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国土交通白書 2020

第1節 社会構造に関する予測

■1 人口構造の変化

(1)地域別人口構造の予測

(人口減少・高齢化の進行)

 国立社会保障・人口問題研究の出生中位(死亡中位)推計注1(2017年推計)に基づく2050年(令和32年)の将来推計人口を見ると、我が国の出生数は2018年から28.6%減となる66万人まで減少し、総人口は2019年から19.2%減となる1億192万人まで減少することが予測されている。一方で、65歳以上人口は増加が続き、特に75歳以上人口は2019年から30.7%増の2,417万人となり、総人口に占める割合も14.7%から23.7%へと大幅に上昇することが予測されている(図表I-2-1-1、図表I-2-1-2)。

図表I-2-1-1 出生中位推計に基づく出生数の将来予測
図表I-2-1-1 出生中位推計に基づく出生数の将来予測
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図表I-2-1-2 我が国の人口推移の将来予測
図表I-2-1-2 我が国の人口推移の将来予測
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(東京圏への人口集中の加速)

 国立社会保障・人口問題研究所の「日本の地域別将来推計人口(2018年推計)」に基づき、都道府県別の人口について2015年(平成27年)から2045年にかけての増加率を見ると、東京都のみ0.7%増加するが、その他の道府県はいずれも減少することが予測されている(図表I-2-1-3)。また、東京圏の東京都以外の3県については、神奈川県は8.9%減、埼玉県は10.2%減、千葉県は12.2%減と全国平均(16.3%減)に比べると減少率は低い。この結果、東京圏への人口集中度注2は2015年の28.4%から2045年には31.9%へ上昇し、東京圏への一極集中が更に進行することが予測される。

図表I-2-1-3 都道府県別人口増加率の予測
図表I-2-1-3 都道府県別人口増加率の予測

(都市部への人口の集中)

 都道府県庁所在地における2015年(平成27年)から2045年にかけての人口増加率は、福岡市、東京都区部注3、さいたま市を除きマイナスとなることが予測されている。一方で、都道府県庁所在地の人口集中度注4について同期間の変化を見ると、札幌市が36.3%から45.1%へ上昇するのをはじめ、那覇市を除くすべての都道府県庁所在地において人口集中度は上昇する。このように大部分の都道府県において、都市部への人口集中が進むことが予測される(図表I-2-1-4)。

図表I-2-1-4 都道府県庁所在地の人口集中度の予測
図表I-2-1-4 都道府県庁所在地の人口集中度の予測

(65歳以上単独世帯の増加)

 我が国の世帯総数は現在まで増加が続いているが、人口減少の進行により、2025年(令和7年)前後をピークに減少に転じることが予測されている。一方で65歳以上の者を世帯主とする世帯は、2015年の1,918万世帯から2040年には2,242万世帯へと増加が続く。その中でも単独世帯(65歳以上単独世帯)の増加率が高く、2015年の625万世帯から2040年には896万世帯と43.3%の増加となり、65歳以上単独世帯が世帯総数に占める割合は2015年の11.7%から2040年には17.7%まで上昇することが予測されている(図表I-2-1-5)。

図表I-2-1-5 我が国の世帯数の予測
図表I-2-1-5 RNAV経路の一例(福岡空港到着経路)
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 65歳以上単独世帯の割合について都道府県別に見ると、2015年には高知県の17.3%が最も高く、ほかに15%を超えているのは鹿児島県と和歌山県のみであった。しかし、2040年にはすべての都道府県においてその割合が上昇し、滋賀県を除く46都道府県で15%を超えることが予測され、高知県の22.6%をはじめとして8道府県において20%を超える見通しとなっている(図表I-2-1-6)。

図表I-2-1-6 世帯総数に占める65歳以上単独世帯割合の予測(都道府県別)
図表I-2-1-6 世帯総数に占める65歳以上単独世帯割合の予測(都道府県別)

(2)変化する人口構造が社会に及ぼす影響

(生産年齢人口の減少)

 これまで見たように今後人口減少が進行していく中でも、生産年齢人口は大きく減少することが見込まれ、労働力人口の不足が懸念される。特に人口5万人クラス都市注5においては、2015年(平成27年)の962万人から2045年には515万人と約46%の減少が見込まれており、小規模な市町村において生産年齢人口の減少が顕著となっている(図表I-2-1-7)。

図表I-2-1-7 人口5万人クラス都市の年齢別人口推移の予測
図表I-2-1-7 人口5万人クラス都市の年齢別人口推移の予測

(就業者数の減少)

 第1章第1節3に示すとおり、女性や65歳以上の者の就業率上昇等により近年の就業者数は増加傾向にある。しかし、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)の推計注6によると、就業者数は今後減少していくことが予測されている。20~64歳女性や65歳以上の者の就業率が引き続き上昇した場合においても、就業者数は2020年(令和2年)の6,565万人をピークに減少に転じ、2040年には6,024万人まで減少することが見込まれる(図表I-2-1-8)。
図表I-2-1-8 就業者数と就業率の予測
図表I-2-1-8 就業者数と就業率の予測
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 JILPTによる就業者数の予測について、2017年から2040年にかけての変化を産業別に見ると、運輸業では324万人から313万人、飲食店・宿泊業でも333万人から307万人への減少にとどまるが、鉱業・建設業においては493万人から288万人へと41.6%の減少が見込まれている(図表I-2-1-9)。特に建設業では労働力の不足が懸念され、幅広い年代における担い手の確保や生産性の向上が必要であると考えられる。
図表I-2-1-9 産業別就業者数の予測
図表I-2-1-9 産業別就業者数の予測
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(空き家の増加)

(1)(65歳以上単独世帯の増加)で見たように、世帯数は2025年(令和7年)前後から減少に転じる見通しとなっている。世帯数が減少した場合、総住宅数も減少しなければ空き家数は増加していくこととなるが、(株)野村総合研究所の推計によると、我が国の総住宅数は増加が続き、2033年に7,107万戸となる。この結果、既存住宅の除却や住宅用途以外への有効活用が進まなければ、2013年に820万戸であった空き家数は2033年には2,147万戸に増加し、空き家率は同様に13.5%から30.2%へ上昇することが予測されている(図表I-2-1-10)。空き家が増加すると、防災・防犯機能の低下や、衛生・景観の悪化といった問題が発生することが懸念される。今後、空き家の増加を防ぐために、空き家の除却や有効活用等の対策を進めていく必要がある。
図表I-2-1-10  空き家と空き家率の予測
図表I-2-1-10  空き家と空き家率の予測
  1. 注1 出生中位は長期の合計特殊出生率が1.44、死亡中位は長期の平均寿命が男性84.95年、女性91.35年と仮定されている。
  2. 注2 全国に占める東京圏の人口割合
  3. 注3 ここでは東京都庁所在地を新宿区ではなく東京都区部(東京23区)としている。
  4. 注4 当該都道府県に占める当該市の人口割合
  5. 注5 三大都市圏、県庁所在都市を除く、人口5万人未満の市町村。
  6. 注6 本推計では経済成長と労働参加について3つのシナリオに基づきシミュレーションを行っているが、ここでは経済成長と労働参加が進むシナリオについて取り上げる。