第II部 国土交通行政の動向 

3 ハード・ソフトの基盤整備

(1)民間投資誘発効果の高い都市計画道路の緊急整備
 市街地における都市計画道路の整備は、沿道の建替え等を誘発することで、都市再生に大きな役割を果たしている。このため、残りわずかな用地買収が事業進捗の隘路(あいろ)となっている路線のうち、地方公共団体(事業主体)が一定期間内の完了を公表した路線(完了期間宣言路線(平成19年4月1日現在 92事業主体265路線))を国として重点的に支援し、事業効果の早期発現を図るとともに、適切な事業進捗管理に努めている。

(2)交通結節点の整備
 鉄道駅やバスターミナル等の交通結節点は、様々な交通施設が集中し、大勢の人が集まるため、都市再生の核として高い利便性と可能性を有する。このため、交通結節点改善事業や都市交通システム整備事業、鉄道駅総合改善事業等を活用し、交通機関相互の乗換利便性の向上や鉄道等により分断された市街地の一体化、駅機能の改善等を実施し、都市交通の円滑化や交通拠点としての機能強化等を図っている。平成19年度においては、交通結節点改善事業は新宿駅南口地区(東京都)等約160箇所、都市交通システム整備事業は大塚駅地区(東京都)等約37箇所、鉄道駅総合改善事業は京急蒲田駅(東京都)等7箇所で実施している。
 
図表II-3-2-3 交通結節点改善事業の例(新宿駅南口地区)

図表II-3-2-3 交通結節点改善事業の例(新宿駅南口地区)

 また、道路・都市事業と鉄道事業を同時採択し、鉄道駅及び駅周辺の効率的な整備を図る駅・まち一体改善事業を、東長崎駅地区(東京都)等4箇所で実施している。さらに、地方公共団体、鉄道事業者等から構成される協議会が施設全体の最適計画を策定し、これに基づく事業に助成する駅まち協働事業を三宮駅前南地区(神戸市)で実施しており、阪神三宮駅の駅施設利用円滑化事業と併せ、一体的整備を図っている。

(3)踏切対策の推進
 踏切道における事故防止と交通の円滑化を図るため、踏切道の立体交差化等の対策を総合的に進めてきた。しかし、大都市圏を中心とした「開かずの踏切」(注1)等は、踏切事故や慢性的な交通渋滞等の原因となり、早急な対策が求められている。
 こうした状況の中、道路管理者及び鉄道事業者の協力の下、平成18年度に全国の踏切を対象に踏切交通実態総点検を実施し、「開かずの踏切」等の緊急に対策が必要な踏切約2,000箇所を抽出した。
 この結果を踏まえ、踏切を除却する連続立体交差事業等と踏切の安全性向上を図る歩道拡幅等を緊急かつ重点的に推進している。

(4)下水道による地域の活性化
 下水道は生活環境の改善による定住促進に資するとともに、観光地においては良好な水辺空間等を保全・創出することで集客力を向上し、また、工業団地においては、企業単独での排水処理が不要となること等から企業立地が促進され地域経済の活性が図られるなど、地域の活性化に貢献している。さらに、下水処理場の施設空間や下水処理水、下水汚泥等を有効に活用し、活力ある地域づくりを進めている。平成19年度には、地域全体での下水汚泥を始めとする各種バイオマスの一体的な処理・有効利用を推進する制度を創設したほか、地域の創意工夫による実状に応じた工法で下水道の普及を促進する社会実験制度を実施している。

(5)高規格堤防の整備
 流域に人口・資産等が高密度に集積している荒川(東京都)、淀川(大阪府)等の大河川において、計画規模を上回る洪水等によりひとたび堤防が決壊すれば、都市の中枢機能の麻痺等その影響は甚大なものとなることから、大都市圏を防御する高規格堤防(スーパー堤防)をまちづくりと一体的に整備している。これにより、経済活動等、地域の活力を支える上で不可欠な地域の安全・安心の確保と河川空間を活かした水と緑の潤いのある水辺都市の再生を図っている。

(6)みなとを核とした地域の活性化
 我が国では、基幹産業に不可欠なエネルギー、原材料を輸入し、完成自動車や鋼材等の製品や半製品を輸出する構造であることから、バルク貨物(注2)輸送が非常に重要な役割を担っている。このようなバルク貨物輸送においては、船舶の大型化等による一層の輸送効率化が進展しており、取扱貨物量も増加している。一方、臨海部において、企業の国際分業の進展や輸送・在庫コストの削減等の物流効率化の要請に伴い、物流施設の集約・大規模化や、保管に加え集配送・流通加工等の機能等、物流機能の高機能化のニーズが増加している。さらに、港湾等の近接による海上輸送の利便性、大規模用地の確保の容易性等の臨海部の優位性を活かして、建設機械等の加工組立型産業等を中心に、臨海部における企業立地が増加している。
 このような動向を踏まえ、大型の貨物船が着岸可能な多目的国際ターミナルの整備等により港湾の機能強化を進め、企業のニーズに応じた港湾機能の向上と臨海部の産業の活性化・企業の立地促進を一体的に推進している。
 例えば、大分県中津港では、平成16年のターミナル供用にあわせ自動車工場と関連企業が進出し、約1,015億円の投資と約5,300人の雇用が創出されている。また、茨城県常陸那珂港では、12年のターミナル供用後、産業機械の輸出が堅調に推移し、近年、港の周辺に産業機械メーカーが進出し、約535億円の投資と約740名の雇用が創出されている。
 
図表II-3-2-4 常陸那珂港(茨城県)の例

図表II-3-2-4 常陸那珂港(茨城県)の例

(7)地籍整備の積極的推進
 地籍調査は一筆ごとの土地の境界等を調査するものであるが、特に都市部の進捗が遅れている。このため、都市部のうち重要な地域において街区外周に関する基礎的データを整備する土地活用促進調査を行うなど、地籍整備の積極的な推進を図っている。

(8)大深度地下の利用
 「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」に基づく三大都市圏での公共性の高い事業の円滑な実施のため、環境・安全等についての技術的課題に関する検討や大深度地下情報システムの整備等の利用環境の整備を進めている。

(9)地域コミュニティによるエリアマネジメントの構築
 地域の居住環境の維持・向上に資する地域住民等による自主的取組み(エリアマネジメント)の実態、課題及び今後取り組むべき方向性について、平成19年2月に「新たな担い手による地域管理のあり方について」として取りまとめた。本報告を踏まえ、意欲ある団体へのステップアップ支援等によりエリアマネジメントの推進に取り組むとともに、低未利用地の多くを占める企業用地や公共用地の合理的かつ戦略的な所有・利用を促す条件整備を推進している。


(注1)ピーク時の遮断時間が40分/時以上の踏切
(注2)包装・梱包せずにそのまま船艙内に積み込み輸送する貨物の総称

 

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