第I部 進行する地球温暖化とわたしたちのくらし〜地球温暖化対策に向けた国土交通行政の展開〜 

2 緑地、水辺の保全・再生・創出

 緑地は、CO2の吸収源として温暖化の緩和に貢献するものであり、国土づくりの中で森林の整備・保全、都市緑化等を推進する必要がある。特に、都市部におけるまとまった緑地は、都市活動で排出される人工廃熱の増加や、建築物・舗装面の増大等による地表の人工化によって引き起こされる気温の上昇やヒートアイランド現象の緩和にも寄与する。このため、緑地、水辺の保全・再生・創出等を通じて、居住環境等の改善とともに、地球環境への負荷の軽減を図っていくことが必要である。
 
図表I-2-3-15 東京の気温の長期変化(1898〜2007年)

図表I-2-3-15 東京の気温の長期変化(1898〜2007年)
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(都市緑化の効果)
 人口増加や市街地の拡大等に伴い、都市では、緑地や水辺等の自然的空間が次第に失われてきた。例えば、首都圏においては、昭和40年度から平成17年度までの40年間に22%の緑地が減少した。
 
図表I-2-3-16 首都圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)における緑地面積の推移

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 都市部のまとまった緑地は、周囲の気温を低下させる効果を持つ。例えば、東京都心部の10km四方で、緑化施策を総合的に講じて緑被率を現行の27.3%から39.5%に上げた場合、図表I−2−3−17に示したような効果が得られるとの試算もある。このため、都市公園の整備や道路、河川・砂防、その他の公共公益施設における緑地空間の確保を進めていく必要がある。
 
緑化の効果(国土交通省庁舎屋上)

緑化の効果(国土交通省庁舎屋上)
 
図表I-2-3-17 緑被率を上げた場合の気温低減効果(試算)

図表I-2-3-17 緑被率を上げた場合の気温低減効果(試算)
 
図表I-2-3-18 全国の屋上緑化・壁面緑化の施工面積

図表I-2-3-18 全国の屋上緑化・壁面緑化の施工面積
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(緑地、水辺の保全・再生・創出の必要性)
 新たに緑を増やせるスペースとしては、建物の屋上や壁面等が注目されている。建物の緑化は緑地面積を増やすだけでなく、日射を遮り建物への熱の流入を抑制することで、夏場の冷房エネルギーの削減にも貢献する。平成12年から18年の間に整備された屋上と壁面を合わせた緑化面積は、全国では、官民合わせて約170万m2となっている。
 国では、官庁施設の建設、運用、廃棄に至るまでのサイクルを通じて環境負荷の低減を図るグリーン庁舎の整備を進めており、その一つとして庁舎の緑化を積極的に進めている。民間施設では、所有者の協力を得ながら緑化を進める必要があるが、例えば東京都では、一定規模以上の敷地を有する民間の建築物を対象に屋上等の緑化を進めており、18年末現在で、約77万m2が緑化されている。
 緑化と併せ、河川や水路の水の流れを確保することも重要であり、河川水だけでなく地下水や雨水、下水の再生水等を用いた水辺の再生や道路への散水等を進めていくなどの取組みが必要である。
 
屋上緑化された庁舎(九段第3庁舎)

屋上緑化された庁舎(九段第3庁舎)
 
下水処理水を活用した道路散水

下水処理水を活用した道路散水
 
下水処理水を活用したせせらぎの再生(神奈川県川崎市)

下水処理水を活用したせせらぎの再生(神奈川県川崎市)

 今後とも、都市の環境インフラとして、都市内外でまとまりのある緑地や水辺等の自然環境を確保していくとともに、それらをネットワークとして配置することで「緑の回廊」を形づくり、生活環境、景観、防災性の向上、生物多様性の保全等に貢献するとともに、風の通り道をつくり都市の熱環境の改善を通じたCO2の削減を図っていくことが必要である。

 

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