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国土交通白書 2020

第1節 インフラシステム海外展開の促進

■2 国土交通省における取組み

 国土交通省では、政府を挙げて取り組んでいる質の高いインフラの海外展開について、国土交通分野の関係者と情報・戦略を共有し、官民一体となった取組みを進めるため、「国土交通省インフラシステム海外展開行動計画」を策定し、毎年改定してきた。平成31年3月の改定による「行動計画2019」では、1)「川上」から「川下」までのすべての段階を通した政府の関与の強化、2)我が国企業がプロジェクトに参入しやすい環境構築に向けた政府の取組み、3)我が国企業の競争力強化に向けた取組み、4)プロジェクト獲得後の継続的関与に向けた取組みの4つを基本的な方針として以下のとおり各種施策を推進している。

(1)「川上」から「川下」までのすべての段階を通した政府の関与の強化

 我が国企業が受注を獲得する案件を増やすため、案件形成前の「川上」から、施設の維持・管理や運営等の「川下」まで全ての段階を通して政府の関与を強化する。このため、国土計画やマスタープラン等の「川上」段階の計画策定から積極的な関与、我が国の強みである「質の高いインフラ」、すなわち施設の維持管理まで含めたライフサイクルコストが低廉であり、使いやすく長寿命なインフラを提供するのみならず、納期を遵守し、環境・防災面へも配慮し、将来的に現地の人材で運営できるよう人材育成も併せて行う等のコンセプトを明確にした情報発信、「川上」から「川下」まで各段階での人材育成等を実施していく。

(2)我が国企業がプロジェクトに参入しやすい環境構築に向けた政府の取組み

1)トップセールスの推進

 令和元年度において、国土交通大臣は、インドネシア、ミャンマー、シンガポール等計8箇国を歴訪し、国土交通分野を担当する閣僚との協議・意見交換を行うことにより、我が国インフラシステムのトップセールスに取り組んだ。また、国土交通副大臣・大臣政務官においては、エチオピア等20箇国を訪問し、インフラニーズの見込める国に対して、我が国インフラシステムのアピールを行った。このほか、諸外国の大臣等要人の来日・表敬といった機会、セミナーの開催等を通じ、我が国インフラシステムの優位性に関する発信に積極的に取り組んだ。

2)チームジャパンの確立~独法等の知見の活用による官民一体となった海外展開~

 インフラの開発・整備については現地政府の影響が強く、民間企業のみでは現地政府との連携や調整に限界がある。また、民間企業には大規模都市開発のマスタープランや水資源開発の事業計画の策定、高速鉄道の整備、空港・港湾等の運営等のノウハウが不足しており、専門分化している日本企業のコーディネート役の不在も課題とされてきた。このため、独立行政法人等の公的機関に対し、その中立性や交渉力及び国内業務を通じて蓄積してきた技術やノウハウを活用して海外業務を行わせることにより、我が国民間企業の海外インフラ展開を促進することを目的とした「海外社会資本事業への我が国事業者の参入の促進に関する法律」が平成30年8月に施行された。

 本法に基づく取組事例として、令和元年7月、モンゴルに円借款で建設している新ウランバートル国際空港の運営事業について、成田国際空港株式会社を含む日本企業連合がモンゴル政府との合弁会社を通じて15年間の空港運営に参画する契約を締結した。また、同年10月、独立行政法人都市再生機構はオーストラリアの西シドニー新空港周辺開発計画について、ニューサウスウェールズ州西シドニー空港都市局とアドバイザリー契約を締結し、日本国内で蓄積してきた大規模都市開発や公共交通指向型開発等に関する知見に基づき、まちづくり実現に向けた計画策定等の助言を行っている。

3)増加するPPP案件への対応

 世界の膨大なインフラ需要を公共投資だけで賄うことは困難であることや、新興国の中には対外債務に消極的な国もあることから、民間資金を活用する官民連携(PPP:Public-Private Partnership)への期待が高まっている。しかしながら、PPPプロジェクトを円滑に進めるための法制度が未整備であったり、相手国政府に官民の適正なリスク分担に対する理解が不十分な場合もあることから、政府としても相手国政府に環境整備を働きかけていく。

