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国土交通白書 2020

第3節 地域における移動手段を確保するために

■3 近年の取組み

(1)国土交通省における取組み

(事業者同士の連携)

 収益の厳しい乗合バス事業者においては、事業者同士が連携し経営力の強化等を図ることが有効であると考えられるが、私的独占禁止法の規制に抵触するおそれがあった。こうした中、2020年(令和2年)5月、乗合バス及び地域銀行に関する独占禁止法の特例法注4が公布された。本特例法により、乗合バス事業者は将来にわたって地域における基盤的サービスの提供を維持するため、国土交通大臣の認可を受けた場合に合併や共同経営の円滑な実施が可能となり、利用者にとっては交通サービスの維持に加え、利便性の向上も期待される。

(持続可能な運送サービスの確保)

 公共交通サービスの維持・確保が厳しさを増している中、高齢者の運転免許の返納が年々増加し、受け皿としての移動手段を確保することが、ますます重要な課題になっている。

 このため、地域のニーズにきめ細やかに対応できる市町村等が、地域交通に関するマスタープランとなる計画を策定した上で、公共交通の改善や移動手段の確保に取り組んでいくことができる仕組みを盛り込んだ「持続可能な運送サービスの提供の確保に資する取組を推進するための地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」が2020年(令和2年)6月に公布された。

 本法改正により、例えば過疎地等で市町村等が行う自家用有償旅客運送において、バス・タクシー事業者がノウハウを活用して協力する制度を創設し、実施を円滑化すること等が可能となる。市町村等とバス・タクシー事業者の双方にとってメリットがあるほか、利用者にとっても安全、安心な交通サービスの提供を受けられるなどの効果が期待される。

(2)地方における取組み

 高松市では、高松琴平電気鉄道㈱の鉄道事業とバス事業とが一体となり、持続可能な公共ネットワークの再構築を、一定のサービス水準を維持しながら実現している。

 以前までは、鉄道とバスが市の中心街に同時に向かうなど平行して運行する区間が多く存在したことで、鉄道とバスともに利用者数が減少し、サービス水準の低下が見られた。このような中、高松市が策定した計画に基づき、鉄道とバスとの接点区間を見直し、中心街には「まちなかループバス」を走らせるなど、公共交通ネットワークを再構築した(図表I-3-3-7)。また、2005年(平成17年)より地方鉄道としては先駆けてICカード(IruCa)を導入しており、2014年からは「鉄道・バス乗継割引拡大制度」を実施し、交通機関の利用状況を市と琴電が共有するなど、官民連携による公共交通の利用促進を行った。その結果、鉄道とバスの1日当たりの利用者数が増加するなど、まちににぎわいをもたらしている。

図表I-3-3-7 高松市の公共交通ネットワーク再構築
図表I-3-3-7 高松市の公共交通ネットワーク再構築
  1. 注4 地域における一般乗合旅客自動車運送事業及び銀行業に係る基盤的なサービスの提供の維持を図るための私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の特例に関する法律(令和2年法律 第32号)