第2節 地域活性化を支える施策の推進

■3 地域特性を活かしたまちづくり・基盤整備

(1)民間投資誘発効果の高い都市計画道路の緊急整備
 市街地における都市計画道路の整備は、沿道の建替え等を誘発することで、都市再生に大きな役割を果たしている。このため、残りわずかな用地買収が事業進捗の隘路となっている路線について、地方公共団体(事業主体)が一定期間内の完了を公表する取組み(完了期間宣言路線(平成27年4月現在71事業主体139路線)を通じ、事業効果の早期発現に努めている。

(2)交通結節点の整備
 鉄道駅やバスターミナル等の交通結節点には、様々な交通施設が集中し、大勢の人が集まるため、都市再生の核として高い利便性と可能性を有する。
 このため、新宿駅南口地区等の交通結節点及びその周辺において、交通結節点改善事業や都市・地域交通戦略推進事業、鉄道駅総合改善事業等を活用し、交通機関相互の乗換え利便性の向上や鉄道等により分断された市街地の一体化、駅機能の改善等を実施し、都市交通の円滑化や交通拠点としての機能強化等を図った。
 また、医職住の近接による地域の集約化等の観点から、既存の鉄道駅に子育て支援施設や医療施設を併設するなど、安心して暮らせる地域の総合的な拠点としての駅機能の高度化を推進した。
 
図表II-4-2-2 交通結節点改善事業の例(新宿駅南口地区)
図表II-4-2-2 交通結節点改善事業の例(新宿駅南口地区)

(3)企業立地を呼び込む広域的な基盤整備等
 各地域が国際競争力の高い成長型産業を呼び込み集積させることは、東アジアにおける競争・連携及び地域活性化の観点から大きな効果がある。このため、空港、港湾、鉄道や広域的な高速道路ネットワーク等、地域の特色ある取組みのために真に必要なインフラへ集中投資を行い、地域の雇用拡大・経済の活性化を支える施策を推進している。

1)空港整備
 国内外の各地を結ぶ航空ネットワークは、地域における観光振興や企業の経済活動を支え、地域活性化に大きな効果がある。アジア等の世界経済の成長を我が国に取り込み、経済成長の呼び水となる役割が航空に期待される中、我が国全体の国際競争力や空港後背地域の地域競争力強化のため、空港の処理能力向上や空港ターミナル地域再編による利便性向上等を図っている。

2)港湾整備
 四方を海に囲まれている我が国においては、海外との貿易の大部分を海上輸送が担っており、また国内においても、地域間の物流・交流等に海上輸送が重要な役割を担っている。そうした中で、港湾インフラは海外との貿易の玄関口であるとともに、企業活動の場として日本の産業を支えている。物流効率化等による我が国の産業の国際競争力の強化、雇用と所得の維持・創出を図るため、地域の基幹産業を支える港湾において、国際物流ターミナルの整備等を行っている。

3)鉄道整備
 全国に張り巡らされた幹線鉄道網は、旅客・貨物輸送の大動脈としてブロック間・地域間の交流を促進するとともに、産業立地を促し、地域経済を活性化させることで、地域のくらしに活力を与えている。特に、鉄道貨物輸送は、地域経済を支える産業物資等の輸送に大きな役割を果たしている。

4)道路整備
 物流効率化、輸送利便性等の観点から、新規に立地する工場の大半が高速道路のICから10km以内に立地しており、迅速かつ円滑な物流の実現等により国際競争力を強化するとともに、地域の自立と産業の振興を図るため、高規格幹線道路等の幹線道路ネットワークの形成を進めている。

(4)交通インフラの整備促進
 平成27年度税制改正において、「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法(大深度地下法)」に基づく地下使用の認可を受けた事業に係る区分地上権等設定対価が譲渡所得に該当するかどうかの判定方法について、土地価額の4分の1に代えて、使用収益の制限される垂直方向の範囲に応じて設定する割合とする措置を講じた。この措置により、「大深度地下法」の認可事業と一体的に施行される事業に係る一定の区分地上権等設定対価については譲渡所得として課税されることになり、収用交換等の場合の5,000万円特別控除等の適用が可能となる。

(5)地域に密着した各種事業・制度の推進
1)道の駅
 「道の駅」は道路の沿線にあり、駐車場、トイレ等の「休憩機能」、道路情報や地域情報の「情報発信機能」、地域と道路利用者や地域間の交流を促進する「地域の連携機能」の3つを併せ持つ施設で、平成28年3月現在1,079箇所が登録されている。
 近年、地元の名物や観光資源を活かして、多くの人々を迎え、地域の雇用創出や経済の活性化、住民サービスの向上にも貢献するなど、全国各地で「道の駅」を地域活性化の拠点とする取組みが進展している。これらの取組みを関係機関と連携して重点的に応援するための重点「道の駅」制度を26年度に創設した。そこで選定した全国モデル「道の駅」6箇所、重点「道の駅」35箇所に加え、27年度には重点「道の駅」を38箇所選定した。
 