 とりわけ交通・都市開発分野のプロジェクトは、初期投資が大きく資金回収までに長い期間を要することに加えて、政治リスク、需要リスク等の様々なリスクが存在するため、民間だけでは参入が困難なケースも見られる。このようなリスクを軽減し、出資や人材派遣等により事業参画を行う、我が国初のハンズオンのインフラファンドとして設立されたのが、株式会社海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)である。JOINは令和元年度中に、港湾、都市開発、鉄道、道路及び物流分野において7案件の支援決定(国土交通大臣認可)を行ったところである。令和2年度は、財政投融資計画において1,210億円(産業投資604億円、政府保証606億円)を計上しており、引き続き、JOINを積極的に活用していく。

(3)我が国企業の競争力強化に向けた取組み

 インフラシステムの仕様を定めるに当たっては、質の高さを維持しながらも、相手国の実情に合わせて柔軟に対応し、コストを削減する工夫の余地を残すことが望ましい。我が国のコンサルタントにはこれに対応できる提案力強化が重要であることから、その努力を促していく。また、我が国企業がコスト削減のために相手国ローカル企業と協業したり、第三国市場に展開するために当該国に強みのある外国企業と補完的連携をしたり、あるいは中堅・中小企業が海外展開する取組みを支援するため、現地企業とのマッチングの機会を提供している。我が国技術の優位性を維持するため、AIやIoT、ビッグデータを活用した新技術の海外展開に取り組むとともに、我が国のインフラに係る技術や知見の国際標準化に取り組んでいる。

(4)プロジェクト獲得後の継続的関与に向けた取組み

 インフラの事業プロセス全般にわたって我が国が継続的に関与することが重要であり、施設の運営・維持管理(O&M)といった「川下」段階への参画、特に技術移転や人材育成を促進している。

 海外で事業展開する企業のトラブル等の解決を支援するために相談窓口「海外建設・安全対策ホットライン」の活用や、最新の地域情勢や危機管理対策に関する情報を提供するための「海外安全対策セミナー」の開催、海外建設・不動産市場データベース等を通じた諸外国における建設・不動産市場に関する最新情報の発信、相手国における持続的なインフラの運営・維持に資する技術者・技能者層の育成支援等の取組み等、我が国企業のインフラシステム海外展開を多角的に支援する取組みを行っている。

(5)各国・地域における取組み

 上記の取組み以外にも、各地域・国との間でインフラシステム海外展開を促進する対話、協力等に取り組んでいる。令和元年度の取組みは下記のとおりである。

1)ASEAN地域

 巨大な単一市場の実現に向け平成27年末に発足したASEAN経済共同体(AEC)においては、地域の連結性強化等による経済発展が重視されており、今後ヒト、モノ等の流れがより活発になってくることが予想される。また、ASEANはアジア地域においても最も我が国建設企業が多く進出しており、堅調な海外売上高を維持していることから、引き続き我が国企業の重要な市場の一つである。

 こうした中、ASEAN諸国から依然として多くの制度整備支援要望が寄せられていることを踏まえ、昨年度に引き続き、令和元年7月、土地・建設関連制度の整備普及を担うことができる人材育成促進を目的に、関連制度の講義や現地視察をカリキュラム化した第3回目の「建設産業政策プログラム」を東京にて実施しASEAN諸国等10箇国から10名の行政官が参加した。

(ア)インドネシア

 令和元年5月、ジャカルタ中心部における複合施設等の管理・運営事業へ本邦企業が参画することに対し、JOINが出資により支援することを認可(国土交通大臣認可)した。

 同年9月から令和2年3月にかけて、インドネシア・バンドン市水道公社と共同で、クラウドGISを活用した下水管路情報テ゛ータヘ゛ース構築に関する現地実証事業(WOW TO JAPANプロジェクト)を実施した。

