第II部 国土交通行政の動向 

3 良好な都市環境の構築

(1)ゴミゼロ型都市への再構築
 地域再生プロジェクト第一次決定では、大都市圏において、廃棄物の発生抑制、資源としての再使用・再生利用を進め、資源循環の「環」を作成することにより、ゴミゼロ型都市への再構築を行う「大都市圏におけるゴミゼロ型都市への再構築」が位置付けられている。これを踏まえ、首都圏、中部圏及び京阪神圏において「ゴミゼロ型都市推進協議会」を設置し、ゴミゼロ型都市の再構築に向け中長期計画を策定している。また、首都圏においては平成19年1月に新中長期計画が策定された。
 建設副産物については、リサイクルの推進が必要とされていることから、小口巡回共同回収システムの構築に向けた検討を進めている。
 さらに、リサイクルの進展に伴う廃棄物輸送の拡大が予想されるが、環境負荷、交通負荷の小さい物流体系の構築のため、海上輸送による広域的な循環資源物流ネットワークの拠点として、リサイクルポート施策を推進している。

(2)都市における自然環境
1)大都市圏における貴重な自然環境の保全・再生・創出
 自然環境の保全・再生・創出を総合的に考慮した水と緑のネットワークを形成するための基本方針である「都市環境インフラのグランドデザイン」(首都圏:平成16年3月、近畿圏:18年7月)に基づく、19年度の主な取組みとして、首都圏では、行政や市民、NPO等の多様な主体による取組事例を首都圏住民で広く共有し、自然環境の保全・再生・創出の取組みをより一層進めることを目的とした「首都圏の都市環境インフラデータベース」を19年7月に公開した。また、近畿圏では、行政や市民団体からなるワーキンググループを2組設置し、地域の課題の抽出やその解決に向けた具体的な取組みの検討・整理等を行った。
2)臨海部における緑の拠点の形成
 都市再生プロジェクト第三次決定を受け、東京港中央防波堤内側における「海の森構想」、大阪湾堺臨海部における「共生の森構想」、大阪湾尼崎臨海部における「尼崎21世紀の森構想」の取組みが進められている。こうした臨海部の大規模緑地の整備は、廃棄物海面処分場跡地の有効活用、地球温暖化対策、ヒートアイランド対策、生態系の回復、環境学習の場及び自然とのふれあいの場の拡大につながるものと期待されている。整備に当たっては、計画検討の段階から、市民ボランティア・NPO等と行政との協働が図られている。
3)都市の緑の拡大
 ヒートアイランド現象の緩和、二酸化炭素の吸収による地球温暖化対策、多様な生物の生息生育基盤の確保等に資する、緑豊かな都市環境の実現に向け、都市の緑化及び緑地保全を推進する。
 市町村が策定する緑地の保全や緑化の推進に関する基本的な計画である「緑の基本計画」に基づき、都市公園の整備や、建築行為等の規制により樹林地等の保全を図る特別緑地保全地区の指定等を支援している。また、良好な自然的環境を有する都市公園の整備をすすめる自然再生緑地整備事業、緑の保全・創出に係る取組みを総合的に支援する緑地環境整備総合支援事業等を推進するとともに、道路・河川等との事業間連携を進め、水と緑のネットワークの形成を推進している。民有地においても、緑化施設整備計画認定制度による税の特例措置等により緑化を推進している。
 また、緑豊かな都市の実現に向けた普及啓発として、全国「みどりの愛護」のつどい等を展開するとともに、平成19年度は都市開発における緑地評価制度の検討を行っている。
4)河川の再生
 大都市における水循環の主軸である主要な河川について、河岸の再自然化、水質の改善、親水空間の整備等により、河川の再生を重点的に推進している。平成19年度においては、東京都心部の渋谷川、古川における環境の再生等を行っている。
5)海の再生
 東京湾等の閉鎖性海域では、環境改善のための取組みが行われてきたが、流入する窒素、りん等の汚濁物質により富栄養化が進み、赤潮や青潮(注1)が発生するなど、環境改善が思うように進んでいない状況にある。
 このため、都市再生プロジェクト第三次決定「海の再生」を受け、東京湾、大阪湾及び伊勢湾においてそれぞれの再生行動計画を策定し、同計画に基づき、関係機関と連携の下、陸域負荷削減対策(注2)、海域環境改善対策(注3)、モニタリング(注4)等の各種施策を推進している。また、広島湾においても「全国海の再生プロジェクト」として、三大湾と同様に行動計画を策定し各種施策を推進している。

(3)琵琶湖・淀川流域圏の再生
 都市再生プロジェクト第六次決定を受け、貴重な資産に恵まれた琵琶湖・淀川流域圏を健全な姿で次世代に継承することを目的として、「琵琶湖・淀川流域圏の再生計画」を策定し、「琵琶湖・淀川流域圏再生推進協議会」を設置した。平成19年度は、NPO等の活動団体で構成する「琵琶湖・淀川流域圏連携交流会」と関係行政機関で構成する「琵琶湖・淀川流域圏再生推進協議会」とが連携し、水辺の生態系保全再生等について、流域圏全体で一体的・総合的な取組みを進めている。
 
大阪の水の都づくり(道頓堀川)

大阪の水の都づくり(道頓堀川)


(注1)海底に堆積した植物プランクトンの死骸等が分解されるときに大量の酸素が消費され、極端に酸素不足となった海水が風等で海面付近へ浮上した際に海水が青白く見える現象
(注2)水質総量規制制度に基づく事業場への規制等の実施、下水道の整備(高度処理の推進、地域事情に応じた農業集落排水施設の整備、浄化槽等の各種生活排水処理施設の整備、河川直接浄化、湿地や河口干潟の再生、森林の整備・保全等の水質改善事業
(注3)干潟・藻場の再生・創出、汚泥の除去や覆砂による底質の改善、環境整備船等による浮遊ゴミ・油の回収等
(注4)水質測定、人工衛星を利用した赤潮等の常時監視と発生原因の推定等

 

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