第II部 国土交通行政の動向 

第3節 快適な暮らしの実現

1 下水道整備の推進

(1)下水道による汚水処理の普及
 下水道は、生活環境の改善等の役割を担う、快適な生活に不可欠な社会資本である。下水道処理人口普及率は平成18年度末において、全国平均で約70.5%(農業集落排水施設、浄化槽等を含めた汚水処理人口普及率は82.4%)にまで達したものの、地域別には整備水準に大きな格差がある。特に、人口5万人未満の中小市町村における下水道処理人口普及率は41.2%と低い水準にとどまっている。
 
図表II-4-3-1 都市規模別下水道処理人口普及率(平成18年度末)

図表II-4-3-1 都市規模別下水道処理人口普及率(平成18年度末)
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1)効率的な汚水処理施設整備のための事業連携
 汚水処理施設の整備については、一般的に人家のまばらな地区では個別処理である浄化槽が経済的であり、人口密度が高くなるにつれて、集合処理である下水道や農業集落排水施設等が経済的となるなどの特徴がある。このため、各都道府県においては、汚水処理施設の整備を進めるに当たって、近年の人口減少傾向も踏まえた経済性や水質保全上の重要性等の地域特性を十分に反映した汚水処理に係る総合的な整備計画である「都道府県構想」を策定するとともに、集合的な汚泥処理等他の汚水処理施設との連携施策を導入している。
2)下水道未普及解消クイックプロジェクト社会実験
 人口減少傾向や厳しい財政事情を踏まえ、従来の技術基準にとらわれず地域の実状に応じた低コスト、早期かつ機動的な整備が可能な新たな整備手法の導入を図る「下水道未普及解消クイックプロジェクト社会実験」を平成19年6月より9市町において実施している。

(2)下水道事業の持続性の確保
1)適正なストック管理
 下水道整備の進展に伴い、施設のストックが増大している。これに伴い、管路施設の老朽化等に起因する道路陥没も増加している。今後、下水道の有する機能を将来にわたって維持・向上させるため、新規整備、維持管理、改築を体系的に捉え、必要となる費用の最小化あるいは平準化を図るための一体的かつ計画的な施設管理(ストックマネジメント)を導入する必要がある。施設の改築に当たっては、「事故の未然防止」及び「ライフサイクルコストの最小化」の観点から、耐震化等の機能向上も考慮した、長寿命化対策を含めた計画的な改築を推進していく。
2)経営基盤の強化
 下水道事業の経営は、汚水処理費用を使用料収入で賄うことが原則とされているが、使用料回収率は全国平均で6割程度にとどまっている。この傾向は、高齢化、人口減少等の進展による影響が大きいと予測される中小市町村において顕著であり、今後使用料収入等の減少も予想される中、経営基盤の強化が求められている。
 このような状況の中、地方公共団体、学識経験者等で構成される下水道事業に係る経営問題検討会において、経営の健全性、計画性及び透明性の向上など経営健全化に向けた具体的取組みについて検討を行っている。
3)民間活力の活用と技術力の確保
 維持管理業務に関する包括的民間委託(注)を推進するため、平成16、17年に実施上の留意点等を都道府県等に通知するとともに、地方公共団体における包括的民間委託の導入に資するよう環境整備を行っている。また、下水道管理者の技術力の確保の観点から、日本下水道事業団等の技術支援の活用を推進している。


(注)施設管理について一定の性能の確保を条件として課しつつ、運転方法等の詳細については民間事業者に任せることにより、民間事業者の創意工夫を反映し、業務の効率化を図る発注方式

 

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