 同年11月、日本において第10回日インドネシア交通次官級会合を開催し、両国間の交通分野おける重要な協力案件である鉄道、港湾、航空分野等について、課題に対する解決策や今後の協力の方向性等の意見交換を行い、今後もインフラ建設等のハード面と制度構築・人材育成といったソフト面において両国間で緊密な協力・連携を図っていくことを確認した。

 同年12月には、赤羽国土交通大臣がインドネシアを訪問し、バスキ公共事業・国民住宅大臣及びブディ運輸大臣と会談を行い、水・防災、港湾、道路、鉄道等の分野における両国間の協力プロジェクトの現状認識や課題について議論を行うとともに、国土交通省とインドネシア公共事業・国民住宅省間で社会資本整備に関する協力覚書注1を締結した。

 令和2年2月、インドネシアにおいてインフラメンテナンスセミナーを開催し、セミナーでは道路分野を中心としたインフラメンテナンスをテーマに、日本政府の取組みと日本企業の技術・サービスをプレゼンするとともに、インドネシアにおけるインフラメンテナンス事業への参画・協働に向けたネットワーク構築を支援した。また、同月、不動産分野における相互理解の促進や我が国企業の更なる進出の支援等を目的として、ソフィヤンインドネシア土地空間計画大臣等出席の下、「日・インドネシア ジャカルタ首都圏不動産開発セミナー」を開催し、両国不動産企業間のビジネスマッチングを行った。

 同年3月、ジャカルタ及びマカッサルにおける高速道路運営事業へ本邦企業が参画することに対し、JOINが出資により支援することを認可(国土交通大臣認可)した。

(イ)カンボジア

 平成29年度及び30年度の2箇年度にかけて、国土整備・都市化・建設省に対し建設法の策定支援を行い、令和元年11月3日に建設法が施行された。

(ウ)シンガポール

 令和元年12月、赤羽国土交通大臣がシンガポールを訪問し、コーインフラ統括兼運輸大臣と会談を行い、港湾、航空分野をはじめとした国土交通分野における両国間の協力を引き続き進めていくことを確認した。

(エ)タイ

 バンコク首都圏鉄道レッドラインの初編成車両がタイに到着し、令和元年11月、到着式典を開催した。

(オ)フィリピン

 令和元年12月に貿易産業省との間で建設関連分野における相互理解の促進や我が国企業のプレゼンスの向上等を目的として、「日本・フィリピン建設会議」を開催した。また、平成29年11月に貿易産業省と締結した建設人材の育成に関する覚書に基づき実施している現地建設人材の育成事業を継続して実施した。さらに、我が国中堅・中小建設企業の海外展開の促進に向けて、フィリピンの工科系大学の卒業生を対象とした合同就職説明会(Job Fair)も開催した。

(カ)ベトナム

 令和元年7月に、第11回ベトナム高速道路セミナーを、同年9月にベトナム高速道路セミナー・舗装研究部会の研究チームワーキングを、それぞれベトナムにおいて開催し、意見交換を実施した。

 また、同年11月には、中堅・中小建設企業のベトナム進出に向けた、ネットワーク構築や人材の育成・確保の観点から、ハノイ及びホーチミンに訪問団を派遣した。両都市において、工科系大学生を対象とした合同就職説明会(Job Fair)を開催し、多くの学生が来場した。ハノイにおいては、現地建設企業とのビジネスマッチングを開催し、事業展開のためのパートナー関係の構築を図った。

 同年12月、建設省との間に締結している下水道分野に関する協力覚書(平成29年4月更新)に基づき下水道分野に関する第13回政府間会議を実施した。

 令和2年1月、国土交通省とベトナム農業農村開発省は、相手国の防災課題と日本の防災技術をマッチングさせるワークショップ「防災協働対話」について取り組みを継続し、さらに充実した議論を行うべく、大臣間の覚書を締結した。

