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国土交通白書 2020

第9節 土地政策の推進

第9節 土地政策の推進

 土地政策は、高度成長期からバブル期にかけては、地価高騰による住宅取得の困難化、社会資本整備への支障等の当時の社会的問題への対応を背景に、投機的取引の抑制等により地価対策を図ることが主眼であり、平成元年に制定された土地政策の基本理念を示す土地基本法も、それに対応するものであった。しかしながら、現在直面する課題は、土地基本法制定後30年余りを経て、大きく変容している。すなわち、バブル崩壊、その後の長期にわたる地価の下落、グローバル化の進展など経済社会の構造変化等を経て、今日、人口減少、少子高齢化に伴う土地利用ニーズの低下、地縁・血縁関係の希薄化、大都市への人口移動等を背景とした土地の所有意識の希薄化等により、資産としての「土地」に対する国民の意識に変化が生じている。これらの変化は、不動産登記簿などの公簿情報等を参照しても所有者の全部又は一部が直ちに判明せず、又は判明しても所有者に連絡がつかず、円滑な土地利用や事業実施の支障となる土地、いわゆる「所有者不明土地」や、適正な利用・管理がなされないことで草木の繁茂や害虫の発生など周辺に悪影響を与える管理不全の土地の増加につながっている。

 政府においては、所有者不明土地問題について、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」において取り上げる等、重要課題として取り組んで来ている。平成30年には、所有者不明土地の公共的目的での円滑な利用を実現するための「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」が制定された。

 さらに、残された課題である所有者不明土地の解消・発生抑制については、「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」(令和元年6月14日所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議決定)において、関係行政機関の緊密な連携の下で推進し、令和2年までに必要な制度改正を行うことを目指すこととされた。

 国土交通省においては、同基本方針や、国土審議会における調査審議を踏まえ、適正な土地の利用及び管理を確保する施策を推進するため、土地基本法について、法全般で土地の適正な「利用」「管理」の確保の必要性や土地所有者等の土地の適正な「利用」「管理」に関する責務(登記等の権利関係や境界の明確化)を明示し、国・地方公共団体の講ずべき施策について土地の適正な「利用」「管理」を促進する観点から見直すこととした。また、地籍調査の円滑化・迅速化を図るため、国土調査法等の改正により、新たな十箇年計画の策定とあわせて、調査手続の見直しや地域特性に応じた効率的調査手法の導入等を行うこととした。これらの内容を盛り込んだ「土地基本法等の一部を改正する法律案」が第201回国会に提出され、同法は、2年3月27日に成立した。

 今後は、新たな土地基本法において創設された土地基本方針の策定を通じ、同法に示された土地政策に関する基本的考え方をより具体化し、政府全体の取組みの方向性を示すことにより、各個別施策の整合性や連携の確保を図り、土地政策全体の施策の実効性を高めることとしている。

 2年5月に閣議決定された土地基本方針においては、現在直面している課題に対応した新たな土地政策として、1)土地の利用及び管理に関する計画の策定等に関する基本的事項としての防災対策等とも連携した地域の持続可能性を高める立地適正化計画の策定の促進、2)適正な土地の利用及び管理の確保を図るための措置に関する基本的事項としての低額な低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の100万円特別控除やランドバンクの取組みによる低未利用土地の利用・管理の促進、周辺に悪影響を与える管理不全の土地の適正な管理に向けた対策の推進、所有者不明土地法の円滑な施行や民事基本法制の見直し等による所有者不明土地の円滑な利用及び発生抑制・解消の促進、3)土地の取引に関する措置に関する基本的事項としての投資環境整備等による不動産投資市場の活性化、4)土地に関する調査の実施及び情報の提供等に関する基本的事項としての地籍調査の円滑化・迅速化及び不動産登記情報の最新化による土地の境界及び所有者情報の明確化等、政府全体の施策について記載されており、こうした施策について関係省庁間で緊密に連携して、より一層効果的な取組みを進めていく。