第2節 日本人の感性(美意識)を活かした豊かな「生活空間」の創出

コラム ねぶくろシネマ〜河川敷で映画鑑賞〜

 芸術を鑑賞する場所ではなかった公共空間を、活用する取組みが注目されています。
 「映画の街」と言われる調布市で、地元在住の父親たちが主なメンバーとなっている合同会社パッチワークスが、「ねぶくろシネマ」という野外映画上映イベントを立ち上げ、全国に活動を広げています。
 きっかけは、「小さい子供がいる家族は、周りに気を遣うので映画館に行くことができない」という調布市に住む子育て中の母親たちの声でした。初回の上映は、2015年12月、地方自治体や鉄道会社等の協力も得て、100名ほどの参加により、多摩川の河川敷で行われました。河川敷にスクリーンはないため、映画が映し出されたのは、電車が通る橋脚です(図表I-3-2-33)。
 
図表I-3-2-33
図表I-3-2-33

 ねぶくろシネマでは、参加者は、敷物や椅子に座ったり、寝袋にくるまったりと、くつろぎながら、自由に映画を楽しむことができ、「会場では、子供は声を出したり、立ち上がってもいい」というルールになっています。
 全国の地方自治体や民間企業から、開催の依頼があり、現在までに合計38回の映画上映が行われています。開催場所は河川敷だけでなく、道の駅や廃校跡、野球場、競馬場など様々です。行政や協賛企業、地元の人々との連携により、取組みが広がっています。
 この取組みの狙いの一つは、公共空間が「あの映画をみた場所」として、参加者(特に子どもたち)の思い出に残ることであり、季節や開催場所に適した映画を選ぶなどの工夫もされています。
 このような動きは、公共空間の活用の幅を広げ、人々が愛着を感じられる空間づくりにつながっていくものと期待されます。


注 平成31年3月末現在


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