 同年3月、ホーチミン市における集合住宅、商業施設等を整備する都市開発事業へ本邦企業が参画することに対し、JOINが出資により支援することを認可(国土交通大臣認可)した。

 我が国の土地評価制度の導入に向けた調査およびパイロット事業を、令和元年度にハイフォン及びホーチミンにおいて実施した。

(キ)マレーシア

 令和元年5月、工藤国土交通大臣政務官がマレーシアを訪問し、ダム再生や3L水位計注2等の我が国の技術についてトップセールスを行うとともに、水防災・水資源分野における両国の協力関係をより一層強化していくことを確認した。

 また、同年6月、ゼイビア大臣による石井大臣への訪問により、マレーシアのダム安全・再生等への関心を確認するとともに、ワークショップ等により両国の技術連携の可能性を探ることで一致した。

 これらを受けて、同年10月、「ダム安全に関する防災協働対話」を開催し、ダムの点検・再生、3L水位計等の分野における日本の技術・知見を共有する等、両国の協力を継続していくことを確認した。

 さらに地下水管理についても、同月、「日・マレーシア地下水管理に関する共同ワークショップ」を開催し、地下水管理に関して、我が国の知識と技術の共有の重要性とマレーシアのニーズに合わせた地下水管理分野での協力を継続していくことを確認した。

 令和2年1月には、和田国土交通大臣政務官がマレーシアを訪問し、カマルディン運輸副大臣と会談を行い、我が国の交通運輸分野における質の高いソフトインフラ(先端技術、制度・基準、運営・運用ノウハウ、人材育成等)及びMaaSが、マレーシアにおける安全で効率的な交通運輸ネットワークの構築に大きく貢献できることを説明した。また併せて、和田国土交通大臣政務官出席の下、我が国の交通運輸分野におけるソフトインフラを幅広く海外展開するため「日マレーシア交通運輸技術連携セミナー」を開催した。本セミナーには、両国の政府関係者や民間企業など100名超が参加し、活発な意見交換が行われた。

(ク)ミャンマー

 令和元年6月、篠原国土交通審議官がミャンマーを訪問し、ティラワ港(フェーズ1)グランドオープン式典に出席した。

 同年7月、阿逹国土交通大臣政務官がミャンマーを訪問し、日本から供与した旅客船の供与式典にも出席したほか、政府要人と鉄道、港湾、航空等の分野における政策課題について協議を行った。

 同年10月から令和2年3月にかけて、ミャンマー政府等と共同で、排水ポンプ車を活用した局所的な浸水対策に関する現地実証事業(WOW TO JAPANプロジェクト)を実施した。

 同年12月、赤羽国土交通大臣がミャンマーを訪問し、タン・スィン・マウン運輸・通信大臣及びハン・ゾウ建設大臣と会談を行い、港湾、空港、鉄道、住宅・都市開発、道路等の分野における政策課題について協議するとともに、両国間の協力関係を一層強化するため、ミャンマー運輸・通信省との間で、航空分野及び港湾分野に関する協力覚書を締結した。さらに、住宅・都市開発分野に関し、日本企業・団体の参加を得てミャンマー建設省との意見交換会を開催するとともに、独立行政法人都市再生機構と建設省との覚書の署名に立ち会った。

 令和2年3月、ヤンゴン・ヤンキン地区における複合施設の建設・運営事業へ本邦企業が参画することに対し、JOINが出資等により支援することを認可(国土交通大臣認可)した。

2)南アジア

(ア)インド

 令和元年6月の日印首脳会談において、両首脳はムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業の成功に向け、事業の進捗を確認し、事業の着実な進展を図ることで一致した。

 また、同月、阿達国土交通大臣政務官はインドを訪問し、現地鉄道関係者との意見交換、ムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業の建設予定地等の視察を行った。同年10月に「第11回都市開発に関する日印交流会議」を開催し、水環境、都市開発、都市交通等について、意見交換を実施した。

