第2節 技術の進歩

コラム コンクリート技術の発展

 コンクリートは、古くはローマ時代のパンテオンの建築材料として使用され、現在においても社会資本を構成する重要な材料です。一般に、コンクリートは、水、セメント、砂利(砂)から構成されており、鉄などよりも安くて、様々な形に加工でき、耐久性が高い(長持ちする)ことなどから、建築材料として幅広い分野で使用されています。
 我が国のコンクリートの歴史は、1873年に東京都江東区深川において、官営のセメント工場が設立された事から始まりました。1900年頃から、曲げる力に弱いコンクリートの欠点を補うため、コンクリートに鉄筋を入れるようになり、建物の柱に使用されるなど、その用途を広げてきました。1910年頃に建てられた長崎県長崎市の端島(軍艦島)にある鉄筋コンクリート住宅は有名であり、1923年に建てられた北海道函館市にある電柱は、まだ現役で利用されています。一方で、コンクリートに鉄筋が入ることによって、内部に浸透した二酸化炭素や塩分が鉄筋を腐食し、ひび割れといった劣化の問題が生じ、その対策として、表面の塗装、海砂の使用制限などがなされていました。
 1950年頃になると、「混和剤」と呼ばれる薬品が開発され、より強度の高いコンクリートを作ることができるようになった結果、例えば、それまでの5階建ての集合住宅から50階以上の超高層住宅への利用が可能となりました。
 2000年頃から、鋼等の短い繊維を入れたコンクリートが登場し、鉄筋を用いなくても、コンクリートの欠点を補うことができるようになりました。この技術の一つである「UFC(超高強度繊維補強コンクリート)」は、通常のコンクリートの7.5倍以上の強度を有するようになり、既に実用化されています。UFCそのものの値段は通常のコンクリートより高いものの、部材の厚さを薄くすることや耐久性が高いことなどより、トータルコストを下げる事ができます。この技術は、新時代の「ものづくり」にとって、特に優秀と認められ、「ものづくり日本大賞」(第7回)において、内閣総理大臣より表彰されています(図表I-1-2-22)。
 
図表I-1-2-22 第7回ものづくり日本大賞表彰式
図表I-1-2-22 第7回ものづくり日本大賞表彰式

 現在、特にヨーロッパでは、駅舎をはじめとして、今までの鉄筋コンクリート建築ではできなかった、デザイン性の富んだ構造物が造られはじめており、また、日本においてもそのような橋や建物が見られるようになりつつあります(図表I-1-2-23)。将来、我が国においても、さらにこの技術が広がっていき、おしゃれな「鉄筋の無い」コンクリート橋などがもっと身近に見られるようになるかもしれません。美しいインフラ整備やまちづくりへの貢献が期待されます。
 
図表I-1-2-23 沖縄IT津梁パーク・中核機能支援施設
図表I-1-2-23 沖縄IT津梁パーク・中核機能支援施設


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