第1節 交通ネットワークの整備

第6章 競争力のある経済社会の構築

第1節 交通ネットワークの整備

■1 幹線道路ネットワークの整備

(1)幹線道路ネットワークの整備
 幹線道路の整備は、昭和29年に策定された第1次道路整備五箇年計画以来、現在に至るまで着実に進められてきた。例えば、高速道路等の幹線道路ネットワークの整備は、高速道路のインターチェンジ周辺での工場の立地を促すなど、地域経済の活性化に大きく寄与するとともに、地方部における広域的な医療サービスの享受、災害等で幹線道路が途絶した場合の広域的な迂回ルートの確保等が可能となるなど、国民生活の質や安全の向上にも大きく貢献してきた。
 例えば、平成29年2月26日に圏央道の境古河IC〜つくば中央ICが開通し、圏央道全体約300kmのうち約9割がつながった。これにより、企業立地や観光周遊の促進などの効果が期待される。
 一方で、全国においては未だ高速道路等の幹線道路ネットワークが繋がっていない地域があることから、計画的に整備を推進していく。
 
図表II-6-1-1 高規格幹線道路等の整備状況
図表II-6-1-1 高規格幹線道路等の整備状況

(2)道路を賢く使う取組みの推進
 生産性の向上による経済成長の実現や交通安全確保の観点から、必要なネットワークの整備と合わせ、今ある道路の運用改善や小規模な改良等により、道路ネットワーク全体の機能を最大限に発揮する賢く使う取組みを推進している。特に平成27年8月より本格的な導入が開始されたETC2.0がその取組みを支えている。

1)賢く使う取組みを支えるETC2.0
 ETC2.0とは、全国の高速道路上に約1,700箇所設置された路側機と走行車両が双方向で情報通信を行うことにより、これまでのETCと比べて、
など、格段と進化した機能を有し、ITS推進に大きく寄与するシステムである。

2)賢い料金
 首都圏の高速道路料金については、都心の渋滞緩和を目指した新たな料金を平成28年4月より導入し、都心通過から外側の環状道路へ交通が転換するなどの効果を引き続き検証する。近畿圏の新たな高速道路料金については、28年12月16日に公表した「近畿圏の新たな高速道路料金に関する具体方針(案)」等を踏まえ、29年6月から導入する。
 
図表II-6-1-2 首都圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成28年4月より導入)
図表II-6-1-2 首都圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成28年4月より導入)

 全国の高速道路にはガソリンスタンド(GS)が100km以上ない区間が77箇所ある。
 特に150km超のGS空白区間では、ガス欠発生率が高いことから、29年度までに150km超のGS空白区間をゼロにすることとしており、GS空白区間の解消に積極的に取り組んでいく。
 また、ETC2.0搭載車を対象に高速道路外の休憩施設等への一時退出を可能とする実験を実施する。これにより、休憩施設やガソリンスタンドの空白区間を解消し、良好な運転環境を実現する。
 
図表II-6-1-3 近畿圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成29年6月より導入)
図表II-6-1-3 近畿圏の高速道路を賢く使うための料金体系(平成29年6月より導入)

3)賢い料金所
 ETCが基本のストレスのない「賢い料金所」の導入に向け、圏央道の入口料金所等の料金所にてETCバーの開放運用実験を実施するとともに、首都高速入口におけるETCレーンを主流化する取組みについて、実施している。
 
図表II-6-1-4 ETC2.0が基本のストレスのない「賢い料金所」
図表II-6-1-4 ETC2.0が基本のストレスのない「賢い料金所」

4)賢い投資
 今あるネットワークの効果を、最小コストで最大限発揮させる取組みとして、上り坂やトンネルなどの構造上の要因で、速度の低下や交通の集中が発生する箇所を、ETC2.0等により収集したきめ細かい旅行速度データや加減速データ等のビッグデータにより特定し、効果的に対策するピンポイント渋滞対策を実施している。これまで、東名高速道路の海老名ジャンクション等3箇所で、既存の道路幅員の中で、付加車線等を設置する運用を開始している。現在、東名高速道路の大和トンネル付近等14箇所で、ピンポイント渋滞対策を実施している。

5)賢い機能強化
 暫定2車線の高速道路は、対面交通の安全性や走行性、大規模災害時の対応などの課題がある。そこで、運転者の安心や快適性、走行性を高める観点から、高速道路の暫定2車線区間を4車線化する際、第三者委員会での議論など、透明性の確保を前提に国土開発幹線自動車道建設会議の議を経ずに、機動的に対応することが可能となる「高速自動車国道法施行令の一部を改正する政令」を平成27年11月18日に施行した。また、速度低下に対応した付加車線の機動的な設置について全国4路線で検証を行うとともに、正面衝突事故防止対策としてワイヤロープの設置検証を全国約100kmで実施する。

6)その他の取組み
 地域との連携促進のため、高速道路と施設との直結等によるアクセス機能の強化を進めている。スマートIC等を柔軟に追加設置することにより、高速道路から物流拠点や観光拠点等へのアクセス向上や、「コンパクト+ネットワーク」の考え方による機能の集約化・高度化、既存のIC周辺の渋滞緩和を図る。特に、高速道路の近傍に位置する大規模な物流拠点や工業団地、商業施設等については、高速道路の利用促進や利便性の向上による地域活性化の観点から、適切な負担の下、スマートIC等を活用した高速道路と施設の直結を含めた新たなルールを整理している。スマートICについては、国として必要性が確認できる箇所等について、「準備段階調査」により、計画的かつ効率的なスマートICの準備・検討を実施している。
 
図表II-6-1-5 スマートIC整備効果の例
図表II-6-1-5 スマートIC整備効果の例

 全国の渋滞箇所において効果的な対策を推進するため、都道府県単位等で道路管理者、警察等から構成される渋滞対策協議会を設置し、必要な対策を検討・実施している。今後は、渋滞対策協議会とトラックやバス等の利用者団体が連携を強化し、利用者目線で必要な対策箇所を特定し、必要な対策を促進していく。
 道路周辺の土地利用に伴う渋滞の抑制を図るため、商業施設等の開発者に対する事前の交通アセスメントや、立地後の追加対策を要請するための新たな仕組みを検討している。


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