとでどのようなインフラニーズの違いがあるかを調査した。ここでは特徴的な結果となったものについて簡単に紹介する(図表2-3-1)。
 
図表2-3-1 業種ごとのインフラ重要度
図表2-3-1 業種ごとのインフラ重要度
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(道路)
 全産業において道路の重要度が最も高い結果となった。特に、広い区域で商品や資材を動かすと想定される業種(鉱業・建設業、製造業系、卸売・小売業、運輸・通信業)における重要度が高い。

(地域公共交通)
 第3次産業であるサービス業系(飲食・宿泊業、医療・福祉)は、地域公共交通に対するニーズが高かった。

(堤防、ダム)
 農林水産業は、他産業に比べ堤防、ダムについて2倍近い重要度を示した。

(港湾)
 運輸・通信業及び農林水産業で高い重要度を示した。なお、運輸・通信業は港湾と道路について最も高い重要度を示している産業である。

(空港)
 加工組立型製造業は、他産業と比べて高い重要度を示す結果となった。製品の質量単価や汎用性の低さも影響しているのかもしれない。
 また施設ごと(事務所、工場、研究開発施設、販売施設、倉庫)の差異としては、あまり大きな特徴はなかったものの、事務所及び販売施設では地域公共交通に対するニーズが高い傾向が認められる(図表2-3-2)。
 
図表2-3-2 施設ごとのインフラ重要度
図表2-3-2 施設ごとのインフラ重要度
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(2)その他の特徴的な意識
 国土交通省事業者アンケートとは別途実施した事業者への個別ヒアリング(2015年実施)では、事業計画に沿う場合のインフラへの投資意欲(整備費用の一部負担による早期整備促進)や災害時における自社設備提供による地域防災貢献の意思(水害時等に屋上施設を避難所として提供)等もあり、多様な意識を垣間みることができた。

(3)満足度調査
 各インフラへの満足度について調査した。評価が事業者の主観や存在する地域及び業種特性等によって変わるものであるが、あくまで参考として、いくつかの特徴的な結果について抜粋して紹介したい。

(高速道路)
 全業種合計で唯一、「満足」および「やや満足」の回答の合計が50%を超える結果となり、一定の満足度が確認された(図表2-3-3)。
 
図表2-3-3 高速道路の満足度
図表2-3-3 高速道路の満足度
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 業種別にみても、ほとんどの業種は、「満足」および「やや満足」の合計が50%を超える結果となり、特に製造業の満足度は70%を超える結果となった。ただし、農林水産業及び飲食・宿泊業のみ50%を下回る結果となった。
 モニターアンケート注50においても比較的高い満足度が確認された(図表2-3-4)。
 
図表2-3-4 高速道路の満足度(モニターアンケート)
図表2-3-4 高速道路の満足度(モニターアンケート)
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(高速鉄道)
 「満足」および「やや満足」の回答の合計が40%弱となり、高速道路に次いで一定の満足度が確認された。業種ごとに見てみると、比較的高い業種として鉱業・建設業、製造業、卸小売業があり、低い業種として農林水産業、飲食・宿泊業、運輸・通信業が確認された(図表2-3-5)。
 
図表2-3-5 高速鉄道の満足度
図表2-3-5 高速鉄道の満足度
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 一概には言えないが、活動地域の大きさが影響している可能性もある。企業活動の中で使用頻度が比較的多いと思われる業種で満足度が高い印象があり、使用頻度と満足度に相関があるのかもしれない。
 一方、モニターアンケートでは満足度が約70%と高く、事業者としての満足度とプライベート使用での満足度に関し、大きく傾向が異なる結果となった。また、モニターアンケートの結果では大きな地域差があり、調査時点で整備新幹線のない北海道、四国、九州の一部では低い結果となっている(図表2-3-6)。2016年3月に開業した北海道新幹線により北海道での満足度が上がることを期待したい。
 
図表2-3-6 高速鉄道の満足度(モニターアンケート)
図表2-3-6 高速鉄道の満足度(モニターアンケート)
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(地域公共交通)
 他のインフラと比べ、最も不満が多い結果であった(図表2-3-7)。
 
図表2-3-7 地域公共交通の満足度
図表2-3-7 地域公共交通の満足度
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 これは、他のインフラよりも日常生活に密接に関連し、利便性を感じやすく注文度が高いことも要因の一つと推測される。一般道路(地域公共交通に次いで不満が多い結果)も身近ではあるものの、運行などのサービスが伴わないことが地域公共交通との差になった可能性もある。
 モニターアンケートでも同様に不満が多い結果となった(図表2-3-8)。
 
図表2-3-8 地域公共交通の満足度(モニターアンケート)
図表2-3-8 地域公共交通の満足度(モニターアンケート)
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注50 2016年2月8日(月)〜2016年2月22日(月)の期間に、全国在住の20歳以上の男女1,098名に対して「インフラ及びインフラ整備に関する意識調査」アンケートを実施。回答数は914件(男性:484名、女性430名)。


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