第I部 まとめ

第I部 まとめ

 令和最初となる本白書第I部においては、「技術の進歩」と「日本人の感性(美意識)の変化」に着目し、平成の時代を振り返るとともに、それらを踏まえた国土交通政策について紹介した。その上で、新しい時代において、技術の更なる進展等がもたらす社会や生活の変化に言及しつつ、求められる国土交通政策の方向性について考察した。
 ここでは、第I部のまとめとして、改めて、平成における変化、新しい時代における社会の変化、国土交通政策の方向性について、簡潔に述べることとする。
 
1 平成における変化
 平成においては、インターネット等のICT、AI等の超スマート社会(Society 5.0)につながる新技術が生まれ、人々の暮らしは大きく変化した。また、日本人の感性(美意識)は、「物質的な豊かさ」よりも「心の豊かさ」を重視し、「自然」「歴史と伝統」など日本人の昔から持つ感性(美意識)を以前よりも大切にするようになってきた。
 このような平成における変化を受けつつ、国土交通政策も展開してきた。ETCの導入をはじめICTなどの新技術を取り込む一方、歴史まちづくりなど日本の歴史や自然を維持・活用し、日本人の感性(美意識)に応える取組みを進めてきた。

2 新しい時代の変化
 新しい時代において、AIをはじめとする技術の進展等により、人々は、生活や労働などの「時間的・場所的な制約」からさらに解放され、多様な生活スタイル・ワークスタイルが選択可能になる。また、新たな「自由時間」も生まれてくることが想定される。
 このような中、人々の意識調査などを踏まえると、価値の高い時間を過ごすためには、「生活空間」に日本人の感性(美意識)をもっと取り込み、豊かにしていくことがますます重要になってくると考えられる。

3 国土交通政策の方向性
 新しい時代に応えるため、国土交通政策は、生活空間について、これまでの取組みを深化させるとともに、新技術と一体となった新たな取組み(サイエンスとアートの融合)を行っていく必要がある。例えば、「住空間」については、リノベーションや新技術により居住者の感性(美意識)がさらに反映される空間等にしていくことが重要である。また、「公共空間」については、子どもに優しいことや多様な使い方ができることにより、さらに愛着が感じられる空間等にしていくことが求められる。さらに、「移動空間」については、日本人の感性(美意識)を反映した移動体を増やすことや自動運転により運転から解放された車内空間を活用することにより、懐かしさや新しさを感じられる空間等にしていくことなどが必要である。
 国土交通政策は、国民ひとりひとりの生活に大きく関わり、その「豊かさ」への貢献が期待されている。未来に向けて、国土交通省は、国民の安全・安心の確保や持続的な経済成長を支える強靭なインフラ整備等を基礎としつつ、AIをはじめとする技術の進歩を積極的に取り入れ、利便性や快適さを高めていく。さらに、「真の豊かさ」につながる、日本人の感性(美意識)を取り入れた、優しく、懐かしく、洗練された新しい空間づくり(「生活空間革命」)にも、しっかりと取り組んでいく。


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む