 また、水分野の協力を強化することを目的として、同年12月、国土交通省水管理・国土保全局とインド水活力省水資源・河川開発・ガンガ再生局の間で協力覚書を締結した。

 令和2年1月、東京において「第6回日印道路交流会議」を開催し、山岳地域における斜面対策及び道路構造物の建設・維持管理等について意見交換を実施した。

(イ)バングラデシュ

 平成31年3月にPPP庁との間で開催した第3回日バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォーム会合の結果を踏まえ、第4回会合の早期開催も見据えつつ、政府間協力のもとで案件形成が行われている各種プロジェクトの実現に向けて取り組んでいる。

3)米国

 米国とは平成29年4月に日米経済対話が開始され、令和2年1月には、日米貿易協定が発効するなど、様々な分野で関係が強化されている。

 特にインフラ分野においては、日米協力の象徴的なプロジェクトであるテキサス高速鉄道等の実現に向けた連携や高齢者の住まいに関する日米共同研究等に加えて、平成29年10月に署名した米国運輸省との協力覚書に基づき、米国との間で、インフラ整備に係る知見の共有等を図るため、日米インフラフォーラムを開催している(第1回(30年1月):ワシントンD.C.、第2回(30年11月):インディアナ州、第3回(令和2年2月):テキサス州)。第3回フォーラムでは、日本側から、インフラメンテナンス技術やPPPの経験、スマートシティ及びモビリティに係る取組み、ファイナンス支援について紹介する一方、米国側からは、テキサス州において計画されているプロジェクト等の説明が行われるとともに、日本との連携強化について期待が示された。

4)中東

(ア)サウジアラビア

 平成31年4月、同国の交通プロジェクトについて日本企業に対し情報提供するセミナーを国内で開催した。令和2年2月、さらに詳細の情報提供をするセミナーを同国で開催し、本邦企業がサービスや実績を売り込むセッションを設けてビジネスマッチングの機会を提供したほか、現地視察も実施した。

(イ)トルコ

 平成30年3月に経済省(当時)と締結した第三国における建設分野に関する協力覚書に基づき、令和元年5月、ウズベキスタンで開催した官民インフラ会議等にトルコ貿易省・建設企業等が参加しセミナー・ビジネスマッチングを実施した。

 また令和元年11月には、質の高いインフラ等をテーマにした「第5回日本・トルコ建設産業会議」を開催し日本とトルコ両国企業によるビジネスマッチングも実施した。

5)ロシア

 政府全体の方針である「ロシアの生活環境大国、産業・経済の革新のための協力プラン」に基づき、都市環境、運輸、観光分野での協力を進めているところであり、令和元年9月に開催された東方経済フォーラムにおいても、両首脳の間で「協力プラン」の進捗が確認され、今後も協力を推進していくことで一致した。

 同国の都市環境分野では、8項目からなる「協力プラン」のうち、「快適・清潔で住みやすく、活動しやすい都市作り」の具体化に向け、「日露都市環境問題作業部会」を通じて協力を進めており、同年8月に第11回総括会合、11月に第12回総括会合を開催した。また、同年6月に、既存のモデル都市であるヴォロネジ市、ウラジオストク市に加えて、新たにサンクトペテルブルク市を追加することを提案し、当地での協力の具体化に向け協議を実施している。

 運輸分野では、平成24年に「日露運輸作業部会」を設置し、27年の第2回以降、日露両国において毎年交互に開催しており、鉄道・港湾・航空・海事などの分野についての意見交換を行っている。さらに、専門的な議論を行うため、「港湾当局間会合」、「鉄道専門家会合」、「観光交流促進協議会」を設置し、協力の具体化に向けた議論を実施しており、令和元年度は同年8月に鉄道専門家会合を開催し、専門家間で意見交換を行った。

