第II部 国土交通行政の動向 

3 国際観光の振興

(1)ビジット・ジャパン・キャンペーンの高度化
 訪日外国人旅行者数を平成22年までに1,000万人にするとの目標を達成するため、日本の観光魅力を海外に発信するとともに、魅力的な旅行商品を促進するビジット・ジャパン・キャンペーンを官民一体となって取り組んでいる。
 中国については、19年が日中国交正常化35周年という記念の年に当たることから、日本からの直行便がある中国の都市に2万人規模の訪中団を派遣するとともに、これに呼応した、訪日団の受入れを実施した。また、19年9月の羽田=虹橋(上海)間の旅客チャーター便が実現したこと等により、19年の訪日中国人旅行者数は推計で約94万人(対前年比16.2%増)となり、米国を抜いて、韓国、台湾に次いで第3位となった。
 韓国については、19年が江戸時代に朝鮮通信使が初めて派遣されてから400周年に当たることから、これを契機とした交流事業等を実施した結果、19年の訪日韓国人旅行者数は推計で約260万人(前年比22.8%増)と大きく増加し、韓国への日本人旅行者数を上回ることとなった。
 また、19年6月に中国・青島にて第2回日中韓観光大臣会合を開催するとともに、3国間の観光交流を22年までに1,700万人にするとの目標の達成に向けて、20年3月に米国・マイアミで開催されたクルーズ・コンベンションに3国共同で出展するなどの観光交流拡大策を実施した。
 これらの取組みに加え、タイ、カナダ、インドとの関係における観光交流年の活用、国際会議、国際文化・スポーツイベントの誘致を通じた訪日旅行の促進等の取組みを実施した。
 今後は、訪日旅行者の満足度を高めリピーターを促進すべく、国際観光振興の更なる展開を図るため、「ビジット・ジャパン・アップグレード・プロジェクト」として、我が国の魅力の一層の理解の促進等に取り組むほか、ICカード共通化・相互利用化など旅行者の利便性の増進を図っていく。

(2)国際会議の開催・誘致の推進
 平成18年9月の安倍前総理所信表明演説において、今後5年以内に、我が国の主要な国際会議の開催件数を5割以上伸ばし、アジアにおける最大の開催国を目指すとの目標が掲げられた。
 また、19年5月に「国際会議の開催・誘致推進による国際交流拡大プログラム」が取りまとめられるとともに、19年6月に官房長官主宰の下、国際会議開催・誘致推進連絡会議が開催され、産学官一体となって国際会議の開催・誘致に取り組むこととされた。
 これを踏まえ、国土交通省は、19年5月より一元的なコンサルティング窓口を開設し、開催都市とのマッチング、各種支援制度の紹介等の相談業務を開始した。また、国際会議の開催・誘致に係る情報が不足していることから、国際会議に関する調査を開始した。
 今後は、開催国の決定権者に対する働きかけ等を行うため実施される説明会、レセプション等の誘致活動等について、国土交通省が共催することにより支援を行うとともに、国際会議適地としての我が国の認知度を向上させるため、コンベンション見本市への出展や、キーパーソンの招請等を実施していく。また、誘致戦略マニュアルの作成など、ソフトインフラの整備も実施する。

(3)外国人観光客の受入れ体制の確保
 路線名と駅名にアルファベットや数字を併記するナンバリング(番号制)が主に都市部の地下鉄等において実施されるなど、外国人旅行者の利便を図るための様々な取組みが公共交通事業者等により行われている。これら取組みのより一層の促進を図るため、「外客来訪促進法」では、公共交通事業者等に対し、情報提供促進措置(注1)を講じるよう努力義務を課している。特に、外国人旅行者の利用が多く見込まれる区間は同措置を講じるべきとして国土交通大臣が指定し、該当する249事業者に対し情報提供促進実施計画の作成・実施を義務付けている。
 また、平成19年度に、「外客来訪促進法」に基づき、地域限定通訳案内士試験の実施を内容とする岩手県、静岡県、長崎県、沖縄県を含む地区が定める「外客来訪促進計画」に同意するとともに、試験実施を支援した。
 さらに、通訳ガイド団体が「通訳ガイドスキルアップ・プログラム」(注2)に基づき実施する研修の推進や無資格ガイド対策等を実施し、通訳ガイドの利用促進を図っている。
 他方、「国際観光ホテル整備法」に基づき、ハード・ソフトの両面から見て訪日外国人旅行者の宿泊に適したホテル・旅館の登録を行い、税制特例措置の適用等による支援を行っている。19年12月末現在、1,122軒のホテル及び1,965軒の旅館が登録されている。加えて、外国人旅行者の受入体制に関する仕組みの構築及び外国人に対する日本の魅力の発信といった努力に公的評価を付与することにより、訪日促進の諸活動が広がることを期待し、一層の外国人旅行者の訪日を推進するため、他の関係者の手本となる優れた取組みを行った者を「YOKOSO! JAPAN 大使」として20年1月に国土交通大臣が17名を任命した。なお、19年度から3箇年で100名程度を任命する予定である。


(注1)外国人旅行者が公共交通機関を円滑に利用するため必要な、外国語等による情報の提供を促進するための措置
(注2)通訳ガイドが実務を行うに当たって必要となる実践的知識を向上させるための標準的研修プログラムを示したもの(19年3月策定)

 

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