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国土交通白書 2020

第1節 我が国を取り巻く環境変化

■2 東京一極集中と地方への影響

(1)人口移動の状況

(都市圏別の人口移動の状況)

 1950年代以降の人口移動の動向を見ると、高度経済成長期には三大都市圏に流入していたが、1970年代に入ると、大都市圏への人口流入は沈静化した。大阪圏や名古屋圏では、1970年代半ばに転出超過注4に転じ、それ以降おおむね横ばいで推移している。東京圏については、バブル経済崩壊後の一時期を除いて、転入超過注5が続いている。2018年(平成30年)には転入超過が13.6万人となり、東京圏には日本の人口の29%を占める約3,700万人が住むなど注6、東京圏に人口が一極集中している(図表I-1-1-9)。2018年の東京都の出生率は1.20と全国最小であり、東京一極集中の結果、更に人口減少を加速させるおそれがある。

図表I-1-1-9 三大都市圏及び地方圏における人口移動(転入超過数)の推移
図表I-1-1-9 三大都市圏及び地方圏における人口移動(転入超過数)の推移

(東京圏への転入超過数)

 東京圏の年齢階層別転入超過数を見ると、20代(20~24歳・25~29歳の合計)の占める割合が最も大きい。2010年(平成22年)には、その割合は66%であったが、2018年には73%と拡大しており、20代の移動が東京圏の転入超過に大きな影響を与えていることがわかる(図表I-1-1-10)。

図表I-1-1-10 東京圏への年齢階層別転入超過数の推移
図表I-1-1-10 東京圏への年齢階層別転入超過数の推移

 また、東京圏への転入超過数を男女別に比較すると、2018年時点で男性が約5万8,000人、女性が約7万8,000人となっており、2009年以降は、女性の転入超過数が男性を上回る傾向にある(図表I-1-1-11)。さらに、女性の大学等への進学状況を見ると、1994年を境に、短大への進学率は減少し、4年制大学への進学率が上昇している。また、大学院への進学率も上昇しており、女性の高学歴化が進んでいる(図表I-1-1-12)。

図表I-1-1-11 東京圏への男女別転入超過数の推移
図表I-1-1-11 東京圏への男女別転入超過数の推移
図表I-1-1-12 女性の大学等への進学状況
図表I-1-1-12 女性の大学等への進学状況

 中小企業庁による調査である「中小企業の企業数・事業所数」(2016年6月時点)によると、大企業の50.8%が東京圏に所在している。また、第1期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に関する検証会(内閣府)において、学歴が高いほど大企業に就職する傾向があると言われており、東京圏には大企業が多く集まっていることも20代が東京に集まる要因の一つとなっているものと考えられる。

(東京圏とそれ以外の道府県別人口移動の動向)

 東京圏とそれ以外の道府県別人口移動に着目すると、2014年(平成26年)より全道府県で東京圏への転出超過が続いている。

 2018年の人口移動の動向を見ると、東京圏に加えて、愛知県、大阪府、福岡県では転入超過の状態であったが、その他の道府県では転出超過となっていた。また、道府県別に東京圏への転出超過数を見ると、北海道、石川県、山梨県、静岡県、京都府、沖縄県では、全転出超過数に占める東京圏への割合が90%を超えていることから、東京圏への転出が転出超過の主な要因であったことがわかる。他方、宮城県、茨城県、栃木県、群馬県、滋賀県、兵庫県、広島県では、全転出超過数より東京圏への転出超過数の方が多いことから、東京圏以外から人口の流入が発生していたことがわかる。また、転入超過であった愛知県、大阪府、福岡県の動向を具体に見ると、東京圏へ転出超過となっているものの、それ以上に近隣県を中心とした転入が多かった。このことから、東京圏への一極集中は続いてはいるものの、愛知県、大阪府、福岡県といった地域を核とする流れもある(図表I-1-1-13)。

図表I-1-1-13 道府県別転出超過数
図表I-1-1-13 道府県別転出超過数
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(2)地域交通の状況

(交通手段分担率の違い)

 地域ごとの交通手段分担率を見ると、三大都市圏では2015年(平成27年)に鉄道の利用割合が平日で28.5%、休日で16.3%と全国平均に比べ高く、自動車の割合は少ない。逆に、地方圏では鉄道の利用割合は平日で4.3%、休日では2.6%と低く、自動車の割合(運転・同乗を含む)は平日で約6割、休日では7割を超えるなど、非常に高い。地方圏では人口減少とモータリゼーションの進展によって、地域公共交通の衰退が問題となっている(図表I-1-1-14)。

図表I-1-1-14 地域別交通手段分担率
図表I-1-1-14 地域別交通手段分担率

(地域鉄道の現状)

 鉄道における輸送人員の推移を見ると、1990年代後半は減少が著しく、ピーク時に比べて約2割減少したが、その後2000年代は横ばいとなり2010年代では微増となっている(図表I-1-1-15)。1990年代は、全国において地域鉄道の廃止が一気に進み、そのため輸送人員が減少したものと考えられる。大都市近辺の地域鉄道は輸送密度が高く経常収益性も高い事業者が多いが、地域鉄道全体の7割以上は赤字を計上している。今後の人口減少も考慮すると、更なる地域鉄道路線の廃止や運行回数の減少等の厳しい状態が続くものと予想される。

