第II部 国土交通行政の動向 

1 国際物流機能強化のための施策

(1)ニーズに応じた国際物流施策の推進
 総合物流施策大綱や国土交通省国際物流施策推進本部決定に基づき、国際物流施策の総合的かつ戦略的な推進を図っており、最前線のニーズに対応した施策の展開という観点から、幅広い関係者が参画した「国際物流戦略チーム」を全国10地域において設置しているところである。例えば、中部においてはコンテナ輸送の陸上輸送から海上輸送へのモーダルシフトによる渋滞解消とCO2排出量削減、関西においては関西空港深夜貨物便活用と大阪湾諸港の一開港化、北海道においては北海道ブランドの農水産品の輸送方法確立等、地域の実情に応じた、創意工夫溢れる取組みが展開されている。

(2)国際海上輸送網の基盤の強化
 アジア諸国の著しい経済成長や製造業を中心とした企業の国際分業の進展により、アジア地域を中心として国際海上コンテナ貨物の輸送量が大きく増加している。また、貨物量の増大に対応して、アジア地域と欧米とを結ぶ基幹航路においては、8,000個を超えるコンテナを積載可能な大型コンテナ船が次々と就航し、輸送効率の点から寄港地を集約する動きが進んでいる。
 我が国の国際海上コンテナ輸送の現状をみてみると、アジア各国の貨物量が増大する中、基幹航路における貨物量のシェアは低下している。また、アジア主要港と比較して割高な港湾コストや長いリードタイムもあって、基幹航路の寄港便数は減少しており、さらに、海外諸港で積み替えられて輸送されるトランシップ貨物が増加している。
 一方、我が国と中国・韓国との貿易量は増加しており、我が国の産業活動において不可欠なものとなっている。また、両国との定期コンテナ航路は全国約60の港湾に開設され、企業のサプライチェーンマネジメントやジャストインタイム輸送等に対応した海上輸送サービスが展開されている。
 また、国際輸送と接続する国内輸送においても効率的な物流体系を構築することは地球温暖化対策の観点からも重要である。
 このような状況を踏まえ、我が国産業の国際競争力とより豊かな国民生活の実現に向けて、港湾政策において、国際・国内一体となった最適な海上輸送ネットワークを実現するため次の取組みを推進するとともに、施策の更なる充実・深化を図ることとしている。
1)スーパー中枢港湾プロジェクトの充実・深化
 スーパー中枢港湾プロジェクトは、アジア主要港をしのぐコスト・サービス水準を実現するため、単一の民間事業者による大規模コンテナターミナルの一体的・効率的な運営、港湾におけるICT化、24時間フルオープン化等により、港湾コストの約3割低減及びリードタイムの1日程度への短縮を目指すものである。その推進に向けて、指定特定重要港湾(スーパー中枢港湾)を国土交通大臣が指定(京浜港、名古屋港及び四日市港、大阪港及び神戸港)し、民間事業者は大規模コンテナターミナルの運営事業の認定を受け、逐次運営を開始している。また、国は、次世代高規格コンテナターミナルの形成等ハード・ソフト一体となった総合的取組みを推進するとともに、多くの外貿コンテナ貨物を取り扱う外貿埠頭公社の株式会社化等により、スーパー中枢港湾全体の機能強化を図っていくこととしている。
 
図表II-5-3-1 スーパー中枢港湾プロジェクトにより整備される次世代コンテナターミナル

図表II-5-3-1 スーパー中枢港湾プロジェクトにより整備される次世代コンテナターミナル

2)臨海部の物流機能の強化
 臨海部への物流機能の集積により国際海上輸送の効率性を向上するため、埠頭近傍において荷捌き施設等を整備する民間事業者に対して支援を行っている。
3)東アジア物流の準国内輸送化への対応
 時間的、距離的に国内物流と大差ない対東アジア物流において、高度化・多様化するニーズに対応し、迅速かつ低廉な物流体系を構築するため、国際ユニットロードターミナルや小口貨物積替円滑化施設等の整備を進めている。
4)国際港湾の機能向上
 国際海上コンテナ貨物やチップ、木材、石炭等バルク貨物の増加に対応するため、国際海上輸送ネットワークの拠点となる中枢・中核国際港湾や地域の拠点となる港湾において、国際海上コンテナターミナルや多目的国際ターミナルの整備を行うとともに、ICT化の推進等利便性向上に向けた取組みを推進している。
5)海上交通環境の整備
 国際幹線航路のうち、浅瀬等の存在により湾内航行に支障のある箇所の改良等を行うとともに、航路標識の整備や船舶航行規制の見直し等を行うことにより、船舶航行の安全性と海上輸送の効率性を両立させた海上交通環境の整備を行っている。

(3)国際競争力の強化に向けた航空物流機能の高度化
 今後一層の拡大が見込まれる国内外の航空貨物需要に対応し、我が国の国際競争力の強化及び利用者利便の向上を図るため、1)成田・羽田の一体的運用による首都圏における24時間貨物ハブ空港機能の実現、2)完全24時間運用を活かした、関西国際空港の物流機能強化、3)国内・国際間の継越、総合保税地域等の物流利便に優れる中部国際空港の利用促進、4)地方空港を活用した多様な航空物流ネットワークの構築、5)多様化かつ高度化するニーズに対応した航空物流の新たな展開等の課題について、重点的に取り組んでいる。また、平成19年7月には国土交通省航空局に航空物流室が設置され、航空会社、航空フォワーダー、荷主等との緊密な連携を図りつつ、航空物流施策を一体的・戦略的に推進している。

(4)国際物流機能強化に資するその他の施策
 アジア域内での経済交流が進むにつれ、国際物流と国内の陸・海・空の各輸送モードが有機的に結びついた効率的な物流ネットワークの形成が急がれている。このため、国際標準コンテナ
(注)が重要な港湾等と大規模物流拠点とを支障なく通行できる幹線道路ネットワーク(国際物流基幹ネットワーク)の構築を推進し、既供用のネットワーク上に存在する国際コンテナ通行支障区間については、橋梁補強や現道拡幅、バイパス整備等の対策を実施し、10年間でおおむね解消を図ることとしている。また、拠点的な空港・港湾と高規格幹線道路等とを結ぶアクセス道路についても重点的かつ効果的に整備するなど、物流の円滑化に資する道路整備を推進している。さらに、鉄道貨物輸送力増強により海上輸送と鉄道輸送の組み合わせたSea&Railサービス等東アジアとの国際物流の増加等への対応を図るほか、鉄道積替施設の整備の促進やスーパー中枢港湾における内航フィーダー輸送の利用促進等国際複合一貫輸送の促進を図っている。


(注)長さ40フィート(約12m)の背高コンテナを積載したトレーラ。最大積載時の車両総重量は44トン、車高は4.1m

 

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