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国土交通白書 2020

第1節 社会構造に関する予測

■2 老朽化インフラの増加

(1)増え続ける老朽化インフラ

(老朽化インフラの増加)

 我が国のインフラは、その多くが高度経済成長期以降に整備されており、今後、建設から50年以上経過する施設の割合は加速度的に増加する見込みである。このため、国民の安全・安心や社会経済活動の基盤となるインフラの維持管理・更新を計画的に進めていく必要がある。

 例えば、全国約72万の道路橋梁については、建設後50年を経過する施設の割合注7は、2019年(令和元年)3月時点では27%であったが、2029年3月には52%へと急増することが予想されている(図表I-2-1-11)。現在、全国の橋梁について、市区町村が管理する橋梁が66%、都道府県・政令市等が管理する橋梁が26%と、地方公共団体が全体の9割以上を管理している。また、全国約1.1万の道路トンネルについても、地方公共団体がその約7割を管理している。このように、今後、地方公共団体は、老朽化する大量の橋梁やトンネル等のインフラを維持管理・更新していく必要がある。

図表I-2-1-11 建設年度別橋梁数
図表I-2-1-11 建設年度別橋梁数

 この他、建設後50年以上経過する施設の割合は、約5千ある港湾岸壁注8については、2018年3月時点では約17%であるが2033年3月時点では約58%に(図表I-2-1-12)、また、水門など約1万ある河川管理施設注9については、2018年3月時点では約32%であるが、2033年3月時点では約62%になると予測されているなど、様々なインフラの老朽化が急速に進展する。

図表I-2-1-12 建設年度別港湾施設数
図表I-2-1-12 建設年度別港湾施設数

(2)インフラを担う人材の不足

(建設業の担い手不足)

 老朽化するインフラが急増する中で、適切な維持管理を行うためには、効率的な点検や修繕等を実施する建設就業者の確保が必要となるが、2018年度(平成30年度)では、2017年度に比べて2万人の人材が減少している。これに加えて時間外労働の上限規制の適用を見据えて労働時間は製造業を下回る水準まで縮減すると、2万人の人材減少分と合わせて、2023年までに18万人程度の人材確保が必要となる。一方で、新たな在留資格以外の外国人の入職を含めても、2023年までに更に3万人程度の人材が減少する見込みである注10。よって、これらを合わせると2023年までに21万人の人材不足を埋める必要がある。これに対し、生産性向上(年1%)により16万人程度の人材確保の効果と、新規学卒者の入植促進等により1.5万人、新たな在留資格の外国人の受入数を3.5万人程度の人材確保が必要と想定している(図表I-2-1-13)。

図表I-2-1-13 建設業における人手不足の将来見通し
図表I-2-1-13 建設業における人手不足の将来見通し

 老朽化対策における生産性向上のためには、点検の効率化やデータの整備・利活用、修繕における新技術・新材料の活用などが必要である。国土交通省では、NETIS(New Technology Information System)注11等によりこれらの技術を評価し、積極的に現場への適用を行っていくこととしている。

  1. 注7 建設年度不明の約23万橋については、割合の算出に当たり除いている。(2017年度集計)
  2. 注8 建設年度不明岸壁の約100施設については、割合の算出に当たり除いている。(2017年度集計)
  3. 注9 国管理の施設のみ。建設年度が不明な約1,000施設を含む。(50年以内に整備された施設についてはおおむね記録が存在していることから、建設年度が不明な施設は約50年以上経過した施設として整理している。)(2017年度集計)
  4. 注10 コーホート法(直近5年(2012年~2017年)の各年齢層における技能労働者数の変化率が将来にわたって維持されるものと仮定して、将来の各年齢層の建設技能者数を推定する手法)による推計。
  5. 注11 国土交通省が運営する、民間事業者等により開発された有用な新技術を公共工事等で積極的に活用するためのデータベース。