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国土交通白書 2020

第2節 持続可能なインフラメンテナンスサイクルの実現のために

■1 将来予測に基づく課題

(1)老朽化の進行

(老朽化インフラの増加)

 高度経済成長期以降にその多くが整備された社会インフラについて、建設後50年以上経過する施設の割合は、2033年(令和15年)時点では道路橋で約63%、トンネルで約42%と見込まれており、その割合は増加傾向にある(図表I-3-2-1)。

図表I-3-2-1 建設後50年以上経過するインフラの割合
図表I-3-2-1 建設後50年以上経過するインフラの割合

(インフラの点検結果)

 橋梁等の道路構造物においては、2014年(平成26年)に「定期点検要領」を策定し、その中で橋やトンネル等の構造物について、5年に1回、近接目視を基本とする点検方法を規定するとともに、健全性の診断結果を4つの区分(I健全、II予防保全段階、III早期措置段階、IV緊急措置段階)に分類した。2018年度までに、全橋梁の99.9%に対して点検が実施された。2018年度末時点で、判定区分がIIIと判定された橋梁は10%、IVと判定されたものは0.1%であり、判定区分III、IVと判定された橋梁のうち修繕に着手された割合は、国管理が53%、高速道路会社管理が32%、地方公共団体管理が20%であった(図表I-3-2-2)。

図表I-3-2-2 橋梁における修繕着手率
図表I-3-2-2 橋梁における修繕着手率
 また、点検は河川管理施設や港湾施設など幅広い分野で行っており、早急に補修が必要な設備を要緊急対策施設として対応を進めている。具体的には、点検を行った河川堤防約14,300kmのうち約3,600km(2020年3月31日時点)、砂防設備約83,000基のうち約3,000基(2020年3月31日時点)、海岸堤防等約5,900kmのうち約780km(2019年3月31日時点)、港湾58,839施設のうち10,178施設(2019年3月31日時点)などの施設が要緊急対策施設であることが判明している。これらのインフラへの対策を早期に実施し、機能を回復させ、後述する予防保全型のインフラメンテナンスへと本格的に転換することが求められる(図表I-3-2-3)(図表I-3-2-4)。
図表I-3-2-3 老朽化インフラの一例
図表I-3-2-3 老朽化インフラの一例
図表I-3-2-4 早期に対策が必要な施設
図表I-3-2-4 早期に対策が必要な施設

(2)技術者の減少

(技術者の減少)

 第2章第1節2に示すとおり、建設就業者は、新たな在留資格以外の外国人の入職を含めても2023年(令和5年)までに3万人の人材が減少すると推計されている。建設就業者を確保する取組みをしなければ、今後、インフラの適切な維持管理が困難となる恐れがある。市町村のインフラの維持管理に関わる地方公共団体の土木部門の職員数は2005年度から2018年度の間で約14%減少している(図表I-3-2-5)。さらに、東京一極集中や人口減少、少子高齢化(生産年齢人口の減少)により、今後さらなる職員数減少のおそれがある。
図表I-3-2-5 市町村における職員数の推移(市町村全体・土木部門)
図表I-3-2-5 市町村における職員数の推移(市町村全体・土木部門)