第II部 国土交通行政の動向 

2 交通分野のICT化

(1)公共交通分野のICT化
1)アジア域内におけるIC乗車券等の国際相互利用化
 「国土交通分野イノベーション推進大綱」の重点プロジェクトとして、訪日外国人旅行者及びアジア各国への日本人旅行者の利便性の向上や、移動の円滑化の確保を図り、アジア域内における人的交流を促進することを目的として、アジア各国の交通事業者等によって発行されるIC乗車券等のアジア域内における国際相互利用化の促進に取り組んでいる。
 
図表II-9-1-2 アジア域内におけるIC乗車券等の国際相互利用化

図表II-9-1-2 アジア域内におけるIC乗車券等の国際相互利用化

2)公共交通情報システムの整備
 災害・事故等の発生により公共交通機関の運休・遅延等が発生した際に、公共交通の全モードを網羅した総合的な運行情報を収集し、利用者へ迅速かつ正確に提供するためのシステムの構築に取り組んでいる。

(2)ITSの推進
 最先端のICTを活用して人・道路・車を一体のシステムとして構築する高度道路交通システム(ITS)は、高度な道路利用、ドライバーや歩行者の安全性、輸送効率及び快適性の飛躍的向上を実現し、さらに今日の自動車社会が抱える交通事故や渋滞、環境問題、エネルギー問題等の様々な社会問題の解決に大きく貢献することが期待される。また、ITSの進展は、自動車産業、情報通信産業等の関連分野における大規模かつ新たな市場形成も期待され、我が国経済におけるイノベーションを推進し、新しい価値を生み出す重要なツールとなる。
1)ITSの導入・展開
 (ア)ETCの普及促進と効果
 有料道路の料金所をノンストップかつキャッシュレスで通行可能なETCは、今や日本全国の有料道路ネットワークで利用可能であり、車載器のセットアップ台数は平成19年12月時点で約2,080万台を超え、高速道路での利用率は70%を超えている。これにより首都高速道路の本線料金所では渋滞がほぼ解消された。また、CO2排出削減等、環境負荷の軽減にも寄与している。さらに、スマートIC(注1)の設置等によりETCの活用の場が広がるとともに、有料道路以外においても駐車場での決済やフェリー乗船手続等への応用利用も可能となり、ETCを活用したサービスは多様化している。
 (イ)道路交通情報提供の充実と効果
 走行経路案内の高度化を目指した道路交通情報通信システム(VICS)対応のカーナビゲーションシステム(カーナビ)は、平成19年12月末で2,040万台が出荷されている。VICSにより旅行時間や渋滞状況、交通規制等の道路交通情報がリアルタイムに提供されることで、ドライバーの利便性が向上し、走行燃費の改善がCO2排出削減等環境負荷の軽減に寄与している。
 (ウ)地図情報等のカーナビ等への活用支援
 道路幅やカーブの大きさ等、道路構造上の情報を反映した「走りやすさマップ」のカーナビ等への活用について、官民共同研究を実施しており、実用化への先行的取組みとして平成19年4月から、インターネット路線検索システム「道路の走りやすさナビ」が九州地方で公開されている。
 (エ)バス事業におけるITSの活用
 平成19年度には、標準データ形式を活用した複数のバス事業者の路線に関する情報提供のあり方についての調査や、インターネット版バスマップの作成に向けた実証実験を行うなど、バス総合情報の電子化を推進している。
2)ITSに関する技術開発・実証実験
 (ア)ITSによる次世代道路サービスの開始
 カーナビ、VICS、ETC等個別の車載器で提供されていたサービスを一つの車載器(ITS車載器)で提供し、5.8GHz帯DSRC(注2)による高度な次世代道路サービスの機能を加えた、車両と路側機の間の通信を実現する新たなシステムが官民共同研究により開発された。
 (イ)走行支援道路システム(AHS)及び先進安全自動車(ASV)プロジェクトの推進
 平成19年5月から、首都高速道路においてスマートウェイ公道実験を開始し、ITS車載器を用いて前方障害物情報や合流支援情報等をリアルタイムにドライバーに伝える走行支援道路システム(AHS)を提供中である。
 また、ICT技術等の先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援する先進安全自動車(ASV)の開発・実用化・普及の促進に取り組むASVプロジェクトを推進している。
 さらに、「IT新改革戦略パッケージ」に基づき、交通事故を削減すべく、インフラ協調による安全運転支援システム(注3)を実用化するため、20年度に大規模実証実験を実施する予定であり、AHS及びASVプロジェクトも大規模実証実験に向けて取り組んでいる。
 
図表II-9-1-3 首都高速道路におけるスマートウェイ公道実験

図表II-9-1-3 首都高速道路におけるスマートウェイ公道実験
 
図表II-9-1-4 通信を利用した運転支援のイメージ(先進安全自動車(ASV))

図表II-9-1-4 通信を利用した運転支援のイメージ(先進安全自動車(ASV))

 (ウ)ナンバープレートの電子化
 「スマートプレート(電子ナンバープレート)」とは、自動車の登録番号等を記録したICチップを、ナンバープレート上に取り付けたものであり、それにより車両の電子的識別による偽変造防止や、環境対策等への活用が期待されている。


(注1)高速道路の本線やサービスエリア等から乗り降りができるように設置されるインターチェンジであり、通行可能な車両(料金の支払い方法)を、ETCを搭載した車両に限定している。利用車両が限定されるため、簡易な料金所の設置で済み、料金徴収員が不要なため、従来のインターチェンジに比べて低コストで導入できるなどのメリットがある。
(注2)「狭域通信」と呼ばれる、道路上での特定のスポット内で高速な双方向通信を実現する無線通信技術
(注3)車両からは直接見えない範囲の交通事象に対処すべく、車両がインフラ機器(路側設備や他車両に搭載された機器や歩行者が携帯する機器も含む)との無線通信により情報を入手し、必要に応じて運転者に情報提供、注意喚起、警報等を行うシステム

 

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