図表I-1-1-15 地域鉄道の輸送人員の推移
図表I-1-1-15 地域鉄道の輸送人員の推移
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(営業用バス輸送量の推移)

 営業用バス(乗合・貸切)の都道府県別輸送量について、2000年(平成12年)と2018年を比較すると、全国では8.1%減少している。詳細に見ると、北海道の函館市を中心とするエリア、秋田県、徳島県では減少率が50%を超えている一方、首都圏では埼玉県が26.9%、千葉県が20.7%、東京都が13.3%の増加となり、京都府では7.0%、香川県では6.1%の増加となった(図表I-1-1-16)。地方部での営業バス輸送量の減少は、人口減少による利用者数そのものの減少と見られるが、都市部を中心とした増加は、近年のインバウンドの増加に伴う外国人旅行者の利用増加によるものと考えられる。地方においては今後、路線維持のための取組みを、事業者と自治体が一体となって進めることが必要となる。

図表I-1-1-16 営業用バス輸送量の推移
図表I-1-1-16 営業用バス輸送量の推移
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(3)高齢者による交通事故

(年齢層別の交通死亡事故件数)

 運転免許人口10万人当たりの交通死亡事故件数を見ると、2005年(平成17年)以降、すべての年齢層において減少傾向にあり、75歳以上の運転者においても、2005年の19.3件から2018年には8.2件に減少している。しかし、2018年の75歳以上の運転免許人口当たりの死亡事故件数は、75歳未満の運転者より約2.4倍多くなっている(図表I-1-1-17)。

図表I-1-1-17 年齢層別の交通死亡事故件数(運転免許人口10万人当たり)
図表I-1-1-17 年齢層別の交通死亡事故件数(運転免許人口10万人当たり)
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 高速道路における逆走事案を見ると、2011年から2018年に発生した1,690件のうち、66%が65歳以上の高齢運転者によるものとなっている。特に、75歳以上の逆走事案は全体の45%を占めており、免許保有者数は全体の7%であるにもかかわらず、その発生率は極めて高い(図表I-1-1-18)。

図表I-1-1-18 年齢層別の高速道路逆走事案件数
図表I-1-1-18 年齢層別の高速道路逆走事案件数
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(免許返納の増加)

 高齢者の運転免許証の自主返納件数は年々増加傾向にある。75歳以上の高齢運転者の自主返納を見ると、2009年(平成21年)に約28,000件であった件数は、2018年には10倍以上となる約292,000件に増加している(図表I-1-1-19)。

図表I-1-1-19 免許返納件数(申請による運転免許の取消件数)の推移
図表I-1-1-19 免許返納件数(申請による運転免許の取消件数)の推移
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 地方において鉄道やバス等の公共交通が衰退しつつある一方で、自動車の運転免許証を返納する高齢者は増加しており、その移動手段の確保の必要性が高まっている。

(4)空き家、空き地の状況

(全国の空き家数及び空き家率の推移)

 空き家のうち、「二次的住宅」や「賃貸用住宅」等の空き家注7について統計を始めた1978年(昭和53年)以降、空き家数・空き家率は共に増加を続けている。1998年には空き家率が10%を超え、10戸に1戸以上が空き家という状態が続いている。また、この空き家のうち「賃貸用又は売却用の住宅」は近年増加率が減少しているが、長期不在等により活用が見込まれない「その他の住宅」は増加傾向が続いている(図表I-1-1-20)。なお、空き家も含めた総住宅数と総世帯数は共に上昇傾向にあるが、総住宅数が総世帯数を上回っている状態が継続している。

図表I-1-1-20 全国の空き家数、空き家率の推移
図表I-1-1-20 全国の空き家数、空き家率の推移
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 また、市区町村別に空き家率を見ると、2018年は2003年に比べて全国的に空き家率が上昇している。また、東京23区や名古屋市等の都市部では空き家率が10%未満の市区町村が多い一方、地方では10%以上の市区町村が多く、都市部と比較して空き家率が高い傾向にある(図表I-1-1-21)。

図表I-1-1-21 市区町村別の空き家率
図表I-1-1-21 市区町村別の空き家率

(空き地の状況)

 地方圏は大都市圏に比べ空き地率が高くなっている(図表I-1-1-22)。また、空き地を所有する世帯の高齢化が進展している(図表I-1-1-23)。所有者の高齢化と人口減少による担い手不足により、今後、利用・管理されない土地が増えていく懸念がある。

図表I-1-1-22 世帯の所有する宅地等に占める空き地面積の割合(2013年)
図表I-1-1-22 世帯の所有する宅地等に占める空き地面積の割合(2013年)
図表I-1-1-23 世帯の年齢別空き地の所有面積の推移、平均年齢
図表I-1-1-22 世帯の年齢別空き地の所有面積の推移、平均年齢
  1. 注4 転入者数より転出者数が多い状態。
  2. 注5 転出者数より転入者数が多い状態。
  3. 注6 総務省「人口推計(2018年10月1日現在)」より
  4. 注7 空き家の種類は次の通り。二次的住宅(別荘や、残業で遅くなったときに寝泊まりするなど、たまに寝泊まりしている人がいる住宅)、賃貸用、売却用、その他(総空き家戸数から、二次的住宅・賃貸用住宅・売却用住宅戸数を除いたもので、長期不在の住宅などを示す)