第II部 国土交通行政の動向 

第3節 豊かで美しい自然環境を保全・再生する国土づくり

1 豊かで美しい河川環境の形成

(1)良好な河川環境の保全・形成
1)多自然川づくり、自然再生の推進
 河川整備は、多自然川づくりを基本とし、必要とされる治水上の安全性を確保しつつ、地域の暮らしや歴史・文化との調和にも配慮し、生物の良好な生息・生育・繁殖環境及び多様な河川景観の保全・創出に努めている。また、河川における生物の連続性の確保のため、「魚がのぼりやすい川づくりの手引き」を活用し、全国の魚道整備等を推進している。さらに、多様な自然環境を有する本来の川の姿に戻すため、礫(れき)河原の復元や湿地の再生等を行う自然再生事業を釧路川、荒川等、全国33水系で推進している。このほか、河川水辺の国勢調査、河川生態学術研究会及び世界最大級(延長約800m)の実験水路を有する自然共生研究センターでの取組み等、学識経験者や各種機関と連携し様々な調査・研究を行っている。
2)外来生物対策の推進
 生物多様性を保全する上で大きな脅威の一つである外来種は、全国の河川において生息域を拡大しており、生態系への影響等が問題となっている。この対策として、「河川における外来種対策の考え方とその事例」等を作成し、各地の外来種対策に役立てている。

(2)河川水量の回復のための取組み
 良好な河川環境を保全するには、豊かな河川水量の確保が必要である。このため、河川整備基本方針等で動植物の生息・生育環境、景観、水質等を踏まえ必要流量を定め、確保に努めるほか、水力発電所のダム等の下流の減水区間における清流回復の取組みを進めている。また、ダム下流の河川環境を保全・改善するために、洪水調節に支障を及ぼさない範囲で洪水調節容量の一部を有効に活用するダムの弾力的管理および弾力的管理試験を行っている(平成19年度は、全国の26ダムで実施)。さらに、平常時の自然流量が減少した都市内河川では、下水処理場の処理水の送水などにより、河川流量の回復に取り組んでいる。

(3)山地から海岸までの総合的な土砂管理の取組みの推進
 近年、土砂の流れの変化による河川環境の悪化や、陸域から海域への土砂供給の減少や沿岸での漂砂移動の変化等による海岸侵食等の土砂管理上の問題が顕在化している。このため、土砂の流れに関係する問題の解決や、自然環境、景観の保全を図るため、総合的な土砂管理の取組みを関係機関との連携を図りつつ実施している。具体的には、透過型砂防えん堤の設置、ダムでの土砂バイパス、砂利採取規制、海岸でのサンドリサイクル等を実施するとともに、土砂管理技術の検討・開発を推進している。特に釧路川では、湿原への土砂流入を抑制するため、山地から湿原までの土砂移動を捉えた計画を平成18年8月に策定し、湿原の上流に調整地や床止め等の設置を進めている。
 
図表II-7-3-1 釧路川における総合的な土砂管理

図表II-7-3-1 釧路川における総合的な土砂管理

(4)河川における環境教育
 地域に身近に存在する自然空間として、川においては、近年、環境学習や自然体験活動等の様々な活動が活発に行われている。小・中・高等学校での総合的な学習の時間の導入等も踏まえ、子どもが安全に水辺で学び、遊ぶためのプロジェクトや情報発信を行っている。
 また、川には危険が内在し、安全に活動するためには正しい知識が必要不可欠であることから、市民団体が中心となって設立された特定非営利活動法人「川に学ぶ体験活動推進協議会(RAC)」等と連携し、川の指導者の育成等を推進していく。

○子どもの水辺再発見プロジェクト
 市民団体、教育関係者、河川管理者等が連携して、子どもの水辺を登録し、子どもの水辺サポートセンターにおいて様々な支援を実施。平成19年10月末現在、251箇所を登録
 
子どもの水辺(多摩川(神奈川県))

子どもの水辺(多摩川(神奈川県))

○水辺の楽校プロジェクト
 子どもの水辺として登録された箇所において、堤防の緩傾斜化や安全に水辺に近付ける河岸整備等を実施。平成19年10月末現在、261箇所を登録
○川の通信簿
 住民、市民団体等と共に、河川等の利用の快適性や環境状況を現地で評価し、よりよい河川空間の整備、管理を実施。平成18年に682箇所で実施
○川の生き物調べ(全国水生生物調査)
 川にすむ生き物を調べ、川の水質調査を行うことを通じて、身近な河川に接し、川への関心を呼び起こすことを狙いとして実施。18年度は74,968人が参加
○「川で学ぼう」「川であそぼう」ホームページ
 学校の先生が河川をテーマとして総合的な学習を行う際等に参考となる情報を発信するとともに、子どもの川あそび、自由研究等を支援

 

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