図表II-4-2-3 平成27年度 重点「道の駅」選定箇所
図表II-4-2-3 平成27年度 重点「道の駅」選定箇所

2)「かわまちづくり」支援制度
 河口から水源地まで様々な姿を見せる河川とそれにつながるまちを活性化するため、地域の景観、歴史、文化及び観光基盤等の「資源」や地域の創意に富んだ「知恵」を活かし、市町村、民間事業者及び地元住民と河川管理者の連携の下、「かわまちづくり」計画を作成し、登録を行うことにより、河川空間とまち空間が融合した良好な空間形成を推進している。

3)地域住民等の参加による地域特性に応じた河川管理
 河川環境について専門的知識を有し、豊かな川づくりに熱意を持った人を河川環境保全モニターとして委嘱し、河川環境の保全・創出、秩序ある利用のための業務や普及啓発活動をきめ細かく行っている。また、河川に接する機会が多く、河川愛護に関心を有する人を河川愛護モニターとして委嘱し、河川へのごみの不法投棄や河川施設の異常の発見等、河川管理に関する情報の収集や河川愛護思想の普及啓発に努めている。
 さらに、河川環境の整備や保全等の河川管理に資する活動を自発的に行っている民間団体等を河川協力団体として指定し、河川管理者と連携して活動する団体として法律上の位置付けを行い、団体としての自発的活動を促進し、地域の実情に応じた多岐にわたる河川管理の充実を推進している。

4)海岸における地域の特色を活かした取組みへの支援
 海岸利用を活性化し、観光資源としての魅力を向上させることを目的に、海岸利用活性化計画の策定及び計画に基づいた海岸保全施設の整備を行う海岸環境整備事業の支援を行っている。
 海岸協力団体の指定制度の創設に伴い、海岸保全に資する清掃、植栽、希少な動植物の保護、防災・環境教育等の様々な活動を自発的に行い、海岸管理を適正かつ確実に行うことができると認められる法人・団体を海岸協力団体に指定することにより、地域との連携強化を図り、地域の実情に応じた海岸管理の充実を推進していく。

5)港湾を核とした地域振興
 地域住民の交流や観光の振興を通じた地域の活性化に資する「みなと」を核としたまちづくりを促進するため、住民参加による地域振興の取組みが継続的に行われる施設を、地方整備局長等が「みなとオアシス」として認定・登録している(平成28年3月31日現在、88港)。
 全国の「みなとオアシス」では、地域の特性と創意工夫を活かした住民参加型による様々なイベントが行われ、大勢の地域住民や観光客で賑わっている。
 また、全国各地の「みなとオアシス」の運営主体の交流等を図る「みなとオアシス全国協議会」において、食を通じたイベント「みなとオアシスSea級グルメ全国大会」が開催され、大勢の人々が参加している。
 地域の活性化を図るため、増加する外航クルーズ客へのサービス提供の場等として、更なる活用が期待されている。
 
図表II-4-2-4 みなとオアシス全国マップ
図表II-4-2-4 みなとオアシス全国マップ

6)マリンレジャーの拠点づくり
 既存の港湾施設やマリーナ、フィッシャリーナ等を活用したマリンレジャー拠点「海の駅(平成27年12月末現在154駅)」の設置を推進するとともに、各海の駅で行われているレンタルボートを利用したクルージングや海産物の販売、漁業体験、イベントの実施等、地域の特性を活かした様々な取組みに対する支援等を行っている。
 
図表II-4-2-5 「海の駅」イメージ図
図表II-4-2-5 「海の駅」イメージ図

 
図表II-4-2-6 「海の駅」登録数の推移
図表II-4-2-6 「海の駅」登録数の推移
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(6)地籍整備の積極的推進
 地籍調査は市町村等が個々の土地の境界等を調査するものであり、その成果は土地取引、民間開発、インフラ整備の円滑化、事前防災や被災後の復旧・復興の迅速化等に貢献する。地籍整備を一層促進するため、地籍調査への財政支援のほか、都市部における官民の境界情報の整備や山村部における境界情報の保全を国直轄で行うとともに、地籍調査以外の測量成果の活用を推進している。
 また、東日本大震災の被災地では、復旧・復興事業と連携した地籍調査を支援するとともに、南海トラフ巨大地震の津波浸水想定地域において国直轄で官民の境界情報を整備するなど、大規模災害の被災想定地域における地籍整備を推進し、安全・安心な地域づくりに貢献している。

(7)大深度地下の利用
 大深度地下の利用については、審査の円滑化に関する技術的検討のほか、大深度地下使用協議会を活用し、大深度地下空間の情報交換を図っている。


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