第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

1 自家用乗用車からの二酸化炭素排出削減に向けた課題

 重要な交通手段である自家用乗用車について見ると、CO2排出量は近年減少傾向にあるものの、運輸部門における排出量の50%近くを占めており、自家用乗用車からのCO2排出量の削減は我が国の排出量削減を図る上で重要な課題である。

(1)自家用乗用車の走行量の動向
(自家用乗用車の走行距離の増加)
 モータリゼーションの進展に伴い、我が国の自家用乗用車の総走行距離は増加してきており、平成2年度から18年度までに約40%増加しているが、近年は横ばい傾向である。
 
図表I-2-1-2 自家用乗用車の走行距離の推移

図表I-2-1-2 自家用乗用車の走行距離の推移
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(自家用乗用車の普及)
 このような総走行距離の動向の背景の一つとして、自家用乗用車の急速な普及があげられる。自家用乗用車の保有台数は平成2年度から18年度の間に60%以上増加している。ただし、増加のペースはおさまりつつあり、1世帯当たりの保有台数で見ると、18年度末に初めて前年度割れとなった。その一方で、1台当たりの走行距離は減少傾向にある。
 
図表I-2-1-3 自家用乗用車保有台数と1台当たり走行距離の推移

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(自動車に対する意識の変化)
 このように近年は自動車の普及速度の鈍化や1台当たり走行距離の減少が見られるが、この背景の一つとして、自動車に対する意識の変化があると考えられる。例えば、余暇の過ごし方としてドライブを楽しむ人は年々減少している。また、自家用乗用車を保有せずに必要に応じて借りる動きもみられる。レンタカー(乗用車)の車両数は平成4年度から16年度までの間に約6割以上増加しており、レンタカー需要の高まりがうかがえる。また、1台の車を複数の人たちで共同利用するカーシェアリングも徐々にではあるが広まりつつある。日本自動車工業会によると、自動車の非保有化は、消費嗜好の変化を背景として生活者が自動車に感じる魅力が弱くなっていること、都市化・個人化を背景に生活における自動車の必要性が弱くなっていること、家計の経済制約の高まりにより買い控えが起きていることなどによるものとされている(注1)
 
図表I-2-1-4 余暇活動参加人口の推移

図表I-2-1-4 余暇活動参加人口の推移
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(2)自家用乗用車単体の燃費の動向
(実走行燃費の改善)
 燃費の改善はCO2排出量の削減につながるが、ガソリン乗用車が実際に走行した際の平均燃費(実走行燃費)を見ると、平成10年度を境に改善に転じている。このような燃費の動向は、車両の重量、燃費性能、走行速度等様々な要因が影響していると考えられる。
 
図表I-2-1-5 ガソリン乗用車平均燃費の推移

図表I-2-1-5 ガソリン乗用車平均燃費の推移
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(自家用乗用車の大型化と軽自動車の普及)
 一般的に排気量が大きいほど燃費は悪くなる。車両の排気量別に乗用車の保有状況を見ると、平成2年度から18年度までに、排気量2,000cc以上の大排気量の車の占める割合が8%から22%へと増加しているが、近年はその増加は止まっている。その一方で、軽自動車の増加も著しく、全体に占める割合は8%(2年度)から27%(18年度)へと増加している。
 
図表I-2-1-6 排気量別乗用車保有割合の推移

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(新車の燃費の改善)
 ガソリン乗用車の燃費については、平成11年に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」に基づくトップランナー方式(注2)により、22年度を目標年度とする基準を設定した。また、自動車の燃費性能に対する一般消費者の関心と理解を深めるため、燃費性能の公表や表示が行われており、燃料基準を達成している自動車には「平成22年度燃費基準+20%達成車」等のステッカーが貼られている。さらに、排出ガス性能や燃費性能に優れた自動車を対象に、自動車税等を軽減する「自動車グリーン税制」を設けている。
 
燃費基準達成車のステッカー

燃費基準達成車のステッカー

 このような措置と自動車メーカーの積極的な取組み等により、17年度時点で、出荷ベースで約8割以上のガソリン自動車が22年度を目標年度とする燃費基準を達成するまでに至った。各年に新車として販売されているガソリン乗用車の燃費平均値(注3)を見ても、7年度から17年度までに約23%改善している。また、ハイブリッド車や圧縮天然ガス(CNG)車のような燃費性能の高い車も普及しており、自動車購入者の燃費性能や環境に対する関心が高まっていることがうかがえる。
 
図表I-2-1-7 低公害車の普及状況

図表I-2-1-7 低公害車の普及状況
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(3)更なる燃費改善に向けた課題
(ディーゼル車の普及と新たな燃費基準)
 このように、自動車の燃費は改善され、低燃費車の普及も進んできたが、さらに燃費の改善、低燃費車の普及を図っていく必要がある。例えば、ディーゼル車はガソリン車と比べてエネルギー効率が2〜3割優れており、CO2排出量の観点から優れた自動車である。しかし、日本においては、大気汚染の原因とのイメージもあり、ディーゼル乗用車の台数は少ない。一方、欧米諸国では技術革新により排ガスのクリーン化が進む中で、ディーゼル乗用車の台数が増加している。今後、日本においてもディーゼル乗用車が普及するためには、ディーゼル乗用車の排ガスのクリーン化を進めるとともに、ディーゼル乗用車に対するイメージの転換が必要である。
 
図表I-2-1-8 新車(乗用車)登録台数に占めるディーゼル車の割合

図表I-2-1-8 新車(乗用車)登録台数に占めるディーゼル車の割合
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 また、新たな燃費基準として平成27年度を目標とする燃費基準を策定した。これにより、燃費性能の優れた乗用車等の普及や燃費改善技術の更なる向上が期待されており、この基準が達成された場合、27年度の乗用車の燃費は16年度と比較して23.5%改善されることになる。

(エコドライブの推進)
 運転時のCO2排出量は運転方法を変えるだけでも削減が可能である。例えば、緩やかな発進や加減速の少ない運転等をすることによって燃費は15%程度改善される。このように運転方法を変える、すなわちエコドライブを実践することは、CO2排出量を削減するだけではなく、燃料消費量の削減によりドライバーの経済的な負担の軽減にもつながる。
 国土交通省が平成18年5〜6月に実施したアンケートによれば、エコドライブを「実践している」又は「ある程度実践している」と回答した人は約7割と多い。特に、「空ぶかししない」、「急発進・加速しない」、「アイドリングストップ」といった事項を実施している人が多くなっている。その一方で、エコドライブに関する知識が不足しているとの声もあり、更なる普及、推進を図っていく必要がある。
 
図表I-2-1-9 エコドライブ

図表I-2-1-9 エコドライブ
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(注1)日本自動車工業会「2006年度(平成18年度)乗用車市場動向調査〜新車需要の変化と要因分析〜」
(注2)現在商品化されている製品のうち、燃費が最も優れているものの性能、技術開発の将来の見通し等を勘案して基準を定める方式
(注3)10・15モード走行パターン(日本の都市交通の走行実態を反映させて走行させたパターン)により運転して測定したときの燃費値

 

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