第II部 国土交通行政の動向 

第4章 自立した個人の生き生きとした暮らしの実現

第1節 ユニバーサル社会の実現

1 ユニバーサルデザインの考え方を踏まえたバリアフリー化の実現

 バリアフリー環境の整備については、従来より、「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律(ハートビル法)」や「高齢者、身体障害者等の公共交通機関を利用した移動の円滑化の促進に関する法律(交通バリアフリー法)」に基づく取組みを推進してきた。
 バリアフリー施策を更に進めるためには、「どこでも、だれでも、自由に、使いやすく」というユニバーサルデザインの考え方に基づき、個々の施設や経路のバリアフリー化のみならず、心のバリアフリー等のソフト面も含めた施策を推進する必要があり、平成17年には、「ユニバーサルデザイン政策大綱」を取りまとめた。18年12月には、公共交通機関や建築物等のバリアフリー化、施設間の経路の一体的・連続的なバリアフリー化の促進等に加えて、心のバリアフリーの促進、高齢者や障害者等関係者の参画による段階的な発展を目指すスパイラルアップの導入等の施策を盛り込んだ「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(バリアフリー新法)」が施行され、ハード・ソフト両面における施策の充実により、ユニバーサル社会の実現に取り組んでいる。

(1)公共交通機関のバリアフリー化
 バリアフリー新法に基づき、旅客施設の新設・大改良及び車両等の新規導入の際に移動等円滑化基準に適合させることを義務づけ、既存施設については同基準の適合への努力義務を課すとともに、市町村が策定する基本構想に即した一体的なバリアフリー化を進めることとしている。
 また、鉄道駅へのエレベーター等の設置、路面電車における低床式車両(LRV)の導入、標準仕様の認定を受けたノンステップバスに対する補助を実施している。
 さらに、国民一人一人による高齢者、障害者等に対する理解と協力、すなわち「心のバリアフリー」の推進を図るため、高齢者、障害者等の介助体験・疑似体験を行う「バリアフリー教室」の開催等ソフト面の施策についても積極的に推進している。
 
図表II-4-1-1 公共交通機関のバリアフリー化の現状

図表II-4-1-1 公共交通機関のバリアフリー化の現状
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(2)居住・生活環境のバリアフリー化
1)住宅・建築物のバリアフリー化
 高齢者、障害者等の自立や介護に配慮したバリアフリー住宅の取得や改良について支援を行っているほか、公共賃貸住宅についてはバリアフリー化を標準仕様とするなど、高齢者、障害者等に配慮した賃貸住宅の供給や、公共賃貸住宅等と福祉施設の一体的整備(平成18年度末現在1,631施設)の推進を通じ、高齢者、障害者等が地域の中で安全・安心で快適な住生活を営むことができるよう支援等を実施している。
 また、不特定多数の方や主として高齢者、障害者等が利用する建築物で、一定規模以上のものを建築する場合には、「バリアフリー新法」によるバリアフリー化の義務付けや、所定の基準に適合した認定特定建築物に対する税制上の特例や低利融資、補助等の支援措置を行っている。
 官庁施設においても、窓口業務を行う事務室の出入口の自動ドア化、多機能トイレの設置等による高度なバリアフリー庁舎を整備するとともに、既存庁舎についても計画的にバリアフリー改修を実施している。
 
図表II-4-1-2 「バリアフリー新法」に基づく特定建築物の建築等の計画の認定実績

図表II-4-1-2 「バリアフリー新法」に基づく特定建築物の建築等の計画の認定実績
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2)歩行空間のバリアフリー化
 高齢者、障害者等に配慮した安全で快適な歩行空間を形成するため、バリアフリー新法に基づき、幅の広い歩道の整備、歩道の段差解消、勾配の改善、立体横断施設へのエレベーターの設置等による歩行空間のバリアフリー化を推進している。
3)都市公園等におけるバリアフリー化
 高齢者や障害者等が、安全・快適な生活環境の中で様々な体験活動ができるよう、「バリアフリー新法」に基づき、出入口や園路の段差解消、高齢者や障害者等が利用可能なトイレの設置など、都市公園のバリアフリー化を推進している。また、身近な自然空間として河川、港湾等の魅力を誰もが享受できるよう、スロープ、手すりの整備等によるバリアフリー化を推進している。
 
車いす使用者に配慮した花壇の設置事例(海の中道海浜公園)

車いす使用者に配慮した花壇の設置事例(海の中道海浜公園)
 
緩傾斜スロープの設置事例(東京都荒川)

緩傾斜スロープの設置事例(東京都荒川)

 

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