6)中央アジア

 平成27年10月の総理の中央アジア地域訪問のフォローアップとして、日本の技術・ノウハウを活用した案件形成を促進するため、令和元年5月にウズベキスタンにおいて「第3回 日・ウズベキスタン官民インフラ会議」を開催し、国土交通省、ウズベキスタンイノベーション省との間で都市におけるインフラ投資を推進するための協力覚書を締結するとともに、ウズベキスタンでのインフラ整備実績を有するトルコ企業の参加を得た上で、ビジネスマッチング等を行った。

 同年12月、両国間の観光交流を促進するため、「日本国観光庁及びウズベキスタン共和国観光開発委員会との観光分野における覚書」を締結した。

7)中南米

 平成31年4月から令和元年5月にかけて、阿達国土交通大臣政務官はパナマとペルーを訪問し、政府要人等と会談を行い、パナマ運河の円滑な通航に向け意見交換を行うとともに、ペルーで文化交流の拠点である日秘文化会館を訪問し、現地日系団体との意見交換を行った。

 令和2年1月、青木国土交通副大臣はパナマとメキシコを訪問し、政府要人等と会談を行い、パナマ運河通航料の値上げを踏まえ、運河利用者の意見を踏まえた適正かつ透明性のある通航料金の設定等について要請した。メキシコでは経済及び海運業の現状について、現地日系企業関係者と意見交換を行った。

8)アフリカ

 TICAD VIにあわせて平成28年8月にケニアにて開催した「日・アフリカ官民インフラ会議」において採択された閣僚宣言を踏まえて設立した「アフリカ・インフラ協議会」(JAIDA)を活用し、我が国の「質の高いインフラ」を支える技術や経験等についてアフリカ各国に対して積極的に情報発信をするとともに、相手国との官民双方の関係構築を促進した。

 これまでアフリカ11箇国(ケニア、エチオピア、モザンビーク、タンザニア、コートジボワール、ナイジェリア、ウガンダ、ザンビア、ガーナ、マダガスカル、セネガル)において「官民インフラ会議」(閣僚級)を開催してきたところ、令和元年度は、令和元年6月にガーナ、2年1月にエチオピアにて同会議を開催した。

 さらに、元年8月には日本で開催されたTICAD7の機会をとらえて、7箇国・機関から8大臣を招き「第2回日・アフリカ官民インフラ会議」を開催するとともに、石井大臣、阿達国土交通大臣政務官とアフリカ各国のインフラ担当大臣との間で二国間会談を実施し、「質の高いインフラ投資」に対する更なる理解を深めるとともに、官民連携による案件形成に向けた議論を行った。

 このうち、ガーナ、チュニジアとはインフラ協力に関する覚書を大臣間で締結した。

9)東アジア

 平成30年7月、秋本国土交通大臣政務官は韓国で開催された「第7回日中韓物流大臣会合」に出席し、シャーシの相互通行の拡大、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の日中韓における対象港湾の拡大やASEAN諸国等への拡大に向けた検討等、日中韓3国間の物流分野における協力の推進について合意した。

 平成31年4月、石井国土交通大臣は第5回日中ハイレベル経済対話に出席し、王毅国務委員兼外交部長を始め、中国の経済担当の大臣と議論を行った。

 令和元年5月、石井国土交通大臣は香港を訪問し、キャリー・ラム香港特別行政区行政長官と会談し、質の高いインフラの展開について意見交換を行った。

 この他、中国については、日中間におけるインフラ整備に関する第三国連携の動きが出てきており、平成30年9月に「日中民間ビジネスの第三国展開推進に関する委員会」が、10月に「日中第三国市場協力フォーラム」が開催された。こうした動きを踏まえ、第三国での日中の連携に取り組んでいく。

  1. 注1 社会資本整備及びその関連分野における能力の強化と増大を目的とした国土交通省と公共事業・国民住宅省間の協力覚書
  2. 注2 3L(Low cost, Long Life, Localized)による洪水時の観測に特化した危機管理型水位計