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国土交通白書 2020

第1節 我が国を取り巻く環境変化

■7 グローバル化の進展

(1)世界と日本の経済成長

(世界経済の動向)

 世界経済の動向を見ると、1990年代は大半の国が景気拡大の局面にあったが、1997年(平成9年)に始まったアジア各国の急激な通貨下落(アジア通貨危機)や2001年のIT関連の企業株価の崩壊(ITバブルの崩壊)により、世界経済は同時に減速した。その後、新興市場・途上国の成長は著しく加速し、特に中国においては2000年前後から高成長していく。2008年にはリーマンショック・ドバイショックにより景気は大きく後退するものの、各国における景気対策により回復していった。その後、2012年にはギリシャの財政問題に端を発した欧州政府債務危機により景気減速の動きが広がりを見せていく。リーマンショック後の世界経済は、先進国が伸び悩む中で中国等の経済にけん引されてきたが、2015年頃からその勢いは減速し、全体として成長のスピードは緩やかに推移している(図表I-1-1-56)。

図表I-1-1-56 世界のGDP成長率推移
図表I-1-1-56 世界のGDP成長率推移
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 購買力平価GDP注33で世界の経済規模を見ると、2000年前半は全体で上向きに推移し特に中国は2001年から成長を続け2014年には米国を上回り世界1位となる。2016年中盤から上昇傾向が力強くなり、特に、欧州、日本、中国、米国で成長が加速した。しかしながら、我が国はインドに既に抜かれており、近年、英国やフランスよりもロシア、ブラジル、インドネシアの方が経済規模が大きくなっている。一方、実質的な国民の豊かさを表す「一人当たり購買力平価GDP」で見ると、中国は、2018年時点でも米国の半分に満たない(図表I-1-1-57)。

図表I-1-1-57 購買力平価GDPと一人当たり購買力平価GDP
図表I-1-1-57 購買力平価GDPと一人当たり購買力平価GDP
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(世界における日本経済)

 国や地域の生産性の高さの目安となる一人当たりの名目GDPの推移をランキングで見ると、日本は2001年(平成13年)に世界5位であったが、その後、順位を下げ2018年には20位となった。世界の名目GDPに占める日本の割合は2001年13%から2018年6%と低下している(図表I-1-1-58)。

図表I-1-1-58 一人当たりの名目GDPランキングと世界経済(名目GDP)に占める国・地域の割合
図表I-1-1-58 一人当たりの名目GDPランキングと世界経済(名目GDP)に占める国・地域の割合
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(2)世界の航空旅客の動向

(世界の航空旅客の成長)

 世界の航空旅客は2010年(平成22年)以降、世界景気の回復を追い風に利用者が増加し2017年には初めて40億人を突破した。地域別割合で見ると、日本を含めたアジア太平洋の航空旅客が全体に占める割合は、2001年23%から2018年には37%へ拡大し、その間の平均伸び率は8.7%と他の地域と比較して大きく、全体をけん引している(図表I-1-1-59)。

図表I-1-1-59 世界の航空旅客の推移
図表I-1-1-59 世界の航空旅客の推移
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(我が国と中国の動向)

 航空旅客数(国内線と国際線を含む)の動向を見ると、我が国の航空旅客数は、2001年(平成13年)から2016年にかけて1.1倍に増加しているが、中国は6.5倍と急激な伸びを見せている(図表I-1-1-60)。

図表I-1-1-60 航空旅客数(国内線+国際線)の推移
図表I-1-1-60 航空旅客数(国内線+国際線)の推移
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(3)世界の港湾の状況

 世界経済の中で、貿易は重要な位置を占めている。そのため、世界の港湾におけるコンテナ取扱個数は、世界経済の規模の拡大に伴って取扱量も増えていく。

 2001年(平成13年)のコンテナ取扱個数は2.4億TEU注34であったが、2009年の落ち込みを除き、2018年には約3倍の7.9億TEUとなるなど、増加を続けている。そのような中、我が国の港湾のコンテナ取扱個数は0.1億TEUから0.2億TEUと伸びてはいるものの、世界のコンテナ取扱個数に占める割合は下降傾向にある(図表I-1-1-61)。

図表I-1-1-61 世界の港湾におけるコンテナ取扱個数と日本の占有率の推移
図表I-1-1-61 世界の港湾におけるコンテナ取扱個数と日本の占有率の推移
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 国別コンテナ取扱個数について、詳細に2001年と2018年の比較で見ると、取扱量2位・3位の米国とシンガポールは約2倍の伸びに対し、1位の中国は約5倍へ大きな伸びを見せている。そのほか、韓国は約3倍、マレーシアも約4倍に伸び順位を上げているが、日本は増加したものの順位は4位から6位へと下げている(図表I-1-1-62)。

図表I-1-1-62 国別コンテナ取扱個数ランキング
図表I-1-1-62 国別コンテナ取扱個数ランキング
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 国別コンテナ取扱個数の動向については、船舶の大型化も影響している。グローバル化の進展、海上貿易量の増大、新パナマ運河の開通等を背景に、船舶は輸送効率を高めるために大型化が進んできた。2002年に、7,000TEU以上のコンテナ船が初めて就航して以降、大型船は増加し、2019年では8,000TEU以上のコンテナ船が全体の約半数を占めるようになっている。そのため、大型船舶の受入れが可能な諸外国への寄港が増えている。

(4)世界のインフラ需要の拡大

(世界のインフラ市場の推移)

 2007年(平成19年)から2017年の10年間の世界のインフラ需要を分野別に見ると、道路が全体の約3割から約4割を占めており、これに鉄道、航空、港湾を合わせると、全体の約4割から約5割となる。(図表I-1-1-63)

図表I-1-1-63 世界のインフラ需要(分野別)の推移
図表I-1-1-63 世界のインフラ需要(分野別)の推移
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 また、2017年のインフラ需要をエリア別に見ると、中国・アジアが全体の約半分を占めている(図表I-1-1-64)。

図表I-1-1-64 2017年の世界のインフラ需要(エリア別)
図表I-1-1-64 2017年の世界のインフラ需要(エリア別)

(我が国の海外インフラの受注)

 我が国のインフラ受注実績は、2010年(平成22年)の約10兆円から2017年には約23兆円へ受注額を伸ばしている。国土交通省関連分野の交通分野、基盤整備分野は、それぞれ2010年の約0.5兆円、約1.0兆円から、2017年は約1.7兆円、約2.9兆円に増加しており、全体の伸びと比べても高い伸びを示している(図表I-1-1-65)。

図表I-1-1-65 我が国のインフラ受注実績
図表I-1-1-65 我が国のインフラ受注実績

 我が国建設企業の海外受注については、2000年代にはアジアを基盤としつつ、北米や中東を中心に拡大していたが、2008年から2009年のリーマンショック・ドバイショックの影響等により落ち込んだ。その後、2010年代には、アジアや北米を中心に受注を伸ばし、1.5兆円を超える受注水準となり、2018年度には、過去最高となる1兆9,375億円となった(図表I-1-1-66)。

図表I-1-1-66 建設企業のインフラ受注実績の推移
図表I-1-1-66 建設企業のインフラ受注実績の推移
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  1. 注33 「ある時点における同一の商品・サービスは一つの価格」(一物一価の法則)を前提として自国通貨と他国通貨の購買力の比率から長期的な為替レートを求めたもの。各国の物価水準を感覚的に捉える上で、参考になる指標の一つ。
  2. 注34 twenty-foot equivalent unit 国際基準規格(ISO規格)の20フィート・コンテナを1とし、40フィート・コンテナを2として計算する単位