第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

2 交通流の円滑化による二酸化炭素排出削減に向けた課題

 自動車からのCO2排出量はその走行速度によっても影響される。例えば、走行速度が20km/hから60km/hに向上すれば、燃費が改善され、その結果、CO2排出量は約40%低減する。したがって、交通流(道路における車の流れ)を円滑化し、走行速度を向上させることは、CO2排出量削減に向けた重要な課題である。
 
図表I-2-1-10 走行速度とCO2排出量の関係

図表I-2-1-10 走行速度とCO2排出量の関係
Excel形式のファイルはこちら

(走行速度の改善)
 走行速度のこれまでの推移を見ると改善傾向にあり、平成6年度から17年度までに約3%改善している。ただし、特に人口が集中している地区では、全国平均に比べて走行速度が低水準にある。
 
図表I-2-1-11 混雑時旅行速度の推移

図表I-2-1-11 混雑時旅行速度の推移
Excel形式のファイルはこちら

(渋滞の解消)
 渋滞は走行速度の低下につながるが、人口、交通が集中する大都市圏では慢性的に発生しており、地方都市圏においても、朝夕のラッシュ時間帯を中心に激しい渋滞が発生している。全国の渋滞による損失時間は、年々減少傾向にはあるものの、平成18年度で年間約33.1億人時間(注1)(貨幣価値換算すると約10兆円の損失に相当)に達しており、引き続き重点的な渋滞対策が必要である。
 
図表I-2-1-12 道路渋滞の状況

図表I-2-1-12 道路渋滞の状況
Excel形式のファイルはこちら

 渋滞の発生要因は渋滞箇所によって様々である。例えば、交通容量の不足、「開かずの踏切」(注2)等の存在や道路の維持管理やライフラインの整備等による路上工事などは、交通の障害となり渋滞の原因となりうる。一方、高速道路の料金所は渋滞の発生箇所であったが、近年のETCの普及に伴い大幅に改善されてきた。今後、環状道路の整備により都心への通過交通の削減を図るとともに、優先的な取組みが必要な渋滞箇所について、各箇所の渋滞要因に対応した効率的・効果的な対策を実施していく必要がある。
 
図表I-2-1-13 首都高速のETC利用率と料金所渋滞の関係

図表I-2-1-13 首都高速のETC利用率と料金所渋滞の関係
Excel形式のファイルはこちら

(高速道路の利用促進)
 高速道路は一般道に比べて走行性が高いため、CO2排出量が少ないという特性がある。しかし、我が国においては、欧米諸国と比較して高速道路が十分に利用されているとは言い難い。高速道路の利用が少ない原因としては、そもそも高速道路が未整備であることもあるが、インターチェンジの間隔が長いため乗り降りが不便であることや料金に割高感があることなどがあげられる。これらの課題を解決し、環境負荷の小さい高速道路の利便性をさらに向上させる必要がある。


(注1)渋滞がない場合と実際の所要時間の差を一定区間ごとに算定し、交通量及び1台当たり平均乗車人員を掛け合わせた総和
(注2)ピーク時の遮断時間が40分/時以上の踏切